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「こんにちは」


扉をあけると赤月さんがいた。いや、基本的に赤月さんしかこないけど。


「こんにちは。弁当箱だよな、はい」


「……洗ってくれたのですか」


「そりゃまあ洗うくらいはね」


ふんふんと可愛らしく頷く赤月。


「弁当めちゃくちゃ美味しかった。グラタンいれてくれたんだな」


「……好きだと言っていたので」


「うん、好き。ありがとう」


「あ……はい」


「あ、そうそう、あとあの唐揚げ!あれもめちゃくちゃ美味かったな!こんど俺も買ってみようかな」


「買う?」


「あの唐揚げの冷食。どこで売ってるんだあれ」


「売ってませんよ。冷食ではないので」


冷食じゃ、ない……?


「冷食じゃないの?」


「そう言ってるじゃないですか。私が鶏肉を揚げて味付けしました。なのでどこにも売ってはいません」


やべえ、勝手なイメージで冷食だと思ってた。こういうのは冷食なんだって。けど、確かにそういわれてみれば、あの美味しさは冷食の域を超えていたな……だから金をだしてもまた食べたいって思ったんだし。


「すまん、勘違いした……」


「いえ。ちなみにいうと、今日のお弁当での冷食はグラタンのみですよ」


「そうなんだ……悪い」


「何がです?」


「いや、せっかく一生懸命に作ったのにわかってなくて。手間暇かけてお弁当を作ってくれてたんだよな、赤月さん」


「……別にきにしなくていいです。どのみち自分のお弁当を作っていたので」


「そっか」


「それに、美味しいって言ってくれた言葉が嬉しかったから」


微かに微笑む赤月さん。


「こちらこそ、ありがとうございます」


「……うん、美味しかったよ」 


ふと手渡した弁当箱が目に入る。


「そういえば、なんでピンクなんだ?」


「私はピンクが好きなので」


「そうなんだ。けど、今日赤月さんが使っていた弁当箱は黒かったよな……ピンクが好きならこっち使った方が良くないか」


なんとかあれに変更できないものか。やっぱりできることなら、黒いやつがいい。このピンクは男がつかうにはかなり目立つ。


「もしかして、佐藤くんは黒のほうがいいんですか?」


「や、まあ、できれば……俺がつかうには、この弁当箱は可愛すぎるっていうか」


「いわれてみれば、そうですね。確かにこの色は男性がつかうには目立ちすぎますか。お気に入りだったので、つい佐藤くんにつかってしまいました」


お気に入りなら自分でつかえばいいのに。なぜ俺につかわせたんだ……。


てか、まてよ?もしかして普段はこのピンクのをつかっているってこと?


洗っているとはいえ、あの赤月さんの使用している弁当箱を俺はつかったのか……?


(じゃあ、あのピンクの箸も……)


「……なにか?」


「あ、いえ」


弁当箱を凝視していると不審そうな顔でみられた。やめよう、そういうゲスいこと考えるの。気持ち悪がられたら普通に悲しいし。


「ところで今日のお夕食はもう決まりましたか?」


「え、いや。たぶんカップ麺かな」


「……え」


口元に手を当て何かを考えている赤月さん。またカップ麺は不健康です、とでも言われるのか……?


「ど、どうかしたか……?」


「いえ、別に。……というか、ちょっと提案なのですが夜一緒に食べませんか?」


「……は?え、一緒に?」


「作らせてください。お礼の一環として」



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