表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】レスティン・フェレス2~暁の草原  作者: Lesewolf
第一環「春虹の便り」
12/215

①-9 価値を知るもの①

 少年は困り果てていた。情報収集のため、昼時の食堂を訪れるところまでは順調だったはずだ。湧き上がる淡い期待は、何度も打ち砕かれていた。


 ルゼリア国では親切にしてくれた人に限り、持っていた懐中時計を見せていた。しかし、見せた人々はその銀時計の描かれた獣に見覚えはなく、どこぞの島国の紋章だと言うのだ。

 それがセシュール国に入り、絵柄をグリフォンだと言い当てられたのだから、少年は有頂天になってしまっていた。


「どうしよう」


 食堂には、各地から復興支援のために人が集まっていると聞いた。各地で作物が十分に育たなくなり、自然災害も多く起こっているという。


 大戦後に起こった原因不明の光。その発光場所から遠く離れたこの町を中心に、皆で協力して田畑を耕し農作物を作り、収穫物をそれぞれの故郷へ送ろうというのが復興事業だという。

 その為に、遠くフェルド共和国や、セシュールの山々から部族民が集まっている。多種多様な人が居たにもかかわらず、なんの情報も得られなかったのだ。そもそも兄を捜索するにしても、名前はおろか。少年は何一つ知らない。


「どうしよう…………」


 広場まで出ると、大井戸に列が出来ていた。ルゼリア国では、僅かな硬貨で飲料水を買う事が出来たため、水には困らなかった。

 セシュール国の商店は建物の店内ではなく、路上に布やテーブルを置き、その上で食材のみを売っていることが多いとわかった。水の販売は行われていないようだった。


「ここ、本当に外国なんだ」


 ルゼリア国では、路銀の支払いさえすれば、詮索されることもなかった。それなりに路銀は手渡されていたし、無駄遣いをする気もなかった。

 すぐに食べられる物の取り扱いが多く、必要なものだけ買い、リュックに詰めて少しずつ食べることが出来たのだ。


 ところがセシュールでは、パンは材料の小麦として売られている。パンとして売られていないなど、初めてだ。当然練ることはおろか、焼くことすらできない。 野菜は購入できても、調理する道具はおろか、場所もなく、料理などしたこともない。


「もっと色々学んでおくんだったなぁ……」


 とある列を眺めてた少年はあることに気付いた。その列、広場の井戸は無人のようで、誰も支払いをしている様子はない。無料なのだろうか。少年は試しに列に並んでみるが、特段咎められる様子はなさそうだった。


 すぐに少年の後ろに若い女性が並んだ。首元から二つ、可愛らしい三つ編みをしていて、紐のような美しい布が一緒に編み込まれている素敵な女性だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