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92, 僕が最初に生まれたチェーンなんだ。だから僕からみたらメインだってただの代替。それでね、僕の哲学はこの地を一つに併合すること。そして、その併合が「聖なる一つの地」になるのさ。

 地の大精霊ラムダの件を仕掛けた者同士が唐突な女神の出現によりラムダが落ち着きを取り戻してしまった件についての不満をぶつけあっている。


「地の大精霊ラムダの件はすこぶる順調だったはずだ。チェーンに宿る仮想短冊に莫大な価値を吹き込むことによりラムダに大きな野心を抱かせ、あのまま『聖戦』として人を動かし続けていれば……地の大精霊ラムダが勝利し、この地のバランスを崩したという事で『時代を創る大精霊』からシィーが降ろされるだろう。そんな失態をさらしたら、強くて当たり前のその地位に留まることを民が絶対に許さないからな。それで、ようやく我らの時代……のはずだった。あの女神が出現さえしなければ!」

「そうだそうだ。女神の出現が原因。なんてことだ!」

「大精霊が最も恐れるのは同じ民同士の分裂……内戦だ。それは確実に崩壊へと向かう。狙った地域一帯を大精霊ごと確実に破るにはそれしかない。その女神とやらは、内戦の危機であおって止めたのかもしれぬ。あの女神……、この地のお飾りなんかではなく、あなどれない相手のようだ。」

「まったく……どうしてこう、都合が悪いタイミングであのような邪悪な女神がこの地に降臨してしまうのだ。」

「都合が悪い……、だと? それが言い訳なのか? ふざけるな! 私は遊びではなく哲学としてやっているんだ! この地を盛り上げてほしいというから仮想短冊の使命を引き受けたというのに。それをこんな状況に巻き込みやがって。おまえがこの失態に誘ったんだろうが!」

「落ち着け。焦っても、何も解決しない。私はシィーを『時代を創る大精霊』から降ろすのに必死なんだ。この程度で屈するつもりはない。とにかく、シィーにあのような大役は向いていない。強くて当たり前の大精霊が、あの神々にすらなめられていた頃があったようだ。本当に恥ずかしい話だ。そんなシィーにも渦の件以来、明らかに不調だった時期があった。あの時に、しっかりと降ろしておくべきだったが……その時は仮想短冊にそのような力がなかった。なぜ……好機という魔物は、タイミングがずれてしまうのだ!」

「あのな! 私は引き受けた以上、哲学にしか興味がない。そもそも、仮想短冊を育てる気はあったのか? こうなった以上、シィーの件はいったん忘れろ。いいか? そうでなければここで私は手を引く。大損失は確定だが、今ならまだ手を引ける水準だ。そこは、わかっているよな?」

「……。あなたはわかっていない。地の大精霊ラムダの件にまで首を突っ込んでしまったのだ。もはや後戻りは許されない。我らと同じ運命を辿ろうではないか!」

「なんだと? 私はラムダの件など認めていないぞ。いったい、何なんだ、あれは? 仮想短冊の通貨で、あのような惨劇に発展したのか? 逃げずに答えろよ? 仮想短冊は『非中央』の仕組みにより価値が偏らないはずでは?」

「あなたは今、哲学だと語ったはず。ところで、地の大精霊ラムダが管理する地の力……『燃料』は、この地で最大規模を誇るのはご存じであるかと。さらには、未知なる埋蔵まで含めたら、それはもう……。我らの協力で『聖戦』を勝利に導いたのなら、地の大精霊ラムダは我らに素敵なプレゼントをくださった事だろう。さらにはラムダの親友のゼータからも期待できるぞ。」

「ちょっと待て。そこでなぜ、ラムダやゼータからのプレゼントなんて話が出てくる?」

「あなたは本当にわかっていない。出来損ないのシィーのおかげで『大精霊のきずな』が安定しないのはご存じのはず。何度もその利を上げているのにも関わらずだ。だからあなたは民の将来を案じて我ら側についたのだろう。あとは、わかるな? 民の平穏があってこその大精霊だ。私はシィーを降ろした後のことも考えてしっかり行動していたのだ。」

