心美しき『白魔女』が実は腹黒いことを『白王子』と呼ばれている腹黒王子は、知っている。
――――類は友を呼ぶ。
前世の世界にあった言葉だ。
私は、転生者である。
現実社会に何の希望も、未来も、見出だせず、小説や漫画で展開される異世界転生の物語を片っ端から読み漁っていた。
大学三年の冬。
いつもの様に大学の図書館からの帰り道。
一人暮らしのアパートにある冷蔵庫に残る食材を、思い浮かべながら、凍りついた道をゆっくり、慎重に歩く。
それは、あまりにも突然だった。
目の前に、スリップした車が突っ込んでくる。
身体が、ふわりと浮き上がる。
『……っ………っ…!!』
こんなに寒い日なのに。
死ぬ前って、こんなに暖かいのかな?
何かに抱き締められている様に身体が温かい。
ふわふわと包み込まれている様だ。
『…あったかい』
私は、意識を手放した。
~・~・~・~
私が目覚めたのは、見知らぬ部屋のベッドの上。
ほぉ~。これは、まさか。もしかして?
「お嬢様~っ!!」
お目覚めになられましたか~!?
…って、やつかな?
「はい。目覚めましたよ?」
「お嬢様っ!!今すぐに医師を呼んで参ります!」
「はい。どうも~」
身体を起こしてみる。
手をグーパーグーパーしてみる。
うん。ちゃんと動く。よしよし。
長い髪を摘まんで、毛先を目の前に掲げてみる。
ほぉ。銀色か。ふぅん。
ベッドから降りてみる。姿見を見つけた。
はぁ~!これが、私かぁ。
瞳は、輝くゴールド。…うん。異世界だな。
キラッキラだね!転生、万歳。
チートな能力とかあったりするのかな?
ちょっとやってみるか!
「『ヒール』」
ぼわぁっと、青白い光が放たれる。
おぉ!来た~!!魔法使えるじゃない!!最高!!
やってみたかったんだよね~、これ!
廊下から足音が聞こえてくる。
私は急いで、ベッドに戻った。
「目覚めたか!カレン!」
「ええ。もう大丈夫ですわ、お父様」
あ!自然と答えられたわ。この方がお父様ね!
そして、隣で涙ぐんでいるのが、お母様だわ。
そして、私は…カレン・フェリクス。18歳。
宮廷魔法師の家系の一人娘。
私の別の名は…『白魔女』。
この国一番の魔力を持つ白魔法の使い手。
故に、宮廷魔術師の中のトップ集団の内の一人。
もちろん、師団長はお父様ですわよ。
お父様が、連立した数々の最年少記録を、一人娘の私が、塗り替えておりますの。
宮廷魔術師のトップ集団も半分はおじいちゃん。
もっと若返りを図るべきよね。
もちろん、威厳のある大魔術師様もいらっしゃるのだけれど。癒着や名声だけの為にその地位にしがみついていらっしゃる方々も居られるので。その辺、ぱぁっと払っちゃいたいじゃない?
おう。復帰第一戦は、その方向で!
よっしゃ!
我が身に起きた異世界転生、心行くまで楽しませて貰おうじゃないの!!
…とはいえ、此処での私は侯爵家の人間でして。
なかなか、上手いこと自由が利かないようだわ。
お父様も、お母様も、心配性ね。
「もう大丈夫ですわ。お仕事に戻らせてください」
「いや。まだ、駄目だ!」
「お父様。心配しすぎですわ」
「カレンちゃんにまた何かあったら…うぅっ」
「泣かないでくださいな…お母様」
と、まぁ、こんな感じで。
私は、目覚めてから一週間も!
部屋から出して貰えなかった!
――――時は金なり。
っていうでしょ?
私の貴重な一週間、返せ!!
ってことをいえる筈もなく。
そりゃあ、ニコニコ過ごしましたとも。
心穏やかに…心穏やかに…って、言い聞かせてさ!
はぁ~腹立ってきたよ?
