23 島の守護者
ペトがそう叫ぶと上空から咆哮が聴こえる。
しかし、獣人は上空に出現した滅龍帝を一瞬で切り捨てる。
そして、死骸が落ちてくると同時に死骸はミンチにされていた。
ペトは自決していた。
自身の短剣を心臓に刺して。
「大丈夫?」
獣人は呆気にとられている僕の前に来てそう聞く。
「はい。お蔭様で」
僕は金貨を一枚手渡しながら言った。
「返す。私はそう言うの嫌い」
獣人は金貨を僕に返すと振り向き街中へと消えていった。
結局名前は分からなかった。
瑠璃が遠くに見える。
結界は解除されているようだ。
良かった。
「聴こえてるか~?」
「聴こえてるけど」
「今からそっちに行くのだ」
「分かった。取りあえず、結構ヤバいけど来て見て」
「分かったのだ」
御約束の転移でミトリスが来た。
ミトリスはミンチを見て「美味しそう」等と口走っていたが、「食べるのは流石に止めてくれ」、と秘書に言われて食べていなかった。
あんなもん食ったら腹壊すだろ。
と、秘書が一人呟いていた。
そこに瑠璃が飛んできた。
飛んできた光景を見た街中ではパニックが起こっていたらしい。
「我が主、大丈夫ですか?」
瑠璃が僕に聞く。
「ああ、別段怪我はしてない」
と返答しておいた。
ようやく、結界騒動は終わったのである。
それから数日…
「我が主、散歩に出掛けませんか?」
瑠璃の体を拭いていた僕に瑠璃が提案する。
なるほど。たまには散歩も良いかな。
と思ったので快諾した。
「ちなみに何処に行くの?」
「ベトルです。あの島は結構自然豊かで良いですよ」
瑠璃が答えてくれた。
そう言えば大森林の瘴気はどうなったんだろ?
まあ特に気にすることでもないか。
この後、僕は後悔することとなる。
「我が主、同胞が島を案内してくれるそうですが如何しますか?」
空を飛び始めて数分経った頃に瑠璃が僕に問い掛ける。
「お願いしてもらって良い?」
僕は瑠璃にそう聞く。
「はい分かりました。」
瑠璃はそう言うと下の方に降りて近くの龍に鳴いていた。
「瑠璃、鳴くだけで意志疎通出来るの?」
「はい、あれは獣の共通言語ですから」
なるほど。獣にも共通言語なんて在ったんだ。
「それって、人には分からないの?」
「確か、『獣の加護』を持っている人なら話せるのではないでしょうか?」
加護か。
賢者よ、スキルプレート的な物の作製は可能か?
〔魔力を用いての疑似的能力板の作製は可能です。作製しますか?〕
イエス。
〔作製を開始します。〕
賢者がそう告げると僕の手にはA4版くらいのサイズの黒曜石の板があった。
内容は勿論、スキルについてのもの。
何か、色々ある。
内容はこんな感じだった
加護
『精霊の加護』『転生の加護』『魂の加護』『真祖の加護』『剣の加護』
『魔法の加護』『魔道の加護』『悪魔の加護』『天使の加護』『守護の加護』
『獣の加護』『言語の加護』『従魔の加護』『好魔の加護』
スキル
『魔法適正Lv10』『吸血』『天使召還』『悪魔召還』『結界破壊』
『全契約破棄』『精霊女王の守護』『神への道』『神適正』『魔力操作』
『言霊』『呪詛』『魔力封印』『賢者』『神獣殺し』
『魔獣殺し』『魔王』『無欲之王』
何だこの頭おかしいスキル達は……
というか、何のスキルなのかもよく分からない。
〔所持スキル及び加護の解説をしますか?〕
お願いします!賢者様!
〔では開始します。内容を能力板に転写しますか?〕
イエス!
