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ノーベル賞へ至る病

作者: 物部がたり

「ノーベル賞を取るのだ」と馬鹿なことを言っていた友人のことをれいは思い出した。友人は誰にでも将来の夢は「ノーベル賞を取る」と言っていたものだから、ノーベルくんと呼ばれて馬鹿にされていた。

「馬鹿に取れるノーベル賞はないよ」

 と、れいも馬鹿にしていた。

 だが、ノーベルくんはノーベル賞を絶対取ると譲らなかった。

「どうしてノーベル賞がとりたいの?」

 友人が余りにも自信満々だったので、(こいつは本当にノーベル賞を取るかもしれない)という気にされて、れいはいつの間にか馬鹿にしなくなっていた。

「ノーベル賞にも色々なものがあるでしょ。医学・生理学賞とか、物理学賞とか、化学賞とか、だけどきみ理系に強かった」

「うんや」

「じゃあ、文学とか平和とか経済とかなの」

「さあ」


 話しを聞いてみると、ノーベルくんはノーベル賞がどういうものなのかすら理解していなかった。ただ、偉い人が偉いことをしたら偉い賞がもらえるという理解であった。

「ノーベル賞は、偉い人が偉いことしたら偉い賞がもらえるわけじゃないよ」

「違うの?」

「いや、まあ順序が違うっていうか、人類に貢献する研究とか活動とか発見とかして偉くなった人がノーベル賞をもらえるんだ、と思う……」

 れいもどうしたらノーベル賞をもらえるのか詳しく知らないので、自信はなかった。

「でも、どうしてノーベル賞が取りたいの」

「有名になりたいからだよ」

「そんな不純な理由でノーベル賞が取れるわけないよ。ノーベル賞をもらう人は、そんな名誉や自己顕示とか不純な理由で研究してるわけないだろ。自分の研究や活動に何十年も打ち込んで、気づいたら評価されているものじゃないかな」


「有名になりたいって理由でノーベル賞を狙うのは不純な動機かな。有名になりたいって理由で頑張ってノーベル賞を取った人は本当にいないかな」

 そんなふうに言われると、れいも自分の考えが間違っているのだという気持ちにさせられた。

「不純じゃないけど……」

「おれがノーベル賞を取ったら、れいもみんなに自慢できるでしょ」

「うん」

 どうして突然そんな話を思い出したのかというと、今年のエイプリルフールの日にノーベルくんから、ノーベル賞を取れそうだという連絡が入ったからだった。

 エイプリルフールに入った連絡だから、当然嘘だと思っていた。が今日、ノーベル賞受賞者発表の日、受賞者の中にノーベルくんの名前を見つけた。

 れいはみんなに自慢できると思った――。

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