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93, この地が大事なら、すぐこのアドレスまで来い。ただしネゲートのみでね。約束だよ。

 ネゲートが地の大精霊ラムダを説得して止めたという速報がマッピングで入り、ようやくあの惨劇が終わるという安堵感に包まれています。俺はネゲートの担い手のはず。ですが、同行できずにこの住処でフィーさんといつもの日常を送っていただけです。結局、俺は何もしないで終わり? 記憶が戻り動けるようになった俺をもっと頼ってもらいたいです。ああでも、あんたは使い物にならないと一蹴されそうですね。


 それでもフィーさんとの接し方は大きく変わりました。最近はあの頃の話で時間を忘れるくらい盛り上がります。ところで、記憶が戻りましたので自分の名だって思い出しましたよ。それは、ひらがなで三文字です。本当はその名で呼んでもらいたいのですが、フィーさんは頑なにあの名で呼んできます。ああ……。ごねたら困るので諦めました。


 そして「どのような理由であれ大精霊が人を駒のように動かす行為は勘弁してもらいたい」という内容に触れました。フィーさんによるとその行為自体の惨劇よりも負けた時の冷遇の方が遥かに問題とのことでした。そこで、あのような行為は相場と一緒で負けたら全てを奪われますと語ったら怒られます。なぜなら、相場ですら奪われるのは「カネと尊厳だけ」で済みますね。しかし、あの惨劇で負けてしまうと……。すみません……。


 事が起きてしまった場合、そこから取り返しがつかない状況を防ぐにはその大精霊を止めるしかないです。そこで、女神ネゲートという存在です。こいつの普段の生活といったら……俺がフィーさんから託された「犬」がお目当ての遊びで時間をつぶすだけでした。ところが、そのような重大な局面の行動力には目を見張るものがあり、それは女神になった今でも健在でした。


 それで……ネゲートはラムダを止め、ある者を引き連れてこの住処に帰還しました。それでさ、その者に度肝を抜かれましたよ。なんと……それはミィーでした。


 まず、なぜそこにミィー? 雰囲気はがらりと変わり、話し方は角が取れて丸くなり、しなやかな印象を持ちました。ただ、狂気に目覚めたラムダの神官を執り行うという、命を削られるような日々だったはずで……そのような過酷な環境からの影響なのでしょう。


 そのようなミィーは帰還後、ネゲートの提案で兄さんと無事再会を果たします。短い期間とはいえミィーがラムダに奪われた状態となっていました。それをあの神々が放置していた理由は……ミィーがラムダのご機嫌を取っている間は滞ることなく燃料と肥料が供給されると都合良く解釈したらしく、そこは割り切ってミィーには一切触れないようにしていたようで……。確かに、政だとそのような何とかの事情はよくあるのですが、ミィーと兄さんの気持ちを汲み取るといたたまれない感情になりますよ。


 でも、です。要領良く立ち回ってちゃっかりしているミィーも健在で安心しました。フィーさんと再会するとすぐに「フィー様の神官になりたい」とお願いしてきました。そうです……前回はミィーがあらかじめ用意していた「設計図」がフィーさんに受理されずに俺がミィーから八つ当たりされたのをよく覚えています。この「時の大精霊」は、そう簡単には心を開きません。しかし、あのような逆境を乗り越えた直後の絶妙なタイミングを大いに活用してのお願いでした。そのような僅かなチャンスをもぎ取るのも実力のうちですよね。さすがのフィーさんであっても「是認」という形に至り、まずは「時の見習い」からミィーは再出発することになりました。


 あの時……なぜ頑なにミィーの「設計図」を受理しなかったのか。もしや、それを受理することにより女神ネゲートのあらゆる件に巻き込みたくなかった。これかもしれません。


 ともあれ、ラムダが落ち着きましたのでまずは一安心です。もちろん血が流れていますので、ネゲートが落としどころを探るのに苦労になるのかな。それゆえに簡単には解決とはなりません。


 それで……ネゲートの表情が暗い。俺……ネゲートから「犬」を狙われる暇つぶしの遊びでネゲートの感情には詳しくなっています。こいつ、すぐ顔に出ますからね。それとは対照的にフィーさんは無表情でわかりにくいです。ごねてる時だけ僅かにわかる、そんな感じです。


 その代わり、ネゲートは隠すことなく俺にすべてを話します。この先、何が待ち受けているのか。軽い気持ちで話しかけたら……恐ろしい現実を聞かされました。


 あの惨劇はまだ終わっていないと。ラムダすら……操られていた、だと?


 ところで、何に操られていたのさ……。するとすぐにネゲートは苦悶の表情を浮かべながら語りかけてきました。フィーさんが現メインストリームのチェーン管理精霊だった頃に「うまくやられた」と憤っていたチェーンがありました。そのチェーン管理精霊にラムダは操られていた……、だと?


 それからしばらくしてネゲート宛に衝撃的な内容のマッピングが届きます。なんと……その問題となっているチェーン管理精霊に「だまされた」と語る者たちからです。えっと……その内容は、このままだと「聖戦」が止まらず「聖なる一つの地」になるまで惨劇が続いてしまうので、女神の力を貸してほしいという内容で……。


 聖なる一つの地? どうなってしまうんだ。なんだよ、聖戦って……。それが止まらないって……。ラムダが操られていたのだから……。


 すると見張っていたかのように、そのチェーン管理精霊からネゲートに対してマッピングが来ました。その内容は「この地が大事なら、すぐこのアドレスまで来い。ただしネゲートのみでね。約束だよ。」という一方的な通知でした。俺は嫌な予感がしてネゲートを止めましたが……。ネゲートは迷うことなく、そのチェーン管理精霊が指示したアドレスへと急行しました。

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