19 魔王
僕らはそれから二日後に魔族王国の首都ブリッセトに到着した。
魔王城は前世で見るような禍々しい感じのものではなく主要都市六つに城がありそこから魔王城を支える形で首都に聳え立っている。
パッと見だとエベレストより高いんじゃないだろうか?
「貴殿がシーウォン=ウォルフェン公爵閣下でしょうか?」
魔王城から出てきた魔人は僕を見るなりそう尋ねる。
「ええ、私がシーウォン=ウォルフェンです。あなたは?」
僕は魔人にお辞儀をしてから名を聞く。
「ああ、これは。失礼しました。私はベルフィ=フォン=トールと申します。種族は亜人族です」
僕は魔人ではなかったことに驚いた。
見た目も魔力も魔人にかなり近かった。
「そうでしたか、亜人族が何故、魔王城に?」
僕はふとした疑問を訊ねる。
「実はですね。百年近く前に勇者が魔王討伐のために放った魔法があったんですけれどそれにより近くにあった亜人族の集落もほぼ全て焼けてしまったんです。そこで、魔王様方が我らをお助けになられたので我らは魔王様方への忠誠を捧げ支えていると言うわけです」
ベルフィはそう話す。
「それは、失礼なことをお聞きしました」
僕は聞いたことを後悔した。
「いえ、それよりも魔王様方がお待ちです。どうぞ」
僕らはベルフィに連れられ会議室の様なところに連れられる。
「っ!これは失礼しました。隻眼の吸血鬼様」
銀髪の紳士のような格好をしている魔王の一人が僕のことを見て言う。
「隻眼の吸血鬼様っ!?」
それに釣られたかのようにその横に座っている艶のある深紫色の髪のサキュバスが言う。
「隻眼の吸血鬼様が復活したと言う話は聞かないのだ。無いの……。失礼しました。隻眼の吸血鬼様」
一番奥に座っている魔王が言う。
外見は幼女……なのだが、魔力は物凄い。
どの魔王より存在感がある。
「だから、言ったでしょう。隻眼の吸血鬼様が復活したと」
一番手前の席の魔王が言う。
「えっと、何かありましたか?」
僕は状況が飲み込めなかった。
「ああ、申し訳ありません。私は魔族王国四天王が一人、ディルメルドと申します。この国の財政面での責任者を勤めております」
一番手前の席の魔王が言う。そして、僕の前に跪く。
「私ですね。では、改めまして、魔族王国四天王が一人、メィリィと申します。この国の軍事面での責任者を勤めております」
サキュバスが言う。そして、先ほど同様に僕の前に跪く。
「先ほどは無礼を働きましたがどうかお許しを。宜しければ私に名乗る機会を」
幼女が言う。そして、僕の前に跪く。
僕は「別に気にしてはいませんので、どうか頭を上げてください」幼女に対しそう言う。
「ありがたき幸せ。では、私は魔族王国の魔王のミトリスと申します。この国の全てにおいての責任者を勤めております」
幼女は頭を上げ僕に名乗る。
「次は私ですね。私は魔族王国四天王が一人、ベリットと申します。この国の政治面での責任者を勤めております」
一番最初に口を開いた男が僕に跪きながらそう言う。
今思ったが、三人しかいなくね?
あと一人はどこ行ったんだろ?
僕はふとそう思った。
「隻眼の吸血鬼様、ここではあなた様を嫌うものは居りません故、どうか吸血鬼化を」
ミトリスが言う。
吸血鬼化して良いのか?
というか、魔力を出して大丈夫なのだろか?
