10 神殺刀
僕らは森に行く。
予想通りの魔獣の多さ。
でも、母と僕の《聖域》のおかげか少ししかよってこない。
まっ、気休め程度にしかならないけど。
「で、本ではこの洞穴の最深部にあるらしいが……これは流石に多すぎだよな」
父が目の前の魔獣の軍勢を見て言う。
「それでも、やるしかないでしょ」
「そうだね、母さん。少し、離れててくれる?」
「なにする気?」
「良いから見てて」
確か、本によれば転生者の少年のみが扱える剣。
神殺刀をイメージする。
僕の腰の辺りに小さな青い光が集まってくる。
しかし、その光は徐々に光を失くしていく。
「何処?」
母が上げた一声で僕の意識は現実に戻る。
先ほどまでの森とは打って変わり僕らのいたところは惑うこと無き“東京都”だった。そして、僕には光の道が見える。僕と三石もといフォーデン以外は見えていないらしい。
どうやら、僕と三石は剣に呼ばれているらしい。
「三石、行くぞ」
僕は日本語で三石に話し掛ける。
「うん、分かってる」
といい、僕らは走り出した。
ここは仮想空間らしく東京の千代田区以外には行けない。
「この神社にあるのかな?」
「取りあえず上がろう」
僕らは階段を登り本殿まで行く。
「ここが?」
「予想だけどこの奥にあると思うけど。流石に土足でづかづか踏み込むのも悪いしな」
「そうだね。靴を脱いで行こうか」
そして、遂に神殺刀に辿り着いたのだ。
「三石、抜いて良いか?」
「僕は二つ剣を持ってるから君にあげるよ」
「そうか、感謝する」
「君が後で使いそうだからね」
僕は床に刺さっている神殺刀の柄を持つ。
そして、思い切り刀を抜く。
その瞬間、周囲は閃光に包まれた。
「よくぞ来た。転生者よ。我は三人目の転生者、風見吹雪だ。まあ、仮名だが」
「ここは?」
「ここは我の支配領域。転生者にはここで試練を受けてもらう。魔法等の使用は禁止だ。剣の試験だからな」
「で、試練ってのは?」
「ここにいる魔獣達を倒すことだ」
そこにいたのは見たこともない魔獣達だった。予測だが九百年前の魔獣だろう。その時代は魔獣の生存競争がひどかった聞く。この魔獣達は僕が相手にした何よりも強いことを覚悟しなくてはならない。
「では、始めようぞ。魔獣達よ、彼の者を攻撃せよ」
何処からともなく聞こえてくる声がそう言った瞬間魔獣達が飛び掛かってきた。
僕はとっさに避けた。先ほどまで僕がいたところは大きな穴が開いている。その穴はみるみる塞がっていく。
これで良く分かった。奴らは僕よりも三倍は強い。
僕は周りに剣で模様を描いていく。
模様は全部で四十四個。僕はそれを五分で描ききる。しかし、魔獣達の攻撃により少しずつ模様が消えていく。それをもう一度描く。完全なチキンレースだ。
数分後……
ようやく準備が整った。
始めようか。死者の宴を。
《死剣 死者の宴》
この前習得したばかりの技。もとい、剣技。
これは魔法には含まれないはず…。
まあ、魔法に近いところがあるからなんとも言えない。
僕の描いた模様が光始める。そして、その上空にヴァルハラに繋がるゲートが出現する。
そこから霊が大量に出てくる。そして、その霊は魔獣達に襲い掛かる。魔獣達は霊に対して攻撃するが霊には実体がないので当たらない。
そこに僕は桜吹雪を放つ。もちろん改良済みだ。内容は大したことはない。回数を千回ほど増やしたのと空間斬撃ではなく破滅にした。
魔獣達は大怪我しているのにも関わらずグルルと唸り飛び掛かってくる。
もちろん躱しつつ魔獣の首を切る。
魔法が有効ならここに獄炎を撃ち込んでやったものを。
そんなことを考えている間も魔獣達は襲い掛かってくる。
僕はそれを悉く斬り伏せていく。
