表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したので転生ライフを楽しみたいと思います  作者: 五月メイ
第三章 旧クラスメートとの再開編
19/45

17 先生の憂鬱

富士栗葵唯視点

はぁ、何て不甲斐ないんだろう。

彼女は部屋のベッドに横になりながらそんなことをふと思う。

今まで大体のことがどうにかなっていたけれどいざ一人で何かしようとしてもどうも上手く行かない。

菜津君との交渉も、戦いも。

そんな時にいつも私たちの面倒を見てくれているメイドから一つの紙が渡された。


内容は首都へ進行中のB+相当の魔獣の討伐依頼。

差出人はシーウォン=ウォルフェン公爵。

つまり、菜津智君。もと私の教え子でつい先日通り魔に刺されて死んでしまった子。そして、なぜか今私達のことを指示する立場いる人。

何があったのか。私は最近そんなことばかり考える。

なぜ菜津君があんな風になってしまったのか。

昔の菜津君は心優しい子だったはずなのに。

私は紙を見ながらふと考える。


そしては私はまたベッドに倒れ込む。

どうするべきか。

この前は失敗したけど今回は失敗しない。

生徒たちはこの前の菜津君との戦闘でステータスも上がった。

そして、連携の取り方も分かった。

だから私は確信を持てる。


それでも僅かCランクの魔獣に負けている私達で勝てるのかと不安にあることはある。

しかし、やらなければいけない。

菜津君はあの大量の魔獣を一瞬で殺した。

なのに、私達は一人で一匹も倒せないような雑魚。

でもなぜ?

そんな菜津君ならその魔獣も倒せるんじゃないか?

でも、菜津君は忙しいのだろう。

ならば、私達が倒すしかない。

折角、菜津君が私達を頼ってくれているのだから。


翌日

私は大食堂に来ていた。

そこで、生徒たちが食べているのを見ながら私は生徒たちに一言「聞いて欲しいことがあります」と言う。

皆さんは手を止めて視線を私のほうに移動する。


「えーと、実は菜津君から魔獣の討伐依頼が来ました。ランクはB+相当だそうです」


久しぶりに大勢の前で話したせいで時々、かむ。

慣れていたはずなのに緊張する。


「それで、私は協力するつもりなのですが皆さんは任意で参加してください。嫌なら、来なくても大丈夫です」


少し、嫌味な言い方だっただろうか?

