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翌日の教室。あいも変わらず、朝からわいわいと女子グループが賑やかに談笑していた。
「わあ、赤月さんなにその髪飾り」「可愛いね兎さん」「ほんとだ髪飾りとか今までつけてなかったのに」
え……まって、あげた髪飾り学校につけてきちゃったの!?
俺が昨日感謝の気持ちとして渡した兎の髪飾り。それをつけにこにこしている彼女を目の当たりにし、焦って二度見をする俺。
「これ私のお気に入りなんです。えへへ」
とても良い笑顔で答える赤月さん。その女神のような笑い顔といつもとは違う柔らかい雰囲気が、男子たちの視線を釘付けにしていた。
(……いやまさかあんなに喜ぶとは)
昨日も帰る直前まで『似合いますかねえ、えへへ』とご機嫌だったからな。
俺からのプレゼントであれなら、ウチの学年一イケメンである坂本があれを渡していたら……考えたくもないな。
と、またネガティブ思考が。昨日ダメだと赤月さんに注意されたばかりなのに。
つーか、赤月さんニコニコしすぎててもう別人と化してる気が……昨日までの無表情でクールなイメージが微塵もないんだが。
机にのよこにリュックをさげ、椅子に座る。
……視線を感じる。
この感じは言うまでもなく赤月さんだろう。すげえ見てくる。
ちらりと目を向けると、さっきよりもぱあっと更に明るい顔になった。
「ん、どこみてるの赤月さん?」「誰みてたん?」「だれだれ?男子?」
「え、みてませんよ?」
やめて!頼むから目立つことはしないでくれ……!
おもむろに赤月さんがスマホを取り出し操作しはじめた。おいおい、まさか……。
『おはようござあます』
やっぱりロインでメッセージ送ってきた!なんか誤字ってるし!
シュポン、と兎のキャラクターの『おはよう』スタンプがおされた。
俺も『おはよう』と猫のスタンプをおす。
「うおっ、なんだ急にめっちゃ笑顔!?」「どうしたの赤月さん」「すげーにやにやするじゃん!?」
「してませんけど」
もうむちゃくちゃだよ!その顔で笑ってないって無理がありすぎるぞ!
にっこにこの顔でスマホをみている赤月さん。
彼女を眺めている男子達がどよめいていた。
「すげえ可愛くね?赤月」「やば」「笑った顔はじめてみたわ」「好きになりそう」「前から狙ってたけど告ってみようかな」「ギャップやべえな」「可愛い」「つーかなんであんな性格変わったんだよ」「……男? 」「あの髪飾りってもしかして?」
うわああああーーー!!!
怖い、怖いよ!!
赤月さん、あの調子だとマズい!控えるようにロイン送っとかないと!!
『ちょっと喜びを抑えてもらってもよろしいでしょうか。すみませんが』
ロインが届いたようで赤月さんがメッセージをみた。
「うおっ!?え、笑顔死んだ!?」「急にスンとした!!」「どうしたの赤月さん!!」
「……どうもしませんが」
俺のロインをみた瞬間、フッと笑みが消えまた以前の無表情になった赤月さん。いや、極端過ぎるよ!!
(伝え方がダメだったか……これは今夜にでもちゃんと言ってわかってもらわないと)
それからしばらくクラスをこえ学校中で赤月さんが笑顔を振りまいているという噂で持ちきりになった。隣のクラスから彼女の笑顔をみにくる人がいたり、上級生もちらほらきていた。
すげえな、赤月さん。さすが学校一の美人。……学校一のイケメンである神木先輩まできてるし。
しかし誰が来ようと俺のロイン以降、彼女が笑顔をみせることはなかった。
【重要】
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