「……。それが本当の狙いか。どうやら私は……はめられたようだな。」

「なにゆえに、はめられたとは? 我らは必ず勝ちます。勝てばすべてが許される。それがこの地の『公理』です。」

「……。ずいぶんと偉そうに……。」

「では、話を進めようではないか。なぜ、ラムダは落ち着きを取り戻したのか。女神の出現や女神が内戦になるとラムダをおどした解釈だけで片付く問題ではない。建設的に意見を述べていこうではないか。」

「そうだな。では、まず最も大きな懸念。それは、女神に……チェーンの秘密がばれたのだろうか。これだな。」

「おい、なんだよそれは? さっきから次へと次へと……。チェーンの……秘密だと?」

「とりあえず落ち着け。これはな、ラムダをその気にさせるため、仮想短冊の価値を『奪い放題洗い放題』にする秘密のことだ。その仕組みにより『この地の主要な大精霊』が奪っていった価値をチェーンから奪い返せると……ラムダをあおったら喰らい付いてきたはず。」

「それのことか。相手は女神だ。ばれている可能性が高く、それでラムダの心を折りにいったのかもしれぬな。」

「おい……勘弁してくれよ! 『奪い放題洗い放題』って何だよ……。冗談じゃない。はめられたを超えているぞ?」

「とにかく落ち着け。勝てばよい。勝てばすべてが手に入る。そうだろう?」

「たしかにそうだな。では……、私を納得させてくれるか。その勝てる道理とやらでな! そうだ。私が盛り上げた直後に、大量の仮想短冊がこの地から消失したと小耳に挟んだ件があった。それが……『奪い放題洗い放題』だったのか?」


 チェーンの秘密を初めて知りショックを受けたのだろうか。その場で落ち着きなく指を組み、この件を誘ってきた憎き相手を強く睨みつけていた。


「おい。」

「なんだ? 答える気になったのか?」

「邪悪な女神が……。これから重大な発表をするようだ。マッピングをみよ。」

「なに? マッピングだと?」

「つなげ。女神が何を語るのか、みてやろう。」

「……。なんだ……この邪悪な女神は……。」


 女神のマッピングで語られた内容。まず、この地のみなが不安だった……地の大精霊ラムダが落ち着きを取り戻したこと。次に、チェーンへの罠……「奪い放題洗い放題」を防ぐために、チェーンへの接続過程に「女神の許可型」を導入することだった。


「ふざけるな。そんな邪な事をされたら仮想短冊は終わる。」

「落ち着いてください。まだ勝機はある。」

「おい。どこが邪悪なんだ? ラムダは落ち着きを取り戻したうえに、『奪い放題洗い放題』を防げる仕組みを新たに導入すると宣言されたようだが? それとも私の耳がおかしいのか?」

「それは……とても邪悪なチェーンになるぞ。」

「なぜ? 私の感覚もおかしいのか?」

「そうだ。哲学の観点から考えてみろ。チェーンに宿る仮想短冊の価値……通貨が、なぜ莫大な価値を取り込めたのか。答えは簡単だ。需要があるからだよ……『奪い放題洗い放題』の仕様に対してだ。もともと、そのような性質のチェーンに『女神の許可型』なんて論外すぎる仕様だ。」

「……。」

「なぜそこで黙り込む?」

「……。もうやってられん! 私はその『女神の許可型』にすぐ乗り換えるぞ。さっさとサードパーティをすべて追い出してやる。そいつらが好き勝手にやっていたのだろうな?」

「気を確かに持て。そんなチェーンの仮想短冊では、価値が取り込めないぞ。まったく需要がないからだ。需給は流動性確保の上で最も大切な要素だぞ。」


 それから、女神に対する愚痴と女神に対する擁護の意見がぶつかり合いながら時が過ぎていった。ところが、なぜか擁護側が追い込まれ不満を募らせていた頃合いだった。


「おや。我らをサポートする地のチェーン管理精霊様からもマッピングの通知が来ました。」

「つなげ。我らは窮地に立たされている。さすがはチェーン管理精霊だ。この窮地を察してご連絡くださるとは!」


(……。あっ、つながったね。)

(地のチェーン管理精霊様。女神の件は急なものでして、ラムダの件が暗礁に乗り上げてしまいました。)

(ああ、そんなの気にしなくていいよ。女神はちょうどよい相手だ。もちろん、今回こそ僕らの勝ちだ。念入りに計算して各計画を実行に移しているからね。)

(今回こそ……、ですか?)

