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赤月さんを探しに行った時にみつけた兎の髪留め。もしかしてこれ好きかもしれないと思った瞬間、気がつけば購入していた。


しかし冷静になった今、どんどん俺のなかに不安が押し寄せ始めていた。


(……なんか、俺……気持ち悪くないか?)


赤月さんと出会ってまだ数日しか経ってない。なのに、そんな親しくもない男に、こんなモノを贈られても困るんじゃ。


不安と緊張で心臓がぶっ壊れるかと思った。嫌な汗が手のひらに滲み出す。


……い、勢いだけで渡すんじゃ無かった……!!


(まずい、まずい……やばい、死ぬ)


だが赤月さんが箱の蓋をあけ、髪留めをみた瞬間。


「わぁ」


――ぱっと明るくなったその表情が全てを吹き飛ばした。


「……兎、可愛い」


そういって目を輝かせる赤月さん。取り出して、髪につけてみせる。


「……どうですか、似合いますか……?」


きらきらとした笑顔。眩しすぎて目が潰れそうだよ、俺は。


「いや……」


「……え」


「可愛すぎてビビった」


「!?」


可愛すぎて口が滑った。やばいだろ、髪飾り似合ってるのもあるけど、赤月さんの喜んでる顔が可愛すぎる。


「……あ、ありがとう…………で、は、なくてっ!いただいた髪飾りが似合ってますかっていう!」


「あ、ああ……ごめん、すげえ似合ってるよ」


「そ、そーですか!」


赤月さんの顔が茹でダコ状態になってる。俺が可愛いって言ったせいだろう。……いやぁ、可愛いな。


「……と、とにかく、ありがとうございます。とても嬉しいです」


「いや。喜んでくれたなら、こっちも嬉しいよ」


「……けど、貰っておいてなんですが、私まだ大したお役には立ってなくないですか?」


「そんなことはないよ。すごく助かってる。赤月さんの料理のおかげで寿命がのびてる実感があるよ、百年くらい」


「私は魔法使いかなにかですか」


くすくすと笑う赤月さん。


まあ、ある意味魔法使いだよな。彼女がいるだけでこんなに明るい気持ちになるんだから。


「……はっ、そうです」


「ん?」


「食事中ですが、忘れないうちに。佐藤くんロインはしてますか?」


ロインって、あれかメッセージアプリの。スタンプとか使える。アプリはあるけど、使わなすぎて存在忘れてたわ。


「一応スマホには入ってるけど……友達いないからつかったことないよ?」


「……そうですか」


とても哀しい目をされた。


「ロイン、私の連絡先を登録してもいいですか?」


「え!?」


「な、なに……なんなんです、その反応。嫌なの……?」


「嫌じゃない!!けど、俺なんかの連絡先がスマホに入ってるとか、赤月さんのが嫌なんじゃないかなって……」


「……」


また哀しそうな目をされた。


「あの、なぜ佐藤くんはそんな悲観的なんですか。私のスマホにあなたの連絡先が登録されていて何が困るというんです」


「え、いや……」


「自分をそんな風に言わないでください。あなたは優しくて素敵な人です」


赤月さんはにこりと微笑む。


「さあ、操作方法がわからないなら貸してください。私のを登録します」


ネガティブな気持ちがまた吹き飛んでしまう。やはり魔法使いなのではと、俺は密かに思った。


「はい、これでよし……」


「!」


そして、俺は赤月 蘭の連絡先を手に入れた。なんか早速兎のスタンプが送られてきてるし。『よろしくね』と書いてある。


俺もなにか欲しいな。



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