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赤月さんが帰り一人食器を洗う。彼女には、なにやらこれからやることがあるらしく、帰り際に「助かります」とお礼をいわれた。


泡が吸い込まれる排水溝。


まるで夢のような時間が終わり、賑やかだった家がびっくりするくらい静かになった。


(これ終わったら風呂はいってゲームでもしよう)


ぼんやりとそんな事を考えながら、しっかり食器を綺麗にする。シンク周りもきをつけて、綺麗な状態を保つことを意思。汚い判定くらって針千本仕込まれたら困るからな……。


翌日。


「おはようございます」


「ああ、おはよう」


朝、制服姿の赤月さんがきた。手には青の布にくるまった弁当箱。やった、ピンクじゃない!


「今日もありがとう」


「いえ」


弁当を手渡されたあと、なぜか俺をじっと見つめてくる赤月さん。


「どうかした?」


「佐藤くん、いま起きたんですか?」


「そうだけど」


「そうだけどって……けっこう時間危なくないですか?いまから出かける準備をはじめて遅刻しないのですか?」


「大丈夫、いつもギリギリ間に合う」


赤月さんがなんとも言えないような顔になる。


「人のことにとやかく言うのは控えたいところですが……」


「?」


「あ、いえ、このまま話を続けるとほんとにあなたが遅刻しかねません。また夕方にでも」


「ああ、わかった」


「では、また学校で。……ちなみにシャツ裏返しで着てますよ」


「え?あ、ホントだ!!」


恥ずかしい!くすくすと笑って学校へ向かう赤月さん。昨日はなんかぼーっとしてたからな……くそ恥ずかしい。けどおかげで目が覚めた。


そうして爆速で制服に着替え、登校。教室に入ると俺の目は自然にあの白い人を追ってしまった。


あちらもこちらに気がついたようで、無表情な顔がわずかに和らぐ。


賑わう朝の教室で、俺と赤月の繋がりを知るやつは誰もいない。二人だけの秘密。


(……彼氏でもなんでもないのに、なんか優越感が)


こんなことで気分が良くなるなんて小物過ぎて草生えるな、我ながら。


お楽しみの昼休み。青い布の結び目を解き広げると、黒い弁当箱があらわれた。やったピンクじゃない!


あけるとそこにはサンドイッチが敷き詰められていた。レタスやトマト、ポテトサラダ。なるほど美味しく野菜を摂取させようという策戦か。


赤月さんの作る料理は美味しいから、野菜があっても全然気にならない。ほんとに素晴らしい。


感謝の気持ちを込め、手を合わせ全て平らげる。


今日も美味しかった。なんの文句の付け所がないお弁当。まあ、強いていうなら最後の一口になると名残惜しくなって食べるのが辛いっていう。


サンドイッチに刺さっていた柄がウサギ型のピックを手に取る。


(……可愛い。やっぱり赤月さん兎が好きなのか)


そういえば赤月さんにお返し考えておかないとな。なにが良いんだろう。無難にお菓子とかかな。甘いもの?しょっぱいもの?モナカ好きだって言ってたから甘党なのかな……。


今日の夜にでもそれとなく聞いてみるか。どうせあげるなら欲しいものの方がいいだろうし。



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