1 転生
僕は菜津智。普通の高校生だった。
そう、あの時までは。
時さかのぼること一年前
僕はいつも通り朝食を食べ幼馴染の各務原リンと通学路を歩き学校へ向かう。
しかし、その途中リンが通り魔に刺されそうになった。
咄嗟に僕はリンの前に出て通り魔を止めた。と同時に僕は腹のあたりに激痛が走り徐々に熱くなっていく感覚をおぼえた。
僕はそのまま意識を失った。
僕が次に目を覚ましたのは異世界のとある貴族の家だった。
その異世界は日本でいう『中世』の街並みだった。が、文明レベル的に言うと『魔法』のおかげで近代社会程度には発達しているのではないだろうか。
で、一番問題なのがこの体。
「ん~、シー君、ご飯でちゅよ~」
ゴフッ
口にスプーンを突っ込まれる。
息ができなくなる。
そして、スプーンを抜かれる。
かろうじて息が出来る状態。
取りあえず、口の中のものを咀嚼する。
味は……良いものではない。どちらかというと入院食とかそう言う味だ。
口の中の物がなくなるとまたスプーンを突っ込まれる。
そして、抜かれる。皿の中身がなくなるまでこれの繰り返し。
勘弁して欲しい。味の無い、激マズ飯を口の中に突っ込まれるだけでも苦痛なのにその上、時々気管に入る。最悪の食事だ。人生でこれまで嫌な食事も無かった。
時を戻して、現在。
「シー君は魔力を持ってるのかしらね」
目の前の銀髪の女性は横の高貴な衣裳に身を包んだ男性を見ながら言う。
それに対して男性も「俺らの子供だ。持ってるに決まってる」とドヤ顔で言う。
どうやら、この世界。いや、この国では魔法を使えるか使えないかが第一。貴族の息子だろうと娘だろうと魔法を使えなければ平民に格下げされる。
理不尽な世の中だ。
あと、一ついうのであれば『スキル』なんてものもあり代償なしで魔法と似たような効果を発現するものだという。
また、魔法ではない『魔術』や『付与術』、『回復術』に『召喚術』、etc.だ。
まあ、適正がないとまともに術式構築すら出来ないのだが。
そして、この二人は僕の親。両方、優秀な魔法師らしい。
尤も、心配なのは自分なのだが。これでもし魔力を持っていなかった場合面倒臭そうな事態が発生しかねない。ということで、先程から神様、女神様、仏様。と祈り続けている。
そして、待ちに待った魔力測定。この国では魔力測定を二歳までに受けさせる決まりがある。
ということで、一歳八ヶ月の僕は必然的に受けなくてはならなくなった。
「では、この子をこの鏡の前に」無表情で黙々と作業をこなすその老人は今にも倒れそうな顔つきだ。
そして、鏡に数字が表示される。
952540490
と。
数字ではなく感じで表すと〔九億五千二百五十四万四百九十〕だ。
ちなみに、この世界の人族平均が千あるかないか位なのでこの数値がどれだけ異常か。
僕はチラッと大人の方を向く。全員、フリーズ。一名気絶。
うん、この数値が異常なのは理解している。理解しているが故の反応。
というか、成長させようと思えば出来るのでは?
まずは、身体の中の魔力の元。つまり、マジックポイントのある箱にアクセスする。そして、そこから魔力のカップに行く。そして、それを全身の骨及び筋肉等に流して巨大化などの行程を思考する。
はーい、肉体改造成功。見事、十歳くらいまで大きくなりましたとさ。ちなみにこの様子を見ていた大人は白目を向いて倒れている。中には泡を吹いてるのもいる。
それから数十分後…
「シー君なの?」
「うん、そうだよ」自分の声が変わるのって気持ちが悪い。声変わり並みに気持ち悪い。
ちなみにその気持ち悪がっている声というのがあどけなさの残った高音ボイスだ。
高音→やや低音→低音→高音という流れで声が変化している。
「シー君、どうやって?」
やっぱ、そこ気になりますよねー。というか、これに関しては前世の知識に依存した魔法みたいなもんだから説明も何もないんだよね。
とりあえず、一時凌ぎにもならないと思うが「また今度ね」と言っておいた。
それに対して母は「まだ、大きくなったばかりだもの仕方ないわよ」と優しく声をかけた。
ああ、何年ぶりだろうかここまで甘やかしてくれる人は。
「というか、名前は?」
母は何言ってるのこの子?とボヤいている。
理由は分からないが。
「で、あなたの名前と僕の名前は?」
「ああ、なるほどね」一人で悩んで一人で解決してるんだけど。
「私はヴォーウェン=ウォルフェン。あなたの母親よ」
「私はドクトフィージ=ウォルフェン。お前の父だ」
ちょっと待ったー!何で自分の名前発表に時間になってんの!?