もう、おじいちゃん達、一掃は決定だかんね!
覚悟せよ。おじいちゃま方。
一週間で、充分調査させていただきましたからね。
癒着、能力詐称、まるっと全部お見通しだ!
ごめんね。八つ当たりに近いけど。
まぁ、いつかはこうなると思ってたでしょ?
――――後悔先に立たず。
っていうじゃない?
それよ、それ。
何はともあれ、今日からお仕事に復帰よ~!!
わーい!
魔術師団のローブ、いい感じ。
ふふ。
鏡を見て、ニヤニヤしてたら、侍女のアメリアが、微笑ましい光景を見る様に見つめているのが鏡越しに映る。鏡の中で、目が合ってしまい、恥ずかしくなって、俯いたら、プルプルされた。
あれって、笑いを堪えてるのかな?
ちょっと!失礼じゃないの?!
ぷくっと頬を膨らませると、はぁと息を吐かれた。
その眉は、への字になっている。
呆れられたのか……がーん。
侍女に呆れられるお嬢様ってさ…大丈夫なのかな?
「お嬢様。心配なさらなくても、いつだってカレンお嬢様は、可愛らしいですわ」
「ええ?アメリア、私に呆れたのではないの?」
アメリアは、きょとんとした顔をする。
「私が鏡を見過ぎていて、笑ったのではないの?」
アメリアの顔は驚きに変わる。
「お嬢様。何を仰っているのですか!私は、こんなに可愛らしいお嬢様のお側にお仕えできて、本当に幸せだなぁと思っていたのです!」
「そっそうなの?私はてっきり呆れられたのかと」
「何故、そうなるのですか?カレンお嬢様は、謙虚過ぎます!」
「ええっ?そんなことはないと思うのだけれど…」
私の心の中を覗いたら、大変な事になるよ?
思い違いもいいところさ。
あーんなことや、こーんなことを考えてるからね。
…言えないけど。
「はぁ。もう!お嬢様が心配になります!旦那様と奥様が御心配されるのも、良く分かります!」
「そう…かしら?」
「そうですっ!!」
アメリアは『お嬢様は、私が護ります!』と、意気込んでいたけれど。
私、この国で一番強いよ?
しかも、そこに異世界チート身に付けちゃったよ?
…っていうか。
私を昏睡状態にさせた奴、後悔させてやるからな?
パワーアップさせてもらったよ?
感謝で、ぶっ潰してやるから、覚悟なさい!
と、いうことで、王城到着~!
初出勤♪初出勤♪(復帰後)
はっ。スキップしそうだった!あっぶな。
此処は、王城。
優雅な身のこなしで。背筋をピンと伸ばして。
颯爽と歩く!
~♪~♪
はっ。鼻歌歌いそうになった!やっば。
此処は、王城。此処は、王城。
「カレン嬢。もう体調は大丈夫なの?」
わぁお。見目麗しい王子様!!
「ルイード第三王子殿下。御心配、痛み入ります。もう万全で御座います」
微笑んで、頭を下げる。
ルイード王子も、にっこりと王子スマイルを作る。
おぉ~。何か、親近感。
彼は、こっち側の人間だな。
多分、彼も私の正体に気がついているはず。
正しく、
――――類は友を呼ぶ。
二人で微笑み合っていると、周りの空気が、和んでいくのが分かる。お花が飛んでるって、この事ね。
さすが、王子チート。キラキラしてる。
お友だちになれるかしら?
◇◇◇◇
僕は、田舎から、大学に進学した。
奨学金で、大学の寮に一人暮らし。
放課後は、大学の図書館でバイト。
彼女は、いつも同じ時間にやって来た。
そして、いつも同じ時間に帰っていく。
そんな大学生活も三年目になったある日。
その日は、とても寒かった。
路面が凍るほどに。
彼女は、同じ時間に帰っていく。
その日の僕は、大雪予報の為、図書館バイトを早く切り上げて貰えた。
お陰で帰りの彼女と会えた。
ゆっくりと滑らない様に慎重に歩く姿に、くすっと笑いが漏れてしまった。
それは、あまりにも突然だった。
彼女の目の前にスリップした車が突っ込んでくる。
僕は、自然と駆け出していた。
彼女を抱え、宙を舞う。
二人の身体が、凍るアスファルトに叩きつけられ、
自分の身体から、血の気が引いていくのを感じた。
彼女は、無事だっただろうか?
