4 奴隷
確か、「失礼します、ウォルフェン家が長男シーウォン=ウォルフェンでございます。ヴィヴァリタニア王に謁見したく存じます」で合ってるか?
というか、死ぬよー。冗談抜きで微妙に噛んだし。ああ、ヤバイ合ってるかどうかすら分からん。
「何だと!」
あー、怒られる雰囲気?死ぬって言ったじゃん。言い出したのは自分だけど。
「剣鬼殿の息子か。入るが良い」
えっ…?思ったより自分の父親すごい人だった〜!
「で、では失礼します」
ワーオ、ものすごい豪勢なお部屋。ホテルなら何百万取れるんだろ?
「で、何用かな?まさか、私に挨拶に来たわけでもあるまい」
落ち着け落ち着け
「実はですね」僕は今、地面の下で起きていることをありのままに伝えた。
「なんと、第零席次様が!?」
あー、もしかして自分の母親も凄い人だった説。
「えーまあ、そうですね。なので、今すぐここから避難を、あと、出来れば下にいる平民衆も」
「分かっている、今すぐ避難させよう。君達は?」
「今から、崩落の時間を延ばしに行きます」
「そんなことが!?」
「魔法で、どうにか」
「分かった、頼む。避難は出来るだけ早くさせる」
「ありがとうございます」
僕らはそう言って部屋を出て走って外に出た。
思ったより崩落のスピードが早そうだ。もう地割れし始めている。
とりあえず、《土地変幻》
「…私も手伝う…」
というと、ミクは《建物保存》を発動させた。
大分ミクの得意分野とはかけ離れている。予測だが普通よりも魔力の無駄が多いはず。
このまま使うとミクが倒れかねない。というか、もう既に顔色が優れない。
《魔力配分》、一番魔力配分に特化した魔法。他にも《超魔力配分》とかあるけどこういうのは魔族とか器が大きい人に対して複数人で魔力を配分させる魔法だからただの魔力配分にしたんだよね。
「そろそろ避難し終わったか?」
「まだ、一人残ってる」
「ミク、どうする?」
「シー君、助けてあげて」
「オッケー、ミクが頑張って」
「うん、シー君も気を付けて」
僕は《浮遊》を発動させて一人取り残された子のもとに向かった。
あれか?というか、あれならあの怪我で生きてるのか不思議なくらいだな。
「大丈夫じゃなさそうだから助けるよ」
その獣人と思しき子は首を横に振る。
多分、訳アリだと思う。
「なんで?」
「…ご、ご主人様が、動くなと…」
あーなるほど、奴隷だったか。こりゃ想定外。
確か奴隷は奴隷紋を刻まれるはず、となれば上書きすれば。
書き換えが出来ない?
「ちょっとごめんね」僕はそう言うと服をめくって奴隷紋を見た。まあ、大体理解した。奴隷紋と一緒に淫紋も刻まれていた。こいつの主人はゲスか?まあ良い。書き換える項目が一つ増えただけ。
これでも、前世ではPCを徹夜で弄ってたしな。だから、PCのコマンドプロンプトを弄る感覚で魔法も書き換えれるというある種のチート能力だ。
さて、そんなこんなで完了。
ちなみに魔法プロンプトの内容は大体英語表記なお陰でものすごい触りやすさである。
魔法プロンプトというのはコマンドプロンプト的なノリで着けたものだ。
「さて、これで命令は解除されたはず」
「ご主人…様?」
「さっき、命令行使者の欄を僕の名前にしたからそれの影響か?」
まあ、そろそろいろんな意味で限界そうだしちゃっちゃと出ますか。
浮遊を展開しながら《超聖回復》をするのむず!
あとで浮遊もプロンプトを弄っとこ。
「シー君、どう?」
「この子でしょ?」
ミクが首を縦に振る。肯定ということだろう。
「あと、この子奴隷みたいなんだけど、さっき奴隷紋を弄ったから一時的に僕を主人になってるみたいなんだけど」
ミクは一瞬頬膨らませてから、言った。
「うちで引き取る?」
「取りあえず、母さんに相談しよ」
「うん…」
「どうかした?」
「なんでシー君は母さんって呼ぶ?」
僕が理解しかねているのを様子で悟ったミクは更に「普通両親は格上、なのになんで?」と付け加えた。
ああ、なるほど。貴族社会だもんな。普通、お母様とかで呼ぶのか。気を付けないと。
まあ、一歳と何ヵ月かのタイミングでこのからだになりました。というわけにもいかないよなー。
さて、どうしようか?
「取りあえず、この子届ける」
「そうだね」
今考えたら身体は十歳かもだけど精神年齢的には高校生なんだよな。というか、この世界に来たので言えばミクの方が先輩なのか。
「どうかした?」
「いや、ちょっと考え事」
「…なら良い…」
僕らは母のもとに行ってこのこの子をどうするかと相談しにいったのは良いんだけど絶賛戦闘中でした。
「ごめん、近接戦になって」
母もかなり手傷を負っているようだ。
「バトンタッチね」
「お願い、シー」
「任せといてー。あと、ミク悪いんだけど回復お願いして良い?」
「了解」
「さて、待たせたな」
「良いわ、困らないもの」
まずは《真撃》《居合》これで近接戦は有利になる。
「やっぱり貴方めんどくさいわね」
見切ったか。
「まあ良いわ。こっちの方が面白さそうだもの」
「で、魔術でやるか?」
「そうするわ」
さてどうするか。あっちはそろそろか。
まずは《思念伝達》でミクに指示を。
「聞こえてる?」
「うん、聞こえてる」
「回復は後どの位?」
「あと擦り傷直すだけ」
「流石。とりあえず回復が終わり次第逃げてね」
「どうやって?」
「じゃあ、母さんに逃げるって言って。それで分かると思うから」
「分かった」
「じゃあ、気を付けて」
「そっちも」
よし、とりあえず片付いた。あとは目の前の敵さんだな。
とりあえず捕縛の方向で進めるか。
とはいえ今使える攻撃魔法は火球・爆炎・爆炎破、水刃・水炎だけ流石に技の量は少ない。技が少なくても技の質を上げればカバーは出来る。
とりあえず防御魔法は重ね掛けしよう。
と言っても量も少ないんだけど。
まずは、《対魔法防御》・《対物理防御》である程度の対策を。次に《魔法障壁》、《無限》。これが限界だな。無限を発動したのは予防の意味なんだけど。
「準備は終わった?」
「わざわざ待ってたのか」
「ええ、じゃあ遊んであげる」ヒィボリーヌが言う。
ヒィボリーヌは詠唱を始める。
僕はその隙に《火球》を撃つ。
ヒィボリーヌは火球を華麗に避ける。
詠唱は未だ続いている。多分、かなりの大魔術を使おうとしているんだろう。
その隙に火球の魔法プロンプトを弄って一発で神炎と同じ威力にした。あと、矢の形に変えたので命中率アップ。
ついでに魔力消費は火球と同じ。
イヤー、我ながらチートっすわ。
「《あの世で後悔なさい。大虐殺》」
まじですか~、正直無限がなかったら死んでましたね~。
確かに魔術師相手であればこれは有力だろうけど魔法使い相手だと相殺されるか防御されるかのどっちかだな。
魔術は悪魔を媒体とする分、威力はそのまま発現できる。
魔法師は自身で発現する分、魔術師のソレよりも威力は半減する。その分、オリジナル魔法何かも作れる。その点では魔法使いの方が優れているといえる。




