38 メィリィの死
体調が戻ったので投稿を再開する予定です。
ただ、作者がこれから少し忙しくなるので更新頻度が落ちるかもです。
ご容赦ください。
それとタイトルが思い付かなくて物凄くネタバレなタイトルになってしまいました。
「魔王様、大丈夫ですか?」
「大丈夫。ちょっと魔力を使い過ぎた」
「我が兵の為に魔王様の貴重な魔力を使って頂き誠に有難う御座います」
「良いよ。配下からの願いに答えるのも上に立つ者としての責務だから」
「そう言っていただけると有り難いです、魔王様」
「んあ?」
「おお、起きたか。メリーナ」
「あれ?メィリィ様?」
「私より魔王様に挨拶せんか」
「ん?」
メリーナと呼ばれる女性は此方を見るや否やベッドから飛び降りて僕の前に跪いた。
「魔王様、此方に何のご用でしょうか?」
「ああ、傷を治しに来ただけ」
「そう言えば、私の傷は……」
「治したけどあんまり激しい動きは控えてね。また、傷が開くから」
「はい!」
「魔王様、私は状況確認に参ります。魔王様は如何されますか?」
「僕は此処でちょっと話すよ」
「分かりました。直ぐに茶を用意させます」
「良いの?」
「勿論で御座います。メリーナ、くれぐれも失礼が無いように」
「分かっています。メィリィ様」
メィリィは出ていく。
さて、何を話すか。
「えっと、あの、魔王様、本日はお日柄もよく」
何か司会進行役みたいなこと言い出したけど、話すことがなかったのか。
「ゴホン、メリーナ。家名を与えたいと思うが」
「えっ、あと、あの、私がですか!?」
「嫌だったかな?」
「いえいえ、ホントに宜しいのですか!?兄より先に家名を与えられるなど」
「そういやそうだよな。でも、家名だから良いんじゃないか?」
「そうですが……」
「じゃあ、取りあえずミドルネームってのは?」
「それが良いです、魔王様」
「じゃあ、僕のシーウォンをミドルネームにすると良いよ」
「エエェェ!」
大丈夫か、此の世のものじゃない奇声だったけど。
「大丈夫か?」
「はい、ホントによろしいのですか?」
「うん、別に良いよ」
「本当にありがとうございました」
「じゃあ、僕は帰るよ。じゃあね」
僕はそう言って個室から出て魔王城に帰った。
ーーーーメリーナ視点ーーーー
どう言うことだろうか。
いきなり魔王様がこんなところまで来て私の傷を治して家名まで……兄の依頼と言っていたが少しは私を助けたかった…と思いたい。
まあ、顔も知らないしがない兵士を助ける理由なんか一つ。
駒にするためだろう。
まあ、良いか。
これはこれで魔王様のお役に立てるのだから。
魔王様の真なる目的なぞ私ごときに図れるものではない。
まあ、早く戦場に復帰せねば。
魔王様のために。
私はいつしか兄に憧れていた。
僅か十五歳で四天王に抜擢された。
対する私は未だに四天王の補佐官止まり。
元魔王のミトリス様は今は四天王の座に着いているそうだ。
まずそもそも、四天王かどうかすら私には分からない。
そもそも、私には関係ない。
そんなことを考えながら個室を出て指令室に行く。
「失礼します。第三魔法師団所属メリーナ少佐であります。
メィリィ様はいらっしゃいますでしょうか?」
「いや、メィリィ様は現在外出中であられる。緊急の用件か?」
「そうだ」
「了解した。メィリィ様は現在、五番テントにいらっしゃる」
「情報、感謝する」
私はそう言って五番のテントまで行く。
「失礼します。メィリィ様はいらっしゃいますでしょうか?」
「私のテントでそれを聞くとはな。で、何だ」
「第三魔法師団所属メリーナ少佐、現在より現場復帰したいと考えております。
そのため、メィリィ様の――」
「ああ、勝手に戻っておけ。私の指示は要らない。何せ、先ほど総解任の旨の記された手紙が届いたからな」
「総解任ですか?」
「ああ、魔王様が決めたのか総会で決まったのか。どちらにせよ、私に指揮権はない」
「では、誰が?」
「この現場の責任者は居ない、と言うことになるな。何故、こんなタイミングで総解任なんかやるのか理解しかねるな」
確かにその通りだ。
わざわざ今、総解任するのは理解できない。
まあ、上の考えることは理解できない。
ただ、魔王様は常識的だった。
ならば、その辞令は総会で決まった物なのではないだろうか。
私はそう期待する。
その時、ある一報が報告された。
「失礼します!敵主力部隊がこちらに向かい進軍中であります!」
「なんだと!」
メィリィ様は声を荒げる。
私も声を荒げそうになるが自制して報告に来た士官に聞く。
「主力部隊の進軍速度は?」
「敵主力は騎馬兵で時速約60㎞と現地からの報告では」
「主力の現在地は?」
「ここより凡そ10㎞地点であります」
絶望的すぎる。
10㎞だぞ、0.6時間で此処に攻め入ってくるのだ。
「メリーナ、全部隊を結集させよう。それと魔王城に遣いを出し援軍を」
「魔王城には既に数名が向かっております」
「むっ、ならば動けるものをありったけ集めて迎撃だ」
「「はっ!」」
私はそのままテントを出て人をかき集めた。
総勢、一万名。
それを集めた。
そうして、全迎撃態勢に入った。
「メリーナ、私の星降級魔法を開幕の一撃とする」
「分かりました」
「メィリィ様、敵がやって参りました!」
「では、行こう。「我は魔を操りし王の剣であり、牙。その我に我が主君を守りし力を与えたまえ。我が名はメィリィ!極炎氷結牢獄」!」
その瞬間、周囲は極寒に包まれ敵軍はほぼ壊滅した。
しかし、魔法の効力はこれだけではない。
極寒に包まれたところの回りを囲うようにドス黒い炎の壁が出来る。
ブスッ。
横で鈍い音がする。
私は横を見る。
メィリィ様は死んだ。
敵の矢によって。
その瞬間、魔王が転移してきた。
それから先は憶えていない。