『…あったかい』
彼女の声だ。
良かった。無事だった。僕は静かに目を閉じた。
~・~・~・~
「……っ?…ん?」
あれ?此処は…
「ルイード?気が付いたか!おい!医師を呼べ!」
頭が割れるように痛い。
それよりも、此処は何処だ?
…ルイードって、誰?
僕の事か?えーっと。僕はこの国の第三王子。
仲睦まじい国王と王妃の三男。
ルイード・エスタンシア。18歳だ。
マジ?
これって、あの彼女がよく読んでいた系統の本の…いわゆる異世界転生ってやつか!
王子になったの?
しかも、王位とか関係なさそうな第三王子に?
何それ。めちゃくちゃ良いじゃん!
「お前と一緒に倒れたカレン嬢も、先程、目覚めた様だよ。良かったな」
「…え?…カレン嬢?」
「お前の想い人だろ?」
ええっと…カレン嬢?…あぁ!思い出した!
そうそう。
彼女は、『白魔女』と呼ばれている宮廷魔術師だ。
一緒に倒れた?だって?
いや。あれは…間違いなく『暗殺』だった。
一体、どっちが、ターゲットだったんだ?
「いや。あれは、暗殺だよ?兄上」
「何だって?!分かった。至急、調査する」
第一王子の兄は、慌てて部屋を出ていった。
王家が抹殺してくれるだろうな。犯人、御愁傷様。
彼女の事を護りたかった。
しかし、この国で一番の『白魔女』ですら、一緒に倒れたのだ。こんなショボい第三王子では、護れるはずもなかった。
自分が出来るのは、白魔法を少々。
後は磨きに磨いた剣術と体術のみ。
プラス、どうやら異世界チートもついたようだ。
名付けて『キラキラ王子スマイル』。
これは…あまり使えない。
まぁ、何でも虜にしてしまうチートっぽいのだが。
そんなこんなで『白王子』なんて別名付けられた。
…最悪。めちゃくちゃ格好悪い。
何だよ!『白』って。
何でも『白』つければ良いなんて思うなよ?
まぁ、使えるものは使わせて貰いますけど。
一週間もすれば、王子にも、慣れてきた。
ニコニコしていれば、大体、何とかなる。
あのバイト三昧が懐かしい。
今頃、彼女はどうしているのだろう?
ちゃんと怪我は治っただろうか?
後遺症などなく、普通に生活出来ているかな?
また図書館で本を読んでいるのだろうか?
会いたいな。
あれ?何だ、コレ?
…ああ。そっか!
僕は、彼女に恋をしていたんだ。
それに気が付かずに、三年も過ごしていたのか。
そして、想いを伝えることもなく、死んだのか。
馬鹿だな、僕は。
この世界の僕は『白魔女』が、好きなんだよな。
今度は、この想いを伝えられるかな。
いや。伝えなきゃな。
前世の僕の分も。幸せにならないと。
彼女が僕を好きになってくれるとは限らないけど。
ああ。この世界は、平和だ。
前から歩いてくるのは…『白魔女』?
いや…本当に綺麗な人だ。異世界、万歳。
「カレン嬢。もう体調は大丈夫なの?」
声をかけてみた。
目が合うと、にっこりと微笑まれた。
「ルイード第三王子殿下。御心配、痛み入ります。もう万全で御座います」
おや?
この笑顔。僕のチートと似てる?
そうか!彼女も、僕と同類だな?
そして、彼女も、気づいている。
…なるほど。
「そうか。良かったよ。ちょっと話がしたいのだけれど、時間をとってもらえるかな?」
彼女は、きょとんと首を傾げる。
うっわぁ…超絶可愛い!!
