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「あれ、帽子被るのか……?」


「はい」


「せっかくお団子にしたのに?」


「これは、帽子に髪をおさめるためです。私の髪色は目立ちますから」


「あ、そういうことか……じゃあその眼鏡も」


「そうです。ちなみにこれ度は入ってません」


そうか、自分が俺と一緒に歩いているところを誰かにみられたら迷惑をかけると思って、できるだけの変装をしてくれてるのか。


けど、ぶっちゃけこんだけ黒尽くめな服の俺とこんだけ真っ白な赤月さんの正反対の二人が並んでたら、すげえ目立つよな。


や、まあただ別に目立つ分にはいいんだけどな。俺が赤月さんと一緒だということがバレなければ。


「……なんか気を遣わせちゃって悪いな」


「いえ、全然。では出発しましょう」


「ああ」


そうして目指したのは赤月さんの提案でより学校から遠いスーパーだった。できる限り自校の生徒とエンカウントする可能性を下げるためだという。

そして、さらに見つかりにくくするため、遠回りしてできるだけ目立たない道を歩く。


ぶっちゃけそこら付近に誰かの家がある可能性も普通にあるしそれを考えると、どうなんだろうという気持ちはあった。

けれど、赤月さんが俺のことを考えてくれているその気持ちが嬉しかったので大人しく従い歩く。


「あの、今思ったのですが……この付近に誰か学校の人のお家があったら、この策戦って意味なくないですか」


気がついたらしい。


「そうか?目に付く場所歩くより良いんじゃないかな。今んとこ知り合いの誰にも見られてないし」


「そうですか」


……珍しい。はじめてみたぞ赤月さんが天然発動してるところ。


ちなみにいうと部屋をでるとき、マスクまでしようとしていたので止めた。たしかにそうすればより赤月さんとはわからなくなる。けど、今日けっこう気温高いしマスクは息苦しそうだったから。


ていうか息苦しい。いまマスクをつけている俺が身を以て体感しているので、つけさせないで良かったなって思った。


赤月さんにばかり負担はかけられないからな。これはあくまで俺の問題なんだし。俺が目立ちたくないから彼女はわざわざ変装のようなことをしてくれてる。なら俺の方もマスクくらいしないと。


(しかし不思議な感じだ)


はじめて歩く赤月さんの隣。いままでこうして彼女の横を歩いた男はいるんだろうか。


今まで彼氏は出来たことがないといっていたけど、あれは本当なのか。


歩道を歩いているとすれ違った親子。母親と小さな女の子の会話が聞こえた。


「わぁ、お母さん今のお姉さんすごく綺麗だったね」


「本当ね。モデルさんかしら」


「わたしもあのお姉さんみたいになりたいなぁ」


間違いなく赤月さんのことだろう。そこまで大きな声での会話じゃなかったから、彼女に聞こえていたかはわからない。けど、俺の耳には確かにそうきこえた。


やっぱり赤月さんて綺麗なんだよな。それこそこうしてモデルかと思われるくらいに。


たいして隣をあるく俺はどうだろうか。ただの黒尽くめのマスクした不審者のような……。


「どうしました?」


「ん?」


「なんだか佐藤くん、ぼーっとしてませんか」


「ああ……いや、暑いなぁって」


「もう少しでスーパーですが、どこかで涼みますか?」


「いや、大丈夫だよ」


「そうですか。でも無理はしてはいけませんよ」


「ああ」



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