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スーパーに無事たどりついた俺と赤月さん。店内の冷房が心地いい。
「佐藤くん、大丈夫ですか」
「ああ、うん。っていうかそんなに心配しなて大丈夫だよ」
「そうですか」
不安そうな顔で頷く赤月さん。こんな顔させるなら適当なこといわなければ良かった。失敗した。
「さ、早いとこ買い物済ませて帰ろう、赤月さん」
俺はカートに買い物カゴを乗せ、赤月さんに行くぞと促す。
「はい」
にこりと微笑む赤月さん。
スーパーでの任務が開始、赤月さんが手早く野菜やらなんやらをひょいひょい買い物カゴへつっこんでいく。
「値段とかみたりしなくていいの?」
「覚えてきたので」
「……チラシの特売品を?」
「はい」
「けど野菜とか個体差あるんじゃないの?」
「ちゃんと選んでますよ」
にしてはスピード早すぎじゃね?喋りながらも彼女の手は止まらず、ぐんぐんと先へ進んでいく。
「あ、今日はすき焼きをしようと思うのですが、いいですかね」
「おお、マジで?じゃあ肉も買わないとだな」
「いえ、お肉はもう用意してあります。返礼品のがあって」
「ああ、そういうこと」
「ちなみに佐藤くん、すき焼きで好きな具はなんですか」
「んー?焼き豆腐かな」
「気が合いますね、私もです」
赤月さんはそう言って前髪に触れた。
「うどんは食べますか?」
「うどん?」
「すき焼きのしめに」
「しめにうどんをいれるのか?」
「いれないのですか?」
「はじめて聞いた」
「美味しいですよ」
「じゃあ食べてみるかな」
「では返礼品のうどんを使いましょう」
「どんだけ返礼品あんの!?」
それから一通り買い物を済ませ、エコバッグに食材を詰め込む。ピンクの兎の顔が描かれているのだが、食材がぱんぱんに詰め込まれ顔が飛び出て見える。
外へでると空が赤かった。
夕焼けに空が焼かれ、山の間から日が光を伸ばす。
「……多少は気温がさがったかな」
「そうですね」
「まあスーパー冷房効きまくりだったぶん、暑く感じるが」
「ああ、それはありますよね……」
俺は店の前にあった自販機を指さす。
「なにか飲まないか?おごるよ」
「いえ、それは……」
「遠慮するなって。水分補給だよ。熱中症やばいだろ」
「では、私が払います」
「いやおごらせてくれ」
「そんなわけにはいきません。買い物にもつき合わせてしまっているのに……」
「でもそれは俺が食べるものもあるだろ。しかも俺、いつも食費払ってないし」
「お礼なのでそれは別に」
「俺もお礼したいんだよ!赤月さんの作るご飯めちゃくちゃ美味いし!感謝してるから、だから!」
「ま、まって……そんな大きな声ださないで!」
ふと気がつくと、周囲の人から見られている視線を感じた。
「……悪い」
「いえ、なんかこちらこそすみません。……気持ちはわかりました、ではお言葉に甘えてしまいましょうか」
「ホントに!?」
しーっ、しーっと指を立て静かにとジェスチャーしてくる赤月さん。焦ってる赤月さんも可愛いなぁ。
「……お礼なら、この髪飾りで十分なんですけどね。でも、あなたの気持ちもわかりますので……いただきます」
「よし、じゃあ何飲む?選んで」
「あ、けど自販機はやめましょう。割高なので、お店の中で安いものを」
しっかりしてるな。さすが赤月さんだ。いい格好みせようとばかりしている俺とは大違い……同い年なのに。ちょっとへこむかも。
「わかった。じゃあ買いにいこうか」
「はい」
そうして俺はコーラで、赤月さんには桃の香りの味の天然水的なやつを買った。店の横にあったベンチに腰をかけ、二人並んで飲み物を飲む。
「美味しいです。ありがとうございます」
「うん、俺の方こそおごらせてくれてありがとう」
「それはおかしくないですか」
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