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冬源郷

作者: 檸檬

ゆっくりとした苦しさを持ったまま


ゆっくりと降る雨をみていました


雨音が冷たい鉄板に響いてきて


自分が何を言いたいのか

あまりわからずにいた


ただ あの人の呼ぶ声を聞き取ったとき

池や土草の上にしとやかな雨が優しくて

ほっとしたんだ


そんなことを繰り返してる


きっとね、


ゆっくりとした悲しみを忘れないまま


しとやかに降る雨をみていました


電車の音や靴音が響いて


何を言いたいのか

わたしにはあまりわからなかった


わからないままでよかった


ただ気づくだけでよかった


そんなことを繰り返していく、


木の葉も沈み


冬に澄んだ池に映る月をただ待っている


お互いを映す夜に光る鏡


寒い部屋のストーブで焼いた焼き芋


ゆっくりと半分にして

こがね色から白い湯気が出た

 

雨に濡れた枯れ葉の薫が


竹林から降りて水仙とまざる


陽水に揺れる微かな春風に


笑ってみたよ


それだけで、よかったよ


雨が沁みた深い喜び


ゆっくりとした苦しさをもったまま


弦を、鍵盤を


重力を利用して

きみの指先は弾いていく


厳しさに耐えながら


それでも小さく小さく咲いた花


いつか悠々と風に揺れてみたいと


きみの強くこぶしを握るような決意が


ひと粒ひと粒 鍵盤を刻むようにひびく


私は心強くなり

今日も生かされている


そう感じて


ゆったりとした大地に水面に


呼吸深く喜ぶことができた

















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― 新着の感想 ―
[良い点] 「冬源郷」という言葉が、とても印象的ですね。 雨の降る音、電車の音、靴音。憂いを纏いながら、池や土草へと沁みこんでいく、しとやかな雨。それを優しく描いているところが、心に残りました。 …
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