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報われない  作者: 棚果
3/3

じぶん

よくわからないことってありますよね。

 俺の記憶は暗い。

 

 俺の記憶は暗い部屋から始まっている。たぶん押し入れだったのだろう。

 腹が空いたといえばうるさいと怒鳴られ、親の気分が悪ければ殴られるなんてことも日常あった。

 体はあざだらけ、服なんかはある程度着せられ、飯も生きられる程度のは与えられてた。

 たぶん、子供ではなく、ペットみたいな扱いあったのだろう。

 

 母親は、心が弱い人間だったのあろう。

 周りに流され、騙され、その都度落ち込み、発散のすべがないのか俺にあたっていた。

 仕事は一応スーパーのパートをしていて、俺の食費などはそこから出ていたが、パート先でストレスをためてくるため、俺は母に生かされ、殺されかけていた。

 

 父親は、屑としか言えない男だった。

 酒は酔いつぶれるほど飲み、タバコは俺が赤ん坊のころでも目の前で吸い、機嫌が悪ければ殴る蹴るや根性焼きも当たり前。

 仕事はしてるが、給料は自分のキャバとパチンコ競馬に使い切る、しかも当たることがほとんどないのが始末悪い。

 

 こんな家に生まれて、強く生きられていれば、よかったが、残念ながらそうはいかなかった。

 俺は学校でいじめられていた。

 家庭環境の影響で自己主張が弱く、体も小さい俺は、格好の獲物だったのだろう。

 持ち物を隠されたり、壊されたり。暴力を受けたり、無視をされたり。いわゆるいじめは一通りされたと思う。

 これが普通の家だったら救いもあったが、うちはその点でも最悪だった。

 父は、いじめにあったことを報告すると、いじめの内容ではなく、いじめられている俺に怒鳴りだした。父曰はく、いじめられる自分が悪い、やり返せだそうだ。原因はこの家だってのに救いもないとは。

 

 そんなこんなで、死さえ覚悟して生活していたが、齢が十を超えたころ、変化が起き始めた。

 ろくな飯も食べていなかったのに体が大きくなり始めたのだ。

 周りのいじめっ子よりも頭一個分大きくなり始め、だんだん力も付き始めた。

 それによっていじめがなくなればよかったが、一度築かれた関係はそんなことで崩れることはなかった。

 そんな関係が続いて中学、ついにおれは我慢ができず、相手を押しのけてしまった。

 気づかぬうちに力がついていた俺は、加減ができず、相手にけがを負わせた。

 不運なことに、押しのけた先にロッカーがあり、それにぶつかったいじめっ子は倒れこみ、そこに振動でロッカー自体も倒れてきてしまった。

 相手は骨折し、相手親から訴訟などの話も出たが、今までのいじめの話をクラスメイトが証明してくれたため、訴訟の話は出なかったが、警察が現場検証などに来たために、おれにも事情聴取が行われ、家庭環境の話が行政に伝わり、ついに俺を取り巻く環境に変化が起こった。


 家庭環境が最悪だった俺の家には、警察が立ち入り、児童相談所などが介入し、両親には、育児責任がないとみなされ、俺は、児童保護施設に入ることになった。

 

 そして、あの親から離れたことで、俺の生活に変化が起きた。

 まず、しっかりとした食事がとれるようになった。それにより俺の体はより大きくなり、高校のころには身長が180近くあった。

 しかし、家庭と学校の経験はトラウマになってしまった。

 たまに意識が飛んでしまう時がある、精神科の医者に聞いたところ、ストレス性の失神症のようなものだそうだ。

 

 高校三年の6月、俺は暴行で逮捕された。

 あの時、俺は意識を失っていたはずだった。

 学校で遅くまで自習していた俺は、少しづつ暗くなる街を帰っていた時、路地裏から悲鳴が聞こえた。

 そこに向かうと女子高生が襲われていた。相手は高校三年くらいのヤンキーだった。

 女子はいやがっていたが男は壁に押し付けて暴行を働こうとしていた。

 それを見たおれは、家庭のことや、いじめのことを思い出してしまい、怒りや、憎しみが沸き上がった。

 俺は何故か意識を失ってしまった。

 目が覚めた時、俺の手は痛みが走り、血が付き、相手の男は痛みに耐えながらうずくまっていた。

 俺は正当防衛を主張しようとしたが、俺自身には危害がなく、また、女性を助けるためであったにしろ、男性に暴行したことは過剰だったとして逮捕されることになってしまった。

