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「佐藤くん、お夕飯ができました」
「お、マジで」
「はい。もうお食事にしても？」
「うん、勿論」
俺は漫画をテーブルに置き、キッチンの方へ。家はダイニングキッチンになっていて、みればテーブルの上に美味しそうな料理の数々が乗っていた。
「うわー、めっちゃ美味そう！」
メインはこのクリームパスタか。鮭とほうれん草が入っていて、もうビジュアルが美味そ過ぎる。
その横には海苔を巻いたおにぎりが二つ。炊飯器をつかった様子はなかったのでおそらく彼女が家から炊いた米を持ってきたんだろう。
そして中でも一番目を引いたのは、サラダが添えられた唐揚げ。これはお弁当に入れてくれてた甘ダレのやつ。
（料理中、揚げ物の音と香りがしてたけど、これだったのか……！）
「あの」
「ん？」
「すみません……」
「なにが！？」
「あ、いえ……お弁当に入れたのと同じ物をお出して。鮭とか唐揚げとか」
「全然大丈夫！むしろ揚げたてのこの唐揚げが食べれるなんて幸せすぎるっていうか！作ってくれてありがとう！」
「……そうですか、それなら良かった」
料理をみれば見るほど早く食べたという気持ちでいっぱいになる。俺は、別にそんなに食べるのが好きでもなく、どちらかというと睡眠や趣味への欲のが強いタイプだ。
けど、赤月の作る料理はすごく食べたくなる。なんでかわからないけど、めちゃくちゃ食欲がわいてくる。
「あの、佐藤くんの使ってるグラスはどれですか」
「え、ああ……そこの青いガラスのやつ」
指さすと彼女はそれに麦茶を注ぎ俺の前に置いた。
「あれ？っていうか家に麦茶なんてあったっけ……？」
「作りました。冷蔵庫にポットで入れてあるので、私が帰ったあと飲みたかったら飲んでください」
「まじか、ありがとう」
至れり尽くせりかよ。……まじで、いい嫁になるな赤月さんは。
手を合わせる赤月さん。普段あまりそういうのをしない俺だが、なんとなく彼女にならい自分も手を合わせる。
「いただきます」「……いただきますっ」
フォークをつかいパスタを絡め、頬張る。クリーミーでいてしっかりとした味わいが口いっぱいに広がり、とても幸せな気持ちになった。なんだろう、泣けてくる。
ちらりと赤月さんをみる。パスタをフォークで巻く動きがなんか俺と違って手慣れていて綺麗だ。そして口に運ぶ時の髪を指で耳にかける仕草が可愛らしい。ふぅふぅして頬張る姿も愛らしい。いやぁ、これは学校一の美人ですわ。
「……なにか？」
げっ、見てるのバレた。
「あ、や……パスタがめちゃくちゃ美味くてびっくりしてた」
「それは良かったです」
彼女の頬が緩む。温かい微笑み。男子への過剰な塩対応で一部からは冷たい人と言われているけど、壁が消えればこんなにも温かみのある笑顔を見せてくれる。
（……これからは、男子にもこんな顔をみせることもあるんだろうな）
男子に塩対応だったのは彼女いわく異性が側にいると吸血衝動にかられるから。けどもうそれは無くなったんだ。これからは男子ともふつうに接するようになって、彼女にはいずれふつうに彼氏ができるはず。
はずっていうか、できないわけがない。多くの男子が彼女に憧れていて、その中にはきっと赤月さんが付き合ってもいいかなと思えるイケメンもいるはずだ。
そうなったら、俺は……。
って、いや馬鹿か！そもそも俺は関係ないだろ！
赤月さんはたまたま俺に助けられて恩を感じてお礼をしてくれているだけ。彼女とはそれだけの関係で、それ以上でも以下でもない。
……くそ、また変な妄想をしてしまった。
「あの、大丈夫ですか……？おにぎり、なにかありましたか？」
俺は無意識に頬張っていたおにぎりを食べている途中で固まっていたらしく、中から鮭のフレークがポロポロと皿に落ちていた。
「あ、いや！全然、なにも！つい美味しくて固まっちゃった……はは」
嘘はついてないからな。めちゃくちゃ美味しい。
「そうですか。……もしかして鮭に骨が入っていたのかと思って焦りました」
「骨？」
「全て取り除いて、確認もしたんですけど……見逃しちゃったのかなって」
「……これ、市販の鮭フレークじゃないの？」
「いえ、私が焼いた鮭から骨を取り除いてほぐしました。……佐藤くん骨とるのが面倒だといってたので」
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