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【完結】レスティン・フェレス2~暁の草原  作者: Lesewolf
第三環「また平凡な約束を君と」
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③-8 噴水の町①

「ぴぎゃああああああああああああああああああああああああ」


 翌朝、少年ティトーが目を覚ますと、グリットは朝ごはんにと鳥を仕留めて、捌こうとする瞬間だった。

 大声で叫び声をあげたティトーはすっかり目が覚め、頭を抱えて落ち込んでいた。


「悪い、もう少し寝ていると思っていたんだ」

「目が合っちゃった」

「わー、悪い。本当、ごめんよ」

「も、もう平気。ありがとう。ちゃんと食べる」


 グリットはさばいた鶏肉をサッと炙ると、胡椒と塩で味付けした。そしてそのまま、昨晩の残りスープにつけ朝ごはんは完成した。ティトーは半泣き状態で、肉を頬張った。


 感謝の言葉を長く伝え、昨日は忘れていたのだといいながら、野草や調味料へも感謝を伝えてから頬張ったのだ。


 ティトーは元々猫舌なのであろう。()()()()した後に肉やスープを頬張っていった。



 ◇◇◇


 食事を終えると、二人はすぐに荷物をまとめ出した。


「そんなテキパキやって。別にいいんだが、大丈夫か。焦らせているなら、気を付けるが」

「ううん。早くお兄様に会いたいから」

「そうか。焦りすぎるなよ」

「うん。気を付ける」


 グリットはティトーの頭を()()()()()()すると、おまじないを掛けた。


「トイトイトイ。これで大丈夫だ。会えるから、な」

「うん! ありがとう。グリットは寝ていないから、気を付けてね」

「ああ。わかったよ。お守り、持っているか?」

「うん!」


 ティトーは嬉しそうに、首に下げている紐を引っ張ると、ついているリングを見せた。緑色の石が煌めいている。

 二人はまた魔物を浄化、エーテル平定しながら噴水の町を目指したのだった。



 ◇◇◇



「とーちゃくっ!」

「到着だな」


 一番乗りと言わんばかりに、ティトーはジャンプしながら町へ入った。夕方になってから噴水の町へ到着した二人は、すぐに宿屋を目指した。グリットは町の説明を始めたが、ティトーはキョロキョロして半分も聞いてはいない。


「再会の町にもあったけど、ここの町の噴水はおっきいんだね」

「噴水だけじゃない。町でいえば、再会の町の3倍以上はあるぞ」

「そんなに!?」


 ティトーの声が町にこだまし、周りの町民や冒険者が二人を見て笑っていたが、二人は特に気に留めていなかった。


「再会の町は廃墟が多かっただろう」

「うん。どうしたの? 変な()()()()が居たもんね」


 腕を出していたそうな表情を浮かべつつ、ティトーは冗談交じりに話した。特にトラウマなどになってはいないようである。


「住んでいた獣人たちがな、一斉にフェルド共和国に引き上げたんだ。それで荒れ放題なんだ。皆戻ってくるつもりだったんでな、そのままなんだ」

「そうだったんだ。獣人さんは、復興支援の人しかいなかったね」

「ああ、そうなんだ。獣人たちは光の柱が降り注いだとはいえ、それ自体に毒が無いと分かると、故郷を守ろうと移住したんだよ。フェルドを復興させて戻るって算段の連中も多かったんだ」

「復興が大変で、戻れなくなったの?」

「いや」


 グリットは声を細めると、道の端へティトーを促すと、小声で耳元で話した。


「どうしたの?」

「大きな声じゃ言えないが、ルゼリア人の獣人差別から逃れるために、フェルドで祖国一揆をおこすんじゃないかと、ルゼリア人に噂をたてられたんだ」

「!」


 ティトーは絶句して信じられないという表情を浮かべると、呟いた。


「そりゃ国境沿いだもんね。戻りたくもないよね」

「それでも支援で戻ってこれた奴もいる。だから戦争したい奴なんていないんだ。皆食べるために必死なんだよ」


 寂しそうに二人は呟き、再び二人は宿屋へ向けて歩み出した。


 ◇◇◇


 一番大きい宿屋の斜め手前にある、こじんまりとした宿屋へ二人はやってくると、グリットがチェックインを済ませた。


「同じ部屋でいいか? ベッドは別だが」

「うん。グリットは大きいから、大変だね」

「いや、そうじゃないんだが。とにかく今回は一部屋な」

「名前とか書かないんだね」

「今回はいいんだ」

「ふーん」


 再会の町の宿屋兼食堂のように、こちらも宿屋兼食堂であった。階段を上がると部屋はこじんまりとしており、二部屋しかなかった。大旦那の宿屋は部屋が四部屋あったため、かなり小さく感じたティトーは可愛いを連呼した。グリットは何が可愛いかがわからなかったが、適当に話を合わせていった。


「荷物を置いたら、買い出しに行くが」

「だ、ダメだよ」

「どうした? 疲れたなら、留守番していてもいいんだぞ」

「違うよ」


 ティトーはグリットの服の裾を掴むと、ベッドを()()()()()()

《・》した。


「ご飯はここで食べられるし、露店ももう閉まるでしょう。明日にしよーよ!」

「しょうがないな。夕飯を食べたら、寝ようか。今日はパンとスープだろうから、部屋で食べれるようにもらってくるよ。待っててくれ、頼んでくる」

「うん。お手伝い要らない?」

「そうだな。時間がかかるかもしれないから、待っていてくれ」

「うん、わかった。お外、見てるね!」

「落ちないようにな。窓は開けるなよ」

「はーい」


 ティトーはリュックを下ろすと、胸ポケットからピンクの可愛らしいウサギマークのある袋を撫でた。白銀の懐中時計を取り出すと、ティトーは見惚れたように微笑んだ。


「こんにちは、銀時計さん」

「こんにちは、ティトーくん」


 ティトーは声色を変えると、お喋りし出した。


「ここはね、噴水の町っていうんですよ」

「そうなんだね! 初めて来たよ」

「僕もだよ!」


 ドアの前でその様子を感じ取ると、グリットは階段を降りていった。微笑まし過ぎて笑みを零しながら。

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