私はそんなことを思いつつ言葉を進める。

私が話し終わると生徒たちはざわめき始める。

そして、少ししてざわめきが収まると漣江峙君が立ち上がり、こう言った。


「先生に着いていきます」


と。それを聞くや否や次々と生徒が立ち上がり私も、という声が聞こえる。

私は良い生徒を持ったんだなと再認識する。


「ありがとうございます。皆さん」


私は泣きながら言う。


食事が終わり、ある一人の生徒が私の部屋へ来た。

「先生、智には会えたんですか?」

そう、各務原リンさん。

菜津君の幼馴染みで気の強い女の子。

私は言う。

「ええ、会えました」

各務原さんは私も智のとこに行きたいです。と言う。


「会えるかは…分かりませんよ?」

私は少し、下を向いて言う。

「良いんです。会えなくても」

彼女は陽気な声で言う。

「分かりました。案内します」

そう言って私達は菜津君の部屋を訪ねた。


「菜津君、居ますか?」

私は小声でノックをしながら言う。

何せここは立ち入り禁止エリア。そこに入っているのだから、見つかれば何をされるかは分からない。

ドアの向こうから声が聞こえる。

「あなた方はシーウォン様のご友人ですか?」

と、ドアから顔を覗かせたのは金髪の美少年だった。

「えっと、あの、私は富士栗葵唯と言います。菜津君に会いたいのですが?」

私はその少年に声をかける。

「分かりました。シーウォン様は現在、外出中であられます。中で暫しお待ちを」


金髪の美少年はドアを開けると応接用の椅子に私達を案内する。

そして、お茶と茶菓子を出してどこかへ行く。

「先生、ここが智の部屋?」

横に座って茶菓子を食べている各務原さんが私に聞く。

「ええ、まあこの前の婚約者の方はインパクトある報告でしたが」

私は何も考えずにそんなことを言う。

それを私は後悔することになる。

「婚約者?」

各務原さんが私に聞く。

「ええ、確かミクナレドさんでした」

彼女の顔は涙で歪んでいた。

「そう……でしたか……」

各務原さんはおもむろに立ち上がったと思うと走ってドアから出ていってしまった。

「各務原さん!」

私は叫ぶ。しかし、各務原さんはどこかへ消えてしまった。


と、そんな時菜津君が戻ってきた。

「先生、一応僕的には個人的な関わりは断ち切るつもりなんですけど」

菜津君は澄ませた顔で言う。声にも感情が乗っていない。

「そう言う、約束ですからね」

確かに約束はしたけれども菜津君はまだ面倒を見てくれている。

まあ、これが仕方なくやっているのかは私には分からないが捨てられていないと言うことだろう。

「まあ、良いです。で、リンは?」

菜津君が表情を変えずに私に聞く。

「それが……」

菜津君はそれを聞くなり、部下の方に極秘裏に捜索するよう命を出していた。

「では、私はこれで」

私はドアを出て生徒たちが待っているメトス高原に行く。


「先生、各務原さんは?」

漣江峙君が私に聞く。

私は「菜津君と喋っています」と言った。

少し、心苦しかったが今、生徒たちが動揺すると命の危険がある。

だから、嘘を言う。

「そうですか。なら良いです。では、行きましょう」

きっと、分かっていたのだろう。

しかし、それを隠してくれている。

考えは同じようだ。


あれなのか?

あんな、化け物を私達だけで倒せるのか?そんなことばかりが頭をよぎる。

目の前にいるバトメスクに怯えている。

バジリスク種の最高進化系。

そして、この高原での絶対的な支配者。

それを私達だけで倒す。

まずは霙さんの超爆炎氷弾(エルド・ヒューマ)をバトメスクに打ち込む。

バトメスクは走るのを止めず突撃してくる。

それの四肢を神藤君が切る。

しかし、その四肢は再生を始める。

私達はバトメスクの腹側に潜り込む。

そして、一秒の狂いもないように全員で腹を裂く。

私達は血塗れになる。

臭い。とても臭い。しかし、それを我慢してもう一度刺す。

霙さんが裂いたところに雹弾(デレィート)を打つ。

バトメスクの出血量が増える。

バトメスクは石化光線を打つ。

しかし、そこには誰もいない。

退避済みだ。

バトメスクは動きが鈍る。

徐々に脱力するように高原に横たわる。


「勝ったんですかね?」

血塗れになった大崎さんが私に聞く。

「ええ、皆さんの力で」

私は生徒たちに伝える。勝利を。

生徒たちは叫んでいたり高原の草を布団がわりに横になったり、勝利の美酒に酔い惚れている。

でも、このくらいは良いのではないだろうか。

私も草に身を任せる。


目が覚める。

どうやら、疲れて寝てしまっていたようだ。

日の様子からもう夕方。

早く戻らないと菜津君に心配をかけるかもしれない。

私はそう思い周りに寝ている生徒たちを起こす。

そして、疲れた身体で王宮備え付けのバスルームへ向かう。

報告書は後回しだ。

この身体にこびりついた血を洗い流すほうが先だ。


夕食はステーキだった。

私はこっそりワインを用意してもらった。

美味しい。

疲れた身体にワインのフルーティーな香りと炭酸が染みる。

ステーキを一口、口にいれる。

これまた、絶品。

噛んだ瞬間、肉汁があふれでてくる。

一つ心残りがあるとすれば各務原さんのこと。

未だに彼女は見つかったと言う報告は来ていない。


翌日

気持ち悪い。

勢いにのってワイン五杯も飲んでしまった。

菜津君からは報告書の催促されているし。

失敗した~。

さっき聞いたところあれのアルコール度数は50%だったらしい。

飲み過ぎた。頭も痛いし気持ち悪いし。最悪な気分だわ。

たまに生徒が見舞いに来てくれるがお説教も混じっていることがほとんど。

そんな時、ノックが聞こえた。

「はーい、誰ですか?」

私はドアの方を向きながら聞く。

「失礼します」

そこにいたのは菜津君だった。

「菜津君!」

私は驚いて立ち上がった。そのまま、菜津君にもたれ掛かってしまった。

「先生、無理はしないで下さい。あと、リンも見つかりましたから」

菜津君は私をベッドに寝かせるとそう言った。

「そうですか、なら良かったです」

私は安堵した。

「では、僕は昨日の報告書を読まないといけないので」

私は戸惑う。

報告書?私は出していない。

「どういうことですか?」

私は菜津君に聞く。

「聖から報告書は出してもらいましたから」

そう言って菜津君は出ていった。

今回は菜津君の出番無しです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