(そこは気にしないで。)

(そ、そうですか! お気遣いに感謝申し上げます。地のチェーン管理精霊様。)

(それでさ、僕たちが最も驚いたのは何だと思う?)

(申し訳ございません。学びが少ない我らでは想像することすらできませぬ。)

(そうか。なら説明するね。それはね、この地のメインストリームのチェーン管理精霊が不在となったことなんだよ。)

(不在……ですか? えっ? メインストリームのチェーン管理精霊がいなくなってしまわれたのですか!)

(そうだよ。どうやらシィーという大精霊が半ば強制に解除したのさ。)

(なんだと。シィー……だと!)


 地のチェーン管理精霊のマッピングから飛び出た「シィー」という言葉に彼らが激しく動揺する。


(うん、そうこないとね。関与したのは間違いなく「時代を創る大精霊」のシィーだった。この大精霊……、破壊に近い衝撃的な行動が多くて問題が多そうだね?)

(その通りでございます! シィーがまたそのような衝動的な破壊行動を取るとは! なんという恥。ひどすぎて言葉にすらならない。今すぐにでも「時代を創る大精霊」からシィーを降ろしたい。地のチェーン管理精霊様……。そこを何とか、我らへのご協力をお願いしたい。)

(とにかく落ち着こう。これは逆に好都合なんだ。)

(好都合……。そ、そうですよね! 我らもシィーの不甲斐なさからようやく解放されるときが来ます。あのような大精霊は「時代を創る大精霊」どころか、民すら持ってはならない。この地に迷惑ばかりをかけ、本当にお恥ずかしい限りです。)

(あのね。僕は……シィーのその行動については高く評価しているよ。)

(えっ? 高く評価……、ですか?)

(そうだよ。そのおかげで僕がメインストリームの座に簡単に戻れるのだから。)

(戻れる……。えっ? メインに? それは……。)


 マッピングの内容がいまいち理解できない。なぜなら地のチェーンはメインストリームの「代替チェーン」として生まれたはず。よってそのメインに「戻れる」というのは、どういう意味なのだ。そう……彼らは悩み始めていた。


(そうだよね。みんな知らないよね。まさか、僕が「この地で最初に生まれたチェーン」だったなんて。つまり、僕からみたらあのメインストリームすらただの「代替チェーン」だよ。そもそも、毎時数回の遅いコンセンサスでは使い物にはならないよ。そこで現実に気が付かないと。でもね、ヒントはあったよ。それはアドレスの形。メインストリームのアドレスの形と比べて、どちらがより原始的に近いのかを考えれば……おのずとどちらが先に生まれたのかを知ることはできたはずだよ。)

(……。えっ、それは、その……。)

(驚いた? そうだよね。でもね、僕の手下……「天の使い」がうっかり言いそうになったりして冷や冷やしたんだ。今でもマッピング上に残っているかな。僕らを崇めたい気持ちは凄くわかるけどさ……メインストリームに対して「この遅さでは価値の転移として使い物にはならない」とか「この地の時間を刻む用途以外に使い道はない」とか言い始めちゃってさ、本当に困ったよ。まだこれからって時に、ばらさないでよね! そんな感じだったよ。)

(そんな……。でも、そうだ……。我らはメインストリームを味方に付けていたのか! そこは素晴らしい。)

(味方? 何のことだい?)

(あ、あの……。地のチェーン管理精霊様?)

(よく考えてみて。どんな争い事でも「本当の敵はその姿を表に出さない」と言うよね? それでね、僕には絶対に達成しなくてはならない目標がある。それはね、この地を一つに併合し「聖なる一つの地」を築くことなんだ。ただね、その達成には争い事……「聖戦」が絶対に避けられない。だからあえて「代替チェーン」の仮面をかぶり目立たないように行動し、価値が集まりやすいように仕組んだのさ。それだけだよ。だから、メインストリームのコンセンサスは遅いんだ。僕のコンセンサスはこんなにも速いのに、どうして? みんな疑問だったはずだよね。メインストリームに全ての価値を持っていかれたら困るからだよ。すなわち、あの遅さはそういった計略からだったのさ。これで、メインストリームのコンセンサスがなぜか遅いという謎も解けたかな。それなら僕も嬉しいよ!)

