25. 覚悟を決めたはずなのに…… ~ミーユ視点~
25. 覚悟を決めたはずなのに…… ~ミーユ視点~
あれからだいぶ北に歩いてきた。目的のザルガン洞窟の前にたどり着く私たち。アティの言葉を聞いて、申し訳ない気持ちが出てくる。それだけ私の中でも今のパーティーの存在が大きくなっているんだね。あの時……私は覚悟を決めたはずなのに……。
(これは2人だけの秘密ですわよ?許可なく秘宝を渡したとなるとお父様に叱られてしまいますから。)
(それなら、許可を取ってから……。いえ。皇女様がこんな何もない侍女の私に大切な物を贈られる時点で気づくべきでしたね。)
(いいのよ。あなたは昔からそうだったわ。だから何があってもこれは2人だけの秘密ですわよ?)
(はい。もちろんです。)
(ねぇ……私ね……外の世界を見てみたいですわ。あの鳥のように何もしばられることなく自由に)
(そうですね。こんな窮屈な部屋ではなく、いつか一緒に外の世界に行きましょう)
「……さん。ミーユさん!」
「あっ……ゴメン。なに?」
私はアティに大きな声で呼ばれ思い出の中から現実の世界に戻る。私はブンブンと左右に首を振り、平静を保つ。なんでこんな時にあの思い出を思い出してしまうんだろ……。
「大丈夫ですか?顔色が悪いですよ。少し休みましょう。私お水を汲んできますね。」
「え。大丈夫だよ。って……行っちゃった……。」
アティはそういうと、私の気持ちを聞かずに水を汲みに行ってしまう。私はその場で一人になってしまう。とりあえず木陰を探してそこに座る。
私はふと空を見上げる。青空には雲が流れ、鳥たちがその翼を広げて自由に飛んでいる。そんな光景とは今の自分は全く真逆な現状なのは全て自分のせいだと言うのもわかっている……。凄く窮屈だ。
「はぁ……私何してるんだろう。一体何がしたいのかな。」
ふと口から漏れてしまう……。
自分の秘密を隠し通すのならギルドに、エルンに会わなければいいのに。やはり私はズルい。心の何処かでエルンが何とかしてくれると信じているのかもしれない。でも私の秘密を知ったら、絶対にこのままの関係ではいれないのに。そして水を汲んできたアティが戻って来る。
「ミーユさん。お水です。」
「あっありがとうアティ。」
「いえいえ。」
しばらく私たちの間に沈黙が流れる。アティは私に何も聞いてこない。それがどういう事かは分かる。アティは私が話してくるのを待ってくれているんだ、エルンもブレイドもきっとそうだ。
でもゴメンね。
やっぱり言えないよ。
あの時私は覚悟を決めたんだから。この秘密はずっと隠していく。私はズルい女だ。
「さて、もう大丈夫だよ。ありがとうアティ。それじゃザルガン洞窟の銅鉱石を手に入れに行こうか!」
「あっはい。ミーユさん待ってください~。」
私は元気よく立ち上がる。それにつられてアティも慌てて立ち上がり、二人で並んで歩き始める。
そして、私とアティはザルガン洞窟の銅鉱石を無事手に入れそのままギルドへ戻ることにする。ギルドに戻ると、いつもの席にエルンとブレイドがいる。私たちの帰りを待っていてくれたんだね。またなんか言い合っているみたいだけど。
この2人はいつも喧嘩というかじゃれあっているように見える。恋人とか噂されているけど、どっちかって言うと「家族」と言ったほうが正しいかもね。そう仲がいい「家族」。
そんな時エルンが私たちが帰ってきたのに気がつく。
「あっミーユ、アティお帰りなさい!」
「うん。」
「疲れましたぁ~。もう歩けません~。」
「あっ私。ルナレットに報告してくるから。」
私はそのままルナレットに依頼完了の報告をする。その時ギルド掲示板の前にいた、他のギルド冒険者から耳を疑うような会話が聞こえてきた。
「おい聞いたか?ライゼンバッハ帝国の皇女探しの懸賞金が200万Gにはね上がったらしいぞ?」
「ああ。しかも有力な情報で西のゴーバーン村にライゼンバッハの秘宝のアクアマリンのペンダントをした女が目撃されたんだろ?」
「!?」
「西のゴーバーン村ってクラグ山の中だろう?あそこは「黒蠍」って呼ばれてる危険な山賊、盗賊の複合集団がいるだろう?あまり行きたくねぇよな。それにこれだけ懸賞金がはね上がってるのを見ると、もしかしたらもう「黒蠍」に捕まってるかもな。」
なんで……。何でなの……。
「これで受理完了ね。ん?ミーユちゃん?」
「あの、その報酬エルンに渡しておいてください!私は用事を思い出しちゃって。お願いねルナレット!」
「あっミーユちゃん?」
そうルナレットに伝えると私は無我夢中で走り出していた。お願いどうか無事でいて。まだ何も起きていないでお願い。
◇◇◇
(えっ!?お城を抜け出す!?)
(えぇ。あなたの故郷のローゼンシャリオ王国に行きたいと思っていますのダメかしら?)
(……なら約束してください。もし誰かがあなた様を探しに来ることがあったら私を身代わりにすると。いいですね?)
どれだけ走っただろうか。息が切れる。生まれてからこんなに走ったことはない、それでも助けに行かなくちゃ約束したから。身代わりにすると。
この山にたどり着いてから、『鷹の目』で見た情景にはあの人が捕まっていた。
「はぁ……はぁ……今助けに行くから!」
私は力を振り絞って、あの人の元に急いで向かうのだった。
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