これって、競争率めちゃくちゃ高いんじゃね?
でも、僕は王子だからね。
使えるものは何でも使わせて貰うよ?
僕は彼女に近づき、耳打ちをした。
「あの日のあれ。僕には、思うところがあるのだけれど。君はどうかな?」
彼女は目をパチパチさせている。
いちいち可愛いぞ、おい!!
「実は…私も、あれは只事とは思えませんの。もちろん、お話しさせていただきたいですわ」
「では、今日のランチでも一緒にどうかな?」
「ええ。是非に」
よっし!
ランチの約束、取り付けた!!
前世でも、積極的に話しかければ良かったな。
ああ。でも、一度だけあったな。
大学の学食で。
斜め前のテーブルに座った彼女は、ランチをのせたトレイを傾けすぎて、お茶を溢していた。
僕の方まで流れてきて、焦る彼女に、大丈夫と声をかけると、二人で笑い合ってしまった。
あの時。
少し話したんだったな。
同じ歳で、同じ学年で。
近くの寮で一人暮らししていること。
図書館でバイトしていること。
彼女と田舎が近かったこと。
彼女も一人暮らしをしていること。
本を読むのが好きなこと。
それは、知ってるよ。
図書館で見かけてたから。
それから、図書館で彼女を見かけると、視線を合わせて、微笑み、会釈するくらいの関係にはなった。
図書館だし、ね。
話しかけたりはしないよ?
あの日の帰りは、話しかけようとしていたんだ。
だから、彼女を見ていた。
僕がもう少し早く声をかけていたら。
違う結果になったのかもしれない。
後悔したって、もう元には戻れない。
それなら、今を全力で、後悔のない様に生きよう!
幸せな事に、今の僕は王子だ!
そして、少し手を伸ばせば、届くところに愛しい人がいる。今度はチャンスを掴んでみせる。絶対に。
◇◇◇◇
おぉっ王子にランチに誘われた~!!
すっごいキラキラのイケメンだった!
眩しすぎ…金髪、紫の瞳。ザ・王子!
早くランチの時間にならないかな~♪
よし!
サッサとおじいちゃん達、懲らしめてきましょ?
調査書を提出し、あと宜しく~♪
ふぅ。これで、風通しも良くなるわ。
「カレン」
振り返ると、お父様がいた。
「お父様…いえ、フェリクス師団長。いかがなさいました?」
「聞いたぞ。お前が倒れたのは『暗殺未遂』だったと」
「それは…どなたから?」
「陛下だ」
「そうですか…では、ルイード殿下は、お気づきになられているということで御座いますね」
「そういうことだ」
厳しかった上司の目が、優しい父親の目に変わる。
「カレン。隠し事をするな。余計に心配になる」
頭を撫でる父を見上げる。
「だって。お父様は、心配しすぎて、私から自由を奪ってしまうではないですか!私は不服ですのよ」
そう言うと、父は、しょぼんと項垂れた。
「先日だって、私の貴重な一週間を、束縛したではありませんか!」
この際、不満ぶちまけちゃいますよ?