僕は心の中でそう告げると自分の持っている板に項目が増えているのが分かった。
内容はこんな感じ。
加護
『精霊の加護』…全ての精霊を使役することが出来る。
使役していない精霊を使用できる。
『転生の加護』…転生者に送られる神からの特典。
加護内容は『能力値上昇』『魔力総量上昇』『異界渡航』。
『魂の加護』…魂に作用するものを全て無効化する。
死を克服できる。
『真祖の加護』…吸血鬼の真祖からの贈り物。
日光、十字架、ニンニクを克服できる。
『剣の加護』…どんな剣でも扱える。そして、どんなものでも斬ることが出来る。
剣神ヴァレンにより与えられた贈り物。
『魔法の加護』…魔法に対する絶対耐性、魔法適正を付与する。
創造神の気紛れにより付与された。
『魔道の加護』…魔術に対する絶対耐性を付与する。
創造神の気紛れにより付与された。
『悪魔の加護』…悪魔種を使役可能。
悪魔族の長が授けた。
『天使の加護』…全ての天使を従えることが出来る神の器。
創造神が適当に付与した。
『守護の加護』…どんな場所でも怪我、病に罹らなくなる。
奈津智の願いにより与えられた。
『獣の加護』…獣に好かれやすくなる。
獣の言葉を理解できる。
『言語の加護』…聞いたことのある全ての言語をマスターできる。
どんなところの言葉でも理解可能。
『従魔の加護』…従魔に対する制限を変えることが出来る。
また、他人の従魔に干渉できる。
『好魔の加護』…魔族・魔獣に好かれやすくなる。
吸血鬼の固有加護。
スキル
『魔法適正Lv10』…全ての魔法に対する適正を与えるスキル。
『吸血』…相手の血を媒体として生命力や魂を抜き取ることが出来るスキル。
『天使召還』…天使を召還して契約することが出来るスキル。
『悪魔召還』…悪魔を召還して契約することが出来るスキル。
『結界破壊』…超高位結界以外の結界を破壊出来るスキル。
『全契約破棄』…全ての契約を代償なしに破棄することが
出来るスキル。
『精霊女王の守護』…精霊女王の守護を受けることが出来るスキル。
『神への道』…神以外、干渉し得ない物に干渉できるスキル。
『神適正』…神になることが出来るものが持つスキル。
『魔力操作』…魔力を操作出来るスキル。他人の魔力も制御可。
『言霊』…自身の放つ言葉に強制力を持たせるスキル。
また、相手の言霊の方が強い場合は効果はない。
『呪詛』…呪いを付与できるスキル。
『魔力封印』…魔力の使用禁止空間を生成するスキル。
『賢者』…叡知の書架に接続されているスキル。
スキル妨害を受けても発動可能。
『神獣殺し』…神獣を殺害する時にダメージを10倍にするスキル。
『魔獣殺し』…魔獣を殺害する時にダメージを10倍にするスキル。
『魔王』…全ての魔族が眷属になるスキル。
『無欲之王』…人間の持つ欲を失くすことが出来るスキル。
主に生理的欲求、安全欲求、親和欲求、承認欲求、
自己実現欲求を失くす。
頭おかしめのスキル達なのは理解した。
というか、気紛れって何だよ、気紛れって!
「我が主、島に着きました」
能力板を見ていると瑠璃がそう言う。
「ここからは歩いて島を回りましょう。とはいえ、かなり大きい島なので一日では回れないと思いますが」
「なら、たまに来て回る?」
「良いですね、それ!」
瑠璃はそう言うと海岸沿いの浜辺に降りた。
「ねえ瑠璃、どうやって森に入るの?」
「人化します」
「人化とかできるの?」
「はい!」
瑠璃は元気よく言うと美青年?になった。
「瑠璃って雄?雌?」
「雄ですよ」
じゃあ美青年で間違ってないか。
僕はそんな下らないことを考えながら森を進む。
森の生物は大体畏縮していた。
まあ、瑠璃が居るからなんだろうけど。
途中で喧嘩を売ってきた奴が居た。
獣の加護を発動させていたので話は分かった。
どうやら喧嘩を売ってきた相手は【森の女王】と呼ばれる一体の龍姫という種族で前に居た龍王がどこへ行ってしまいオスを探していたらしい。
そこに来たのが瑠璃だったというわけである。
要は森の女王が勝てば結婚、瑠璃が勝てば結婚は無し。というわけだ。
ここは瑠璃に勝ってもらわないと困る。
というわけでかれこれ三十分程、戦闘が続いているのだが中々勝敗が決まらない。
ちなみにバトっている場所は島の中心のカルデラである。
というか、そろそろ山が無くなりそうなんだが…。
僕はそう思ったのでスキル『言霊』で二人?二匹?を止めた。
〔称号 森の主人を取得しました。続けて、称号 島の守護者を取得しました。
これら二つを統合して称号 自然の王を取得しました。〕
なんか称号が増えたらしい。
賢者さん、説明プリーズ。
〔称号 自然の王は自然を守ったものに与えられる称号。
森、海、山、大地etc.の自然が自身の味方となる。
また、称号 島の守護者を統合したことによりこの島に対する絶対結界を発動しました。
効果は島に対する外部からの干渉を全て跳ね返す、というものです。
よって、守護者が認めたもの以外の立ち入りを拒否します。〕
なんかすごそー。
と、もの凄い乾いた感想を抱いたのですがこの称号が後々役に立つことは知る由もなかったのでした。
「何故止めた?」
僕がそんなことを考えてると森の女王が僕に訪ねる。
「このままだと森に土砂が流れ込みそうだったから。あと、僕の眷属になる気はある?」
これぞ、島の守護者の特権。
眷属!
なんか、神様とかが持ってそうだけど別段問題はないだろう。
結構平和な回でした。
あと、解説回的な感じで書いたので解説メインになってるかもです。