この魔獣達は外皮が硬いが腹側は防御が弱い。魔獣達は四足歩行なので下を守っていないのだろう。しかし、それを使わせてもらう。この際、なりふり構ってられない。
次、飛び掛かってくるタイミングで腹を裂く。
魔獣はタイミングを計っているのか動かない。
魔獣達が動き始める。明らかに先ほどまでの動きとは違う。
僕に向かって走ってくる魔獣達は徐々にスピードを増す。
間合いが急速に縮まる。
魔獣達は全方位から仕留めに来る。
僕はそれを躱しつつ数匹の腹を裂く。
残りの数は五匹。一度に仕留められるのは四匹程度が限界。
さっきは良い感じに纏まってたから数匹単位で裂けただけ。
魔獣達はまた、構え始める。
僕も臨戦態勢に入る。
その瞬間、また先ほどの声が聞こえてきた。
「そこまでだ」
「僕なんかした?」
「いや、想定外な強さだったからな。なに、試練は続行だ。まあ、相手は変わるが」
「相手が変わる?」
「ああ、この神殺刀メーベィの元の所有者たる我が貴殿の相手をしてやる」
「殺されたりしない?」
「そうだな、殺しはしない。どうやら、貴殿はトラブルに巻き込まれているようだしな」
「なぜそれを?」
「色々あるのだよこちらも」
そう言うと僕の前に人形が出来ていく。
その人形は僕の知っている日本人だった。
「驚いているだろう。予想だが君の親友の姿に似ているのではないか?」
「ああ、まさかと思うがお前は……」
「おっと、時間も差し迫っているのだ。後で話そう。君が勝ったら、だが」
そう言うと人形は鉄剣を持ち僕に飛び掛かってきた。
人形は鉄剣を破滅剣にして使う。
鍔迫り合いしていると僕の神殺刀は光り出す。
「ふむ、この者には素質がありそうだな。話すとするか」
光り出したその時声が聞こえる。
「どういうことだ?」
「いや、失敬。君はどうやら私より強かったみたい」
声は急におどけた口調になる。
「まあ、強いと言うよりは才能がある、っての方があってると思うけど」
「才能?」
「ああ、君は私の剣達に認められている」
「どういうことだよ?」
「今、君の周りには沢山の剣の精霊がいる。祝福される人は一人だけで良いからね。私は手を引くよ。あと、私の名前は――――」
その瞬間、元の森に戻っていた。母達もいる。
そして、僕の腰には神殺刀メーベィがぶら下がっている。
そして、僕の後ろには大量の剣が整列している。
「シー、その剣達は?」
「あれは……失われた剣達?」
リヴィスがぼやく。
「嘘っ、そんなもの。いえ、今は落ち着くのが優先事項ね」
そして、リヴィスが後ろの剣に触れようとすると剣が意識を持っているかのように避けて僕の手に収まるサイズに縮まる。
他の剣もその剣に倣うように僕の手に収まっていく。
それにしてもまさかあの声があの人だったとは。
まあ、僕も面識はないけど。
「さて、そろそろ神界へ行きましょうか」
「いや、それよりもこいつらをどうにかしよう」
「シー様、大丈夫ですか?」
ミレンドスが僕の袖を引っ張りながら言う。
「何が?」
「シー様の顔が心配そうでしたので」
「そう?まあ、大丈夫」
「なら、良かったです」
「逃げるわよ」
「逃げるぞ」
父と母が口を揃えて言う。
まあ、めんどくさいからと言うのが本音だろう。
「逃げ切れた?」
「ああ、特効してくるのは考えてなかった」
「まさか、自滅覚悟の突進とは。あり得ないわ」
「まっ、魔獣にあそこまでの知能があったとは」
「それも全部五百年は前の魔獣達よ。化け物も良いとこよ」
「さて、神々はどうやら僕らを招待しているようですね」
また、投稿が微妙に遅れた気がしなくもないですが今回も読んでくださりありがとうございます。
久々にエヴァ見たんですけどやっぱグロいですね。
今回のあのシーンはエヴァを見て思い付いてたりもします。