父の肩が縮こまっていく。
その様子に『ぷっ』と笑ってしまった。
「もっと娘を信じてくださいませ。私は、お父様を心から信じておりますわよ?」
父は、ふぅと息を吐くと、優しく笑って言った。
「そうだな。親バカも程ほどにしないとな」
そう言って、頭をポンポンと撫で、歩いていった。
何だか、幸せだな。
前世では、感じなかった親子の絆。
あの頃、苦しかった。
早く親元を離れたくて、わざと遠い大学に進学し、一人暮らしをした。
私の心の拠り所が、図書館だった。
そこで、いつも会う人がいた。
ある日の学食で、ぼんやりしながら、空席を探し、座ろうとしたら、斜め前に図書館の彼がいて驚き、お茶を溢してしまった。
慌てる私に、優しく『大丈夫』と言ってくれた。
お互いの事を少しだけ話せた。
彼に私を知って貰えて、彼の事を少しだけ知れて。
図書館で働く彼と目が合うと、互いにお辞儀して。
はにかんだように笑う彼の笑顔が好きだった。
あ…何だ。そっかぁ。
私は、彼に恋をしていたんだ。
今さら、気が付くなんて。
そういえば、さっきのルイード王子の笑顔。
少しだけ、彼の笑い方に似てたなぁ。
ああ。早くランチの時間にならないかな。
~・~・~・~
「時間をとってくれて、ありがとう」
にっこりと王子が笑う。
私は、彼に微笑み返す。
「先程、フェリクス師団長から伺いました」
人払いを済ませたテーブルで話を切り出す。
王子は、手元から視線を私に移す。
「お気づきになられていたのですね。…あれが、『暗殺』だと。」
「ああ。でも、狙われたのが、僕だったのか、それとも君だったのかが、分からなかったし、僕も君と同じ時に目を覚ましたからね」
「そうだったのですね…宮廷魔術師団の団員として殿下をお護り出来ず、申し訳ございませんでした」
頭を下げると、王子は慌てた様に手を振った。
「こちらこそ、不甲斐ない」
「いえ。私には責務がございましたのに」
「大丈夫」
「え?」
「大丈夫だから」
王子は、はにかんだように笑う。
え?
「貴方は…誰?」
胸の奥がざわめく。
何…これ?
自然と口がそんな言葉を紡いでいた。
◇◇◇◇
「貴方は…誰?」
は?
何…言っているんだ?
彼女が目を丸くして、僕を見ている。
僕は、この瞳を知っている。
あの日、僕が彼女に言った『大丈夫』に見せた瞳。
まさか…
いや、まさか…
それなら…
本当にそうなら…
彼女は、僕と一緒に死んだのか?
僕は、彼女を護れなかったのか?
この世界でも、護れなかった様に。
…嘘だろ?
「護れなくて…ごめん」
自然と口がそんな言葉を紡いでいた。
彼女が、目を見開いた。
「車から護ろうと…君を抱えたけど、護れなかったみたいだ」
「…え?」
「東藤 恋さん」
彼女が、驚愕の表情を浮かべる。
…ああ。間違いないな。
「僕は、西條 類だよ」
彼女は、更に驚き、首を振る。
「う…嘘…」
「嘘じゃない」
「なっ…何で?」
「あの日。大雪警報が出て、バイトが早く終わったんだ。帰りに君を見つけた。声をかけようとした。そしたら、スリップした車が、君に突っ込んでくるのを見た」
「え?」
「気が付いたら、君に向かって走り出してた」
彼女を安心させるように、なるべく優しく笑った。
「君を抱えて、車に跳ねられた。今まで護れた、と思っていたんだ。ごめん。護ってあげられなくて」
彼女の頬に涙が伝う。
その頬に手を当て、親指で拭ってあげる。
「じゃあ…あの時、温かかったのは…」
「僕かな」
小さく笑ってみせた。
「君の声を聴いたよ」
「え?」
「『あったかい』って」
「あ…」
彼女は、両手で顔を覆い、本格的に泣き出した。
僕は席を立ち、側にいくと、彼女を抱き締めた。
「ずっと、好きだったよ」
「え…」
顔を上げた彼女の瞳を見つめる。
「伝えられなかった想いを、こうやって今、伝えることが出来るなんて、僕は…幸せだな」
彼女の涙が止まる。
僕は、心から微笑んで、その場に跪く。
「カレン・フェリクス侯爵令嬢。……どうか、私、ルイード・エスタンシアの婚約者になっていただけますでしょうか?」
彼女の顔が、赤く染まっていく。
彼女の手を取り、その甲に口づける。
「返事をいただけますか?」
彼女は、ハッと我に返り、緊張した面持ちで言う。
「はい。喜んで」
その返事に、二人で『ぷっ』と吹き出す。
『どっかで聞いたね、それ』と。
――――類は恋を呼んだ。
~END~
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