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赤月さんの家の鍵をどうするか。鍵をしめていってあげないとヤバいよな。……けど鍵借りていく訳にもいかないし。っていうか、そもそもどこに置いてるかもわからない。


(……どうしよう)


……いや、まてよ。そもそもこのまま赤月さんを放っといていいのか?


冷静に考えて、昼間に血を舐めたのまた今も血を舐めたいと言っていた。間隔が短くなってる。もしこのまま俺が家に戻って、赤月さんがまた血を欲しがったら……。


一晩中あの苦しみを強いることになるかも。


俺はここにいたほうがいいのかもしれない。俺は部屋に帰らず、ソファーに腰を下ろす。


(……まだ九時半か)


携帯で漫画でも見て時間潰すかな。


いつもつかっている漫画アプリを起動させる。ぼんやり作品を眺めていると、うとうとと眠気が襲ってきた。


買い出しで疲れたのだろうか。そういえばさっきから疲労感がすごい。ソファーに横たわり、うつらうつらと目が閉じかける。


……赤月さん……大丈夫かな。


夢をみた。


星空にむかってあがった打ち上げ花火。


大きな音と衝撃。


二人して色とりどに咲く火の輝きを眺め、約束をした。


……二人?


そうだ、俺は中学生の頃に誰かと花火をみて、何かを約束した。


その言葉は花火の音にかき消され、伝わっていなかったかもしれないけど。


俺はなんて約束したんだっけ。



「……ん」


鼻をくすぐる味噌の香り。ふと目を覚ますと、窓から差し込む陽の光が映った。ソファーに横になっている自分に掛けられたピンクのブランケット。みれば枕まで置いてあった。


……あ、そうか。俺、赤月さんの家に……。


ぐつぐつと鍋が火にかかっている音。


トントントントンと包丁が何かを切っている音。


そちらに顔を向けると、忙しそうに料理をしている赤月さんの姿があった。


「あ……佐藤くん。おはようございます……」


「ああ、おはよう」


見た感じ元気そうだ。まだ熱があるのか、ほんのり頬が赤い気もするけど……まあ昨日からすれば全然ふつうに見える。

しかし、なぜかよそよそしい反応。もしかして勝手に俺が泊まったことが原因か?


「ごめん、勝手に泊まって……また血が舐めたくなるかもしれないと思ってさ」


「それは、全然いいのです……というか、私の方こそ寝てしまってすみません……困らせてしまいましたよね」


「いや、困ってないよ。まあ、心配にはなったけど……血を舐めたあと痙攣してたから」


「……」


なぜか、ふと目をそらされた。この話は触れたらマズいのか?赤月さんの頬がさっきより赤くなり、妙にそわそわとし始めた……ひょっとして、恥ずかしいのか?


「あ、ごめん。あんまりその話はしないほうがいいか」


「……いえ……そんなことは……」


「無理しなくていいよ。……よく分かんないけど、恥ずかしいことなんだろ?血を舐めるって」


「……はい」


「これからはあんまりそれに触れないようにするからさ、赤月さんが舐めたくなったら言って」


「……ありがとう、ございます……」


……なんか空気がおかしいな。妙だ。


昨日血を舐めるので三回目だぞ。なのになぜこんなに照れてるんだろう?


「あの、朝ごはん……できてますよ。食べましょう」


「いいの?俺、朝までご馳走になって」



「……一緒に食べたいです」



赤月さんはそう呟きはにかんだ。


ぐっ、反則級……!!


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