まあ、仮にも魔王だし良いか。
僕はそう思い吸血鬼化して魔力全開にした。
すると、周りにいた上位魔人は気絶し魔王達ですら立つのは厳しそうだった。
なので、魔力は三十%しか出さないようにした。
この程度なら下位の魔人や亜人族も倒れることはない。
まあ、人と出くわした瞬間人は気絶するだろうが人族はあまり居ないそうなのでまあ良いだろう。序でに言うと人族以外の種族は魔力耐性が高いそうなのでこの状態で出歩く。
それから数十分後……
「で、僕がここに呼ばれた理由は?」
僕は魔王達に聞く。
「それはーー」
ベリットが言うとすると、言葉を断ち切るようにミトリスが言う。
「近くの山脈の龍の動きが活発になったのでそれを次期魔王候補に見てもらおう。と言うことだったんだが、まさか隻眼の吸血鬼だったとは」
大笑いしているミトリスを横目に話を続ける。
「なるほど。で、肝心の山脈への行き方は?」
僕は聞く。
「それは竜に乗って行きます」
ベリットが言う。
「なるほど。で、家名みたいのは無いの?」
僕は魔王達に聞く。
「代々、魔王様に名付けてもらわなければ家名は無いんです。魔獣は名前がないので名持ちに成るには魔王様に名付けてもらう以外では成れないのです」
サキュバスのボン・キュ・ボンのお姉さん、もといメィリィが言う。
「で、今のところ私の“魔王”と言う称号はあなたに移るんだか良い?」
絶対拒否権はないな。
「ええ」
僕は答える。
「では、竜を選びに行くのだ」
ミトリスは僕の手を掴んで外に連れていく。
僕の目の前にいるのは二十頭程の竜。
様々な色のがいる。
基本的に龍は力でねじ伏せ従わすのが定番らしいが僕は何故か懐かれている。
主にこの藍色の鱗を持った奴に。
まあ、良いか。懐かれるなら。
僕はそう思いその子を選択した。
名前は『瑠璃』と言う名前にした。
その瞬間、竜は上位種である龍帝に進化した。
僕は身体が重くなる感覚に襲われた。
〔竜を龍帝に進化させた影響で魔力を消費しました。現在、95253590mpです。〕
頭のなかで声が聞こえる。
人間なら死んでたな。
しかし、この化物魔力量のお陰で死なずにすんだ。
「なんと、龍帝に進化ですと!私でも龍が限界でしたのに!」
ミトリスが感嘆の声を上げる。
そんなすごいのか?
〔種族名龍帝は小竜の分岐進化系。通常種は龍王となる。龍帝は稀少種。〕
稀少種かい!というか、分岐?
〔解:ある獣、魔獣には分岐進化がある。〕
それだけ?
それだけなのか。
まあ良いか。
「えっと、いつ行くのだ?」
ミトリスが僕に声をかける。
様子を見るに今すぐ行きたいと言う様子だ。
「今から行く?」
僕はミトリスに聞く。
「良いのか?」
ミトリスは早速自分の龍を連れてきている。
というか、龍退治に行くのに龍に乗っている僕らとは?
「うん、良いけど。用意は……それで良いの?」
いつの間にか服装も変わっていてポロシャツにミニスカと言う何とも言えない格好だった。
「良いのだ。私に傷をつけれるのは他の魔王くらいなのだ」
他の魔王しか傷つけれないって結構化物なのでは?
「まあ、良いけど。じゃ、行こっか」
そうして、僕の龍退治は始まったのだった。
「ここ?」
僕が連れられたのは標高五千メートルくらいの山の頂上。
前世なら死んでたな。魔法は偉大だわ~。
僕はミトリスに聞く。
「ここは、フィレッタ山。龍の棲家だ。ちなみにこの辺は森の守人の守護領域なのだ」
ドッガアァァァン
近くでそんな轟音がする。
「何の音だろ?」
「ちょっと待っとくのだ」
そう言ってミトリスは一瞬でその場から消える。
というか、さっきまで敬っときながら急にタメグチになるって……
いやまあ、さっき堅苦しいからもうちょっと他の接し方してっていたのは僕ですけれども。
「帰ってきたのだ」
ミトリスが音も立てず先ほどまでいたかのように戻ってくる。
「で、何だった?」
「魔龍だったのだ。それが何かと戦っているようだったのだ」
魔龍って何よ?
〔魔龍とは突然変異した龍のこと。また、戦闘能力においては龍王をも上回る〕
ヤベー奴じゃん。
それと戦ってる奴って化物だな。
「そこに行くことは?」
僕はミトリスに聞く。
「行けるのだ、どうせなら戦ってみるのも良いかもなのだ」
ミトリスが目をキラキラさせて言う。
「まあ、取りあえず行ってからで」
僕はそう答える。
「じゃあ、手を繋いでおくのだ」
なーにをいっとるだこいつ?
まあいっか。
僕はミトリスの手を繋ぐ。
その瞬間、魔龍の目の前にきた。
こいつ、後で言い聞かせておこう。
「で、私が倒すのか?」
ミトリスが僕に聞いてくる。
「いや、僕が倒す」
僕はそう答える。
「あのさ~、私の獲物盗らないでくれる?」
近くにいたピンク髪の女性が僕に声をかける。
来週から少し忙しくなるので毎日投稿が厳しいかもです。
すみません。