自分の名前知らないから聞いてんのに何で次はあなたの番よ〜みたいな顔で見てるんだよ!
と言えるはずもなく、大人しく「僕の名前は?」
「あなたはシーウォン=ウォルフェン。私たちの子供よ!」
最後の部分だけものすごく強調して言ってるが名前を聞いてから悪くないのかなーとかばっかり考えてたせいで最後の方を聞いてなかったが関係なさそうな話だったのでガン無視だった。
で、その後の生活はというと大体これまでと同じく部屋の中に閉じこもっていた。
あとは、口に半分強制的に突っ込まれてたスプーンはこの日から消えた。
イヤー良かった良かった。忌々しいスプーンがどっか行ってくれて。
何で閉じ籠ってんだよだって?仕方ないだろ!やる事ないし、魔力多すぎて大体の人が部屋に来たらぶっ倒れるし。
というのも、魔力は人がモロ浴びて大丈夫な品ではなくあくまで魔法を行使する為の贄なのだ。それを耐性のない人が浴びなぞした日には。目も当てれない事態間違いなし。そのくらい強力な力なのだ魔力とは。
あと、貴族にはお披露目パーティー?もとい自慢の場が設けられる。
そこで魔力の量と一緒に紹介されるのだ。そこで気に入った者がいればそのまま婚約まで強引に漕ぎ着けるというのも一つの手らしい。要は出来ちゃった婚狙いと言うわけだ。僕はそんなことするつもりはない。とはいえ、パーティーはコネクション作りの一環というのだから仕方なく行った。仕方なく。
ここ大事なところなので二回言いました。
パーティー当日
感想、重い。
気も重いが何よりこの豪勢な服が物理的に体を重くしている。
あのよく見るような貴族の服がここまで重いとは…
で、この日まで母が魔力の納め方を教えてくれたお陰で人が近づいて倒れるなんてことは無くなったのはいいがこの状態何!?
現在進行形で数十人規模の女子から告白を受けているのですがソレハ!?
えっ?羨ましいなアホですと?断るのが心苦しいんだよ察せよアホが!
はい、暴言タイム終了。さて、この大量に集まった女子をどうするか。
というか、自分そんなにモテるような外見では無かったはずだが!?
ちょっと魔力出すか。
その瞬間周りを取り囲んでいた女子は二人を除いて全員倒れた。
「あら、この程度の魔力で倒れるなんて脆弱ね」嫌味ったらしく紫髪のショートカットの子が言う。いかにも、お嬢様って感じだ。
「…この程度…問題ない…」
そして、もう一人の子はあきませんよ奥さん、ワイの求めるTAIPUの子ですやん。
はっ、思わずエセ関西弁が発動してしまった。
まあ、どちらにせよ好みのタイプではあった。
だって、紫紺の瞳に水色髪のツインテールと来ましてそこに上乗せする様に照れてるのがポイントアーップ。
この二人どちらかと結婚しろって言われたら後者だろー!
いや、まあそんなことあるはずが…
あっ、はい。
全てを悟った、父は確定で考えていたことを言いそうだ。
「シー、この二人のどちらかを正妃にしたらどうだ?」
そう来たかー!さすが異世界、一夫多妻制万歳!あ、別に女遊びが激しいわけではないからね。
僕がそんな事を考えていると紫髪の方が
「ちょっとお待ち下さい。一夫多妻は侯爵以上の方にしか…」
その紫髪の子は父の服に付いているバッジのような物をみて言葉を濁す。
だって、それは公爵を表す紋だったからだ。
公爵、爵位制度の王家を除く最高位。つまり、王族以外では最高位の爵位。そして、僕はその爵位継承権を持っている。
つまり、公爵は確定事項。よって一夫多妻でも問題なし。という事だ。
「あ、あの、私を正妃にしてくださいっ!」僕のタイプの子は顔を真っ赤っかにしながら言った。
まあ、その後恥ずかし過ぎて倒れてたけど。
そういや周りの大人は…全員気絶してるー!
てことは、この二人は魔力耐性がかなり高い。
基本的にこの国での平均魔力耐性は85%かそこららしい。
ちなみに僕の魔力は85%を引いても人間の致死量の250MPはいく。
ただ、周りの大人たちが死なないのは調整しているからであって調整していないそのままの波長を当てると半数は死ぬと思われる。
そんなこんなで全員が起きた。
ちなみに僕は結びの契約でそのツインテールの子と婚約した。
ふー、疲れた。あと、そのツインテールの子はミクナレド=ベリウェールという名前でこの国最高の回復術師なんだとか。
で、その子の父親はヴィーレイ=ベリウェールといい国内で二番目の魔法鍛冶師だと言う。とんでもないエリートじゃねーか。
今回から新連載始めます。
こちらは毎日上げていくと思います。