18
あかん!全然みつからん!!
二軒のスーパーを探し終え三軒目に突入。お野菜、精肉、食品コーナーを歩き回っていたがあの白い髪の少女の姿は見つけられない。
(ひょっとしてもう買い物をすませて帰ったか?)
……いや、行き違いとか?スーパーをはしごしていて、俺が行ったあとの店に行ったとか?戻ってみよう。
それからもう一周してみたが、彼女の姿は見つからず。そこで、もし彼女が帰って俺が居なかったらマズいということに気が付き爆速で帰宅。
「……あ」
すると案の定、彼女は俺の部屋の前で待ちぼうけをしていた。
「おかえりなさい」
「あ、ああ……ただいま」
「お出かけされていたんですね」
「まあ、そんなとこかな」
なんとなく気恥ずかしくて、正直に買い物を手伝いに赤月さんを探していたと言えず口籠ってしまう。
「……それはお菓子ですか?」
「!」
俺の手に持っていた買い物袋をみた赤月さんが聞いてきた。
「あ、いや違う……」
「そうですか。……すみません、詮索とか嫌ですよね」
「嫌じゃないけど、これはお菓子とかじゃなくて。とりあえず、ウチ入るか。今鍵あける」
「はい」
……つい、誤魔化してしまった。後ろめたい気持ちがじわり心の奥からわいてくる。
赤月さんを部屋にいれると早速キッチンへ向かい、買ってきた食材を冷蔵庫へ入れだした。
「なにか手伝おうか?」
「……いえ、大丈夫です」
な、なんか……塩対応のあれがでてる気が。
「佐藤くんは手洗いうがいをしてリビングでゆっくりしていてください」
「あ、はい」
言われた通り手洗いとうがいをしてリビングへ。空気があれなので、テレビをつけピリついた雰囲気を緩和する。
どれくらい待っていたんだろう。あの様子なら結構待たせたんじゃ……失敗したなぁ。
赤月さんもウチの前で待つんじゃなくて自分の部屋で待っていれば良かったんじゃ、と一瞬思ったがたぶん俺がすぐ戻って来るものだと思っていたんだろうな。買い物にいく彼女を見送ったときの俺、帰って来るの待ってるからみたいな感じだったし……。
「できました」
どーん、とテーブルに広がるオムライスとスープのセットメニュー。
「おお、これまた美味そうだな」
「今日、卵が特売だったのでオムライスです」
とぽとぽっと俺の青いグラスに麦茶を注ぎ、置いてくれる。
「ありがとう」
「いえ」
機嫌、やっぱり中々戻らないな。
「いただきます」「……いただきます」
手を合わせ、スプーンで一口。
「え……なんだこれ、今まで食べたオムライスで間違いなく一番美味いんだが……!」
「そうですか、良かった」
あ、少し表情が和らいだ。
「このデミグラスソース、めっちゃ美味い。オムライスはだいたいケチャップをかけて食べてたけど、これいいな」
「……もしかして、ケチャップの方がよかったですか?」
あれ、そうとられちゃう?
「いや、このオムライスの方がめっちゃ美味いよ。さすが赤月さん。なに作ってもめちゃくちゃ美味い」
美味いしかいえねー!語彙力の無さに泣けてくる。けど美味いんだもの、仕方ないよね。
俺の焦りとは裏腹に、どうやらその言葉が嬉しかったようで頬が緩んでいた。
「あのさ、赤月さん」
「……はい?」
「赤月さん、俺の部屋の前でどれくらい待ってたの?」
「……え?」
「なんか、赤月さんに嫌な思いさせてたら、俺も嫌だから正直にいうけど……俺、赤月さんを追いかけて部屋を出たんだ」
「?、なんで……?」
「買い物、荷物持ちしようと思って。けど、たぶんすれ違ったんだろうね。見つけられなかった、ごめん」
「そんな、別に私は一人でも……」
「いや俺がしたかったから。赤月さんの手伝い」
「……」
不思議そうな表情で固まる赤月さん。
「……それなら、そうと……もしかして、中で倒れてるのかなとか考えてしまいました……」
「え、うそ……まじで」
「出かけるとき、部屋で待ってるみたいな感じだったので。なのに戻っても全然でてこないし……」
「そうだよな、ごめん」
「もしかして出かけてるのかなって思ったけど、私心配性で……落ち着かなくて、部屋前で待ってました。それに疲れて眠っているのかもしれないし、なので……どうしようか迷ってて」
その暗い顔でどれだけ彼女に迷惑をかけたのかを俺は実感する。
「なるほど。それは不安だったよな、ごめん。あの時すぐに俺も行くって言っとけばこんなことにならなかったんだよな……ごめん」
「いえ、私こそ思い込みで、変な態度とっちゃっててすみませんでした」
「付き合うから」
「…………ぇ」
「買い出し。今度行くときは言って。ついて行くからさ」
目を丸くする赤月さん。さっきのは本気だと思われてなかったのか。ちいさく「ぁ」と漏らし、彼女はこくこくと頷く。
「……では、今度お願いします」
「うん。ちなみに今日は大丈夫だったのか?重くなかった?」
「あ、特に……スマホで卵特売の情報をみたので、今日はオムライスだなって思って……卵と他少しの材料を買って帰ってきただけだから」
「え……てことは、やっぱり結構待たせてたのか。ホントにごめん」
「いえ、大丈夫です。というか、もう謝らないでください……ちょっと心苦しくなってきました」
「ああ、そうだよな。ごめ……と危ね」
「ふふ」
やっぱり、赤月さんは笑顔が一番可愛い。あの冷たい表情がたまらないという人も多いけど、この温かく柔らかい表情が……俺は好きだ。
……今なら、渡せるな。
「あのさ」
「はい」
「食事中に悪い。ちょっと渡したいものが」
「?」
俺はさっき買ってきたモノを赤月さんへと渡す。
「いっぱいご飯つくってもらって、感謝してるんだ。赤月さんはお礼だからそんなのいらないと言うかもしれないけど……これはありがとうの気持ち」
「……私に、これを……」
目を丸くして渡した袋をみている。
「あけても?」
「勿論……あ!」
「?」
「いや、その……一応言っとくんだけど、趣味じゃなかったらぜんぜん捨ててくれていいから」
「……ありがとうの気持ちを、私が捨てることはありません。あけます」
袋から取り出された小さな箱。包み紙をはがし蓋をあけた。
するとそこには、
「わぁ」
兎の形の小さな髪留めがあった。
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