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キーンコーンカーンコーン。
「……よし、今日はここまで。次は小テストあるからちゃんとやっとけよ〜」
先生が授業の終わりを告げ、お昼休みになった。俺はリュックからピンクの布で包まれた例のブツを取り出す。
(……ピンクの兎柄)
友達がいれば間違いなくからかわれるであろう、高校生男子に似つかわしくない可愛らしいお弁当。
ちらりと赤月をみる。
満足そうな表情でにこりと微笑んでいた。
(……あれ面白がられてね?)
包む布をひらき、あらわれたピンクのお弁当。またピンク!
二段になっている弁当箱。一段目の蓋を外すと、おかずが現れる。ざっとみて六種くらいだろうか。ウィンナーに卵焼き、プチトマト、ブロッコリー、唐揚げ……なにこれ甘ダレっぽいのがかかってて美味そう!かなり嬉しいんだけど!あ、つーかグラタンもあるじゃん!テンションあがるわ〜。
(たぶん、グラタン唐揚げあたりが冷食かな。てかウィンナーが兎になってる……可愛いな)
二段目はおそらく米だろうな。パカリ蓋を外す。するとそこには鮭のほぐした身が彩る白米が詰められていた。……まじか。骨が嫌だっていったから?
鮭フレーク的なあれだとは思うが、なんか嬉しい。グラタンといいこれといい、ちゃんとこちらのことを考えて作ってくれている事が。
一口、唐揚げを食べてみる。
「うまっ」
「え?」
思わずこぼれた俺の感想。それに隣の席の田中くんが反応してしまった。不思議そうな顔で俺の方をみてくる。やべっ。
「……あ、いや……なにも」
「あ、うん。そっか」
……くそ、美味しくて声にでちまった。恥ずかしい。
その時、向こうの赤月さんら女子グループの方で、
「え……蘭ちゃんなにニヤニヤしてるの?」
「してませんが?」
「怖っ、なにその冷たい目!怖いんだけど!」
なんか赤月さんとその友達が賑やかだった。赤月さんがニヤニヤ……珍しいな。てかそんな顔するんだ。
久しぶりのお弁当。赤月さんが作ってくれたそれはめちゃくちゃ美味しくて、もう普段の食事には戻れないかもしれないと思うほど。
ちなみに箸も箸入れもピンクだった。赤月のお弁当を遠目で見ると布も弁当箱も箸も箸入れも黒。なんでだよ!普通逆じゃね?いや、作っておいてもらって文句はいえないんだけどさ。
「なんか佐藤の弁当、全体的にピンクいな」
田中くんが喋りかけてきた。
「え……あ、うん。……これは、その……妹のと間違えちゃって」
「あー、あるよな!そういうの!」
すまん、田中くん。嘘なんだ。俺に妹はいない。二次元の中にしか。
そうして一日の授業が終わりそうそうに帰宅。赤月さんが弁当箱を回収しにくるまえに洗っておかないとな。
(しかし俺の家のキッチン汚すぎ問題。この使った皿いつのだっけ……)
なんか気持ち的にアレなので、新しくだした新品のスポンジで弁当箱と箸を洗う。……そういや洗い物久しぶりかも。
普段、食器とか全然つかわないからな。朝は食べないし、夕飯はコンビニ弁当かカップ麺……極稀に外食、面倒な時はゼリー、お菓子。
こうして冷静に考えると、確かにいずれ健康を損ないそうな気がするな……。
赤月さんが指摘してくれないと死んでいたかもわからん。
ちょうど洗い物が終わったタイミングで、ピンポーンとインターホンがなった。
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