 

 高校からは暴行事件を起こしたとして停学処分を下され、また退学処分を下されることになってしまった。

 原因はおれだとしてもこの処分あまりにもひどいと思ったおれは学校側に抗議しようとしたが、親も親戚も友達もいない俺に頼れる筋もないため仕方なく仕事を始めるしかなくなった。

 

 どうにか保護施設と警察の手を借り、コンビニバイトと配達会社のバイトにこぎつくことに成功した。

 バイト先には一応暴行事件を起こしたことは説明したが、相手はそこを了承したうえで採用してくれたと言ってくれた。

 

 また、暴行事件の女子とは一度だけ話をする機会があり、その子から謝られた。

 謝る必要はないと言ったが、相手は謝ることしかできないと言っていた。

 仕方がないのでまず相手の名前を教えてもらうことにした。俺はそれだけでいいと言った。

 女子は佐藤三木さとうみきというらしく、それだけでは私の気が済まないと言われ、また後日相手することにした。

 

 仕事をして年数がたち、車の免許を取ることにも成功したが、意識を失いことが多々あった。

 しかし意識を失ったときは周りからは失っていないと言われた。

 さすがに不審に思い医者にかかることにした。

 昔も世話になった精神科に行ったところ、もしかしたら二重人格なのではないかと言われた。

 自分ではわからないし、医者ももう一つの人格と話すことができなかったと言われた。

 仕方ないというしかないが、どうすることもできないので今まで通り生活するしかないともうことにした。

 

 仕事をしつつ、佐藤さんとは数度会うことがあった。

 彼女は、その都度謝罪をしていたが、俺もその都度もう怒っていないと伝えていた。

 彼女は、その後あの男に暴行を受けたとして警察に相談し、それ以降被害にはあっていないというので、おれの行いは間違ってはいなかったのだと思った。

 俺は彼女には何度も会ううちに、特別な感情を持つようになっていた。

 そして、彼女と出会って五年、俺は彼女に告白することにした。

 相手の罪悪感を刺激しているような気もするが、俺の感情に噓をつくこともできないので、告白してしまった。

 彼女は、少し黙って悩んだり、罪悪感や好意のある顔をした後、OKと言ってくれた。

 

 彼女と付き合い数年、仕事を運送業に固定し収入を安定させることに成功し、彼女の親に挨拶することにした。

 彼女の親におれのことをすべて話した。

 暴行事件のこと、二重人格のこと、家庭環境、いじめの件。

 彼女の親はさすがに認めることはできなかったのか、交際は認めてくれたが、結婚を認めてはくれなかった。

 しかし、印象はよかったように思うので、もう少し生活と人間性を安定させれば認めてもらえる気がする。

 

 そんなこんなで彼女の親に挨拶をしてから仕事にまじめに勤めていた時、大型トラックを運転していたおれの耳にラジオから父親の名前が入ってきた。

 内容は父親が暴行事件を起こし捕まったという内容だった。

 その瞬間俺の意識は無くなってしまった。

 

 おれは怒りに任せアクセルを踏んでしまった。

 俺は意識を失ったので運転をする人がいなくなったのでブレーキを踏むつもりだったが、先ほどアクセルを踏んでしまったために制御が効きにくくなってしまっていた。

 そんなおれのトラックの前に高校生が飛び出してきた。

 正確には飛び出した小学生を助けた高校生だが、問題はそこではない。

 制御を失ったトラックは高校生を撥ねたのちやっとブレーキがかかった。

 

 俺はまた気づかぬうちに罪を犯してしまった。

 ついにころしてしまった

 彼女の親は結婚を認めてくれることは無くなっただろうし、交際自体もなくなるだろう。

 何しろ前回は人助けだが、今回は完全な自分勝手である。

 俺は弁護士や精神科医に心神喪失による仕方のない事故だったと証明する検査を勧められたが、断った。

 自分の罪を償いたい気持ちが一番だが、自分自身について考えたいと思ったからだ。

 

 俺の人生は最初から最後まであの親によって壊されたように感じる。

 仕事も恋人も、生活も人格も。 

 すべてが壊れてしまった。

 これから死ぬまでの間、俺は人に危害を加えずに生活できるのだろうか。


 加藤錦かとうにしき、人格が壊れないように作ったもう一人の自分によって生活を壊された、

 おれの体の名前だ。

何となく書いたらまとまりませんでした。

誰かに読み解いてもらえたら幸いです。

俺とおれの違いは何なんでしょうか。

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