13 勇者一行
僕らは隻眼の吸血鬼に案内されるがままに一つの部屋に入った。
そこはまるで王立闘技場を小さくしたみたいだ。
「さて、君も準備していーよ。私も準備するから」
僕は頷くと早速魔法を発動させた。
すると、隻眼の吸血鬼は僕の発動させている魔法を次々と言い当てる。
「対魔法防御、対物理防御、魔法障壁、あとは~、多分無限を纏ってるね」
完璧だ。まるで魔法が見えているかのよう。どれだけ鍛え上げた魔女だろうが防御魔法は攻撃を当てるまでは分からない。なのに、こいつは全てを言い当てた。ノーヒントで。
「なぜ、僕の防御魔法を?」
「教えてあげる。私は魔法の効果、名称を見ることが出来る心眼を持ってるの。だから、分かるの」
「それは、教えても良いものなんですか?」
「別に、教えても大して戦況は変わらないと思うから」
これまた、魔法使いには厄介極まりない敵だ。
隻眼、多分それが彼女の言う心眼なんだろう。
ならば、呪詛を使うまで。呪詛は声にのせれば相手に強制することが出来るようなチートなのだ。
僕は小声で「心眼は使うことが出来ない。そして、動くことが出来ない」と言っておいた。
そして、僕は剣を獄炎を付与した。
「準備は整ったかな?」
隻眼の吸血鬼は言う。
「ええ、いつでも」
「じゃあ、始めるよ」
隻眼の吸血鬼は一瞬で僕の間合いに入ってくる。そして、彼女は黒刀を振るう。
僕はそれを紙一重で避ける。
その後も隻眼の吸血鬼が攻撃をして僕が防戦に徹する状態が続いた。
「なんで、攻撃しないの?」
隻眼の吸血鬼が聞く。
「隙が無さすぎるからですね」
僕は答える。
「君にも隙はないよ。あと、あなたからは私と似た匂いがする」
「それは、どういう、匂いですか?」
「半吸血鬼」
隻眼の吸血鬼は一言僕に答える。
「半吸血鬼ですか?」
「そう、母親が吸血鬼じゃない?」
「僕は、日の下も歩けますけど?」
「だって、私よりも真祖に近いから」
「真祖に近いと大丈夫なんですか?」
「そっ、純血じゃなくなる程吸血鬼としての能力が落ちる」
「真祖は大丈夫だったんですか?」
「そう、真祖は日光、十字架を見ても一切症状はでない、そして血も飲まなくても大丈夫」
「それは、吸血鬼なんですか?」
「まあ、今は混血種が多いから。純血種の吸血鬼はそうらしいよ。まっ、私は混血種だから知らないけど」
「あなたもしかして、転生者か何かですか?」
「っ!」
「当たりですか」
僕は隻眼の吸血鬼の懐に潜り込み剣を振るう。
それを隻眼の吸血鬼は黒刀で止める。
「前世の…名前は?」
「教えない」
「そうですか、では、容赦なく」
「それは、どういう意味……。っと、私はこれで吸血鬼として能力が目覚めると良いね。じゃっ、また今度。会うかは知らないけど」
そう言うと、隻眼の吸血鬼は天井裏に入りどこかへ消えた。
「シー君、ちょっと待って。今、回復術かける」
「ありがとう」
「良い。怪我を治すのは当たり前」
「ありがとうね。じゃあ、行きますか。母さん達のとこに」
「うん、着いてく」
「いや、ミクは歩かなくて大丈夫」
「どういう意味?」
「こういうこと」
僕はミクのことをお姫様だっこしながら言う。
ミクは火照っているが関係ない。
ということで、母のもとへ全力ダッシュ。
はい、到着。
移動時間約三十秒。最高記録だ。
まあ、秒速三百メートルの僕にかかれば余裕ですね。
まあ、着いた瞬間、周りの構造物が悉く破壊されること以外はデメリット無し。
何て便利な体何だろう。まあ、常に魔法障壁を張っとかないと風圧で死にかねないけど。
「シー、隻眼の吸血鬼は?」
「どっか行った」
「えー、そこは捕まえてくださいよ~」
「無理ですね」
「まあ、そろそろ。ここにいる理由がなくなったことですし、出ますか」
「そうだな」
僕らは地上に出た。
そこは入ったときとは打って変わり街には賑やかさが戻っていた。
「良かったわ。戻ってるみたいだし」
「母さん、僕は半吸血鬼ですか?」
母は驚いている。そして、母は《思念伝達》で僕に話しかける。
「隠すのは無理ね。そう、私は純血の吸血鬼。そして、貴方は隻眼の吸血鬼」
「どういうこと?」
「純血の吸血鬼と人が雑ざれば混血になる。ただ、その中でも真祖の血を受け継ぐ量が多い程純血に近づく。そして、吸血鬼九、人一の割合で血が雑ざると隻眼の吸血鬼が産まれる。隻眼の吸血鬼は吸血鬼と人を使い分けれる」
「つまり、僕はそれだと」
「ええ」
「シー君、どうかした?」
「ん、なんでもない」
「まあ、取りあえず王宮へ行きましょう」
そうして、静かな街の探索は終わった。
翌日
「シーウォン=ウォルフェンに大十字勲章を叙勲する。」
目の前にいるふくよかな老人が僕に向かって言う。
僕は跪づき続ける。
こうなった原因は結社の三等と呼ばれる奴を殺したのと神獣の討伐実績により大十字勲章、つまりは勲章の中で一番上の位の勲章だ。
「また、シーウォン=ウォルフェンは転生者である。よって、この国の政治以外の権力をシーウォン=ウォルフェンに授ける。」
おーい、何やってくれてんの王様~
軍事やら財政とか分からんよ。
取りあえず、雰囲気で流してその場はどうにかセーフ。
「で、ビステントリ国王陛下。どういうおつもりで?」
僕は、王の間に来ていた。
「いや、別に何も君にやって貰うなぞ考えてないので、どうか矛を納めてはくれないか」
「はぁ、で、表面上だけですか?僕は」
「そう言うことだ。まあ、よろしく頼む。あと、そろそろ勇者召喚の儀が終わる。用意を頼む」
「分かりました」
ちなみに、勲章を貰うと言うことなので十五歳位まで成長させておいた。
顔も取りあえず前世風にした。
周りからはやや拒絶があったがまあ、どうにか穏便にすんだ。
勇者召喚当日
「もうすぐです。シーウォン様」
いつの間に三日も立っていたのだろうか。
にしても、シーウォンって呼び慣れないな。
そんなことを考えながら勇者召喚の間に行く。
そこには複数名の魔法使いが何かをブツブツ唱えている。
僕がそんなことを考えていたその時魔法陣が光始める。
瞬間、閃光が起こる。
閃光が覚めた頃には勇者、いや元僕のクラス二年B組がその場に到着していた。
クラスメート及び先生は混乱の極み。
なので、取りあえず部下に説明させた。
「で、そこの人は?」
先生、もとい富士栗葵唯は僕を指差しながら言う。
取りあえず、クラスメート達にかけていた言語変換の魔法を切る。
そして、僕は日本語で「僕はシーウォン=ウォルフェン、爵位は公爵です。そして、菜津智」と言う。
その中の一人が僕に抱き付いてきた。各務原リンだ。
僕の幼馴染みだ。
周りの王族関係者は剣を抜いていたが僕が剣を納めるように指示をしたので全員不服そうに剣を納める。
「リン、久しぶり」
「さとる~、良かった~」
リンは僕に抱き付いたまま大泣きしている。
「で、菜津君。これはどういうことですか?」
葵唯が僕に聞く。
「先ほど説明した通りです。あなた方には大迷宮を我々と共に攻略していただきます」
僕はもう一度丁寧に言う。
「私が聞きたいのはなぜ死んでしまったはずの菜津君がここにいるかです」
葵唯が言う。
「転生ですよ。僕はあの時、刺されて死んでこの世界で新たに生を貰いました。ただ、それだけのことです」
「分かりました。では、私達はどうしたら良いのでしょう」
「今から、あなた方には魔法適性検査、ステータス鑑定をしていただきます」
「では、行きましょう」
部下が言う。しかし、葵唯達には通じてない。
「菜津君、この人何て言ってるんですか?」
まあ言語変換を切ったせいでめんどくさいことになっている。
ということで、もう一度オン。
「先生、これで分かりますか?」
「ええ、では、行きましょう」
葵唯が言う。
僕は彼女らを闘技場に連れてきた。
「では、皆さんには魔法適性検査、ステータス鑑定を受けて貰います。一列に整列願います。乱暴はしたくないので」
「ああ?何で菜津が俺に指示すんだよ」
数人組が前に出て僕に言う。
まあ、こいつらは謎に僕のことを目の敵にしてる節があるから別に驚きもしない。確か、桐ヶ谷剛二。
僕は呪詛を使いもう一度「一列に整列を」と言った。
するとたちまち全員真っ直ぐの列になった。
「くそっ、菜津のクセしやがって」
桐ヶ谷達はぶつくさ言っていたが無視して全員の魔法適性検査、ステータス鑑定をし始める。
大体の奴が魔法適正はなかった。
しかし、リン・霙・司はそれぞれ火・氷・光属性に適正があった。
一部の連中は適正がないことが不満みたいでキレている。
まあ、最悪その気になれば連中など大した敵にはならない。
そして、ステータス鑑定。
これは平均五千位だった。
僕のが平均一億程度なのに比べてしまうと見劣りするがそれでも平均的なものでは飛び抜けている。
そこで、葵唯が「菜津君はどうなんですか?」と聞いてきた。
僕は取りあえずその場に余ったステータスプレートに自分のステータスを写し終わると葵唯に見せた。
「えーと、魔力:九億五千二百五十四万四百九十に基礎レベル千五百四十三!?、で、総合戦闘能力表示不可?」
葵唯が読み上げている途中で次々と他の生徒が集まってくる。
全員、ポカーンと口を開けている。
ちなみに、全文はこうだ。
種族名 半吸血鬼(隻眼の吸血鬼)
個体名 シーウォン=ウォルフェン、菜津智
基礎レベル 1543
魔力 95254490
総合戦闘能力 表示不可
パラメーター
STR +9999
DEX +9999
VIT +9999
AGI +9999
INT +9999
MND +9999
パラメーターとか、この世界の神がゲーム好きなのかと思う程だ。
まあ、これは転生者と転移者だけのシステムなのだが。
これは、普通は自分で振り分けるもんなんだけど神獣狩りやらで多分カンストしたんだろう。
まさかの異世界での再開。
さて、二人はどういう関係になるのやら。楽しみですね~。