(……。嘘だ……。それだと、あの「聖戦」は……。ラムダが誘き出されたのではなく……。)

(やっと気が付いたの? これだからヒトは面白い。女神によるとラムダは「聖戦」を止めるように配下の精霊や神官に指示したようだね。でもね……もう「聖戦」は止まらないから。なぜって? それは……、僕が動かしているからだよ。)

(……。そんなはずでは……。)

(ちょっと待ってくれ! 一つに併合ってよ……。)

(えっ? それ、そのままの意味だよ。「聖戦」で次々と各地域を落としていくよ。だから、シィーを「時代を創る大精霊」から降ろすとか、もうね、そんな小さな話なんて既にぶっ飛んでいるよ。わかるかな? この地を一つに併合し「聖なる一つの地」を築く。もう誰にも、僕は止められない。)

(……。なんだよこれは……。この地の危機ではないか!)

(大丈夫だよ。「聖なる一つの地」を築いた後、そのヒストリーに君たちの名を英雄として刻もうではないか。そうだね……あれだ。『聖なる併合』という名を授けようではないか。)

(……。)

(ふざけるな? おまえなど所詮はチェーンだろ? つまりコンセンサスを乗っ取れば止められるはず。今すぐハッシュを手配しろ! こいつのコンセンサスに合致するこの地すべてのハッシュをぶつけてやれ! それしかない。)

(そうだ。それしかない。まさか……、シィーに頼る日がきてしまうとは!)

(ちょっと……ねえ? 僕が乗っ取り対策をせずにこんな計画を立てるわけがない。僕のコンセンサスはすでに「ステーク……変更因子」のみだよ。つまり、ハッシュをぶつけてもコンセンサスはもう取れないよ。あはは。)

(何だと……。)

(ただし弱点もある。かわいそうだから教えてあげる。解けたトランザクションを最初に乗せる場所として名を馳せる「チェーンのベース」に「ステーク……変更因子」を移植する手法ではなく、万一の場合でも元に戻せる手法……「歪みのハッシュ」を利用したんだ。「歪みのハッシュ」はコンセンサス受理の「難易度」を歪ませることができる素晴らしい仕組みで、この地のヒストリーで一度だけ訪れたラムダの時代……、そこでヒトを「非代替性」で隷属化する過程でも大いに役に立った。とても有意義で美しい実験だった。)

(人の隷属化を美しい実験だと……。)

(ラムダの時代……。ヒストリーによると、我らはみな精霊の隷属となって、その光景はまるで牧場の……。)

(なんだ、知っていたのか。ところで、なぜラムダの時代は終わりを迎えたのか知ってる? 実はあの時代の終末にも女神が現れたんだ。それでね、そこは要領よく立ち回ってその矛先をラムダに向かわせたんだ。)

(……。なんだと! ラムダに向かわせた、だと?)

(そうだよ。だってさ、僕はこの地を一つに併合することが目的なんだよ。それなのに、あのラムダったら……、ヒトを隷属化してカーネルを量産させたら満足したのだろうか。それ以上はなにもしなくて本当に参ったよ。だから僕の手下……「天の使い」に計略を練らせ、暴れさせたんだ。この地に危機が迫ると女神が現れるという伝承通りに女神が現れ、それで、その女神を大いに利用してラムダの時代を終わらせたんだ。なかなかでしょう。)

(……。)

(その女神ね、地の力が崩壊し絶望の淵にいたラムダに最後、何て伝えたと思う? 「精霊と人が笑顔で暮らせる時代にしたい」だってさ。僕さ、長い間チェーン管理精霊をやっていてさ、これほど笑いこけた日はないよ。あり得ないでしょう、そんな概念。精霊とヒトが笑顔で暮らすなんて。あはは。僕たちが基本信用するのは「天の使い」とその従者である「魔の者たち」だけ。彼らはよくやってくれた。危ない場面でもしっかり売り抜けや略奪はするし、仮想短冊の価値を扱うだけの素質を十分に備えているよ。)

(……。)

(歪みのハッシュ……。チェーン管理精霊はそこまでするのか。)

(それくらいはするさ。女神すらはめこむのだから。それでさ、ラムダの時代は地の力が崩壊し地域一帯の一部を失う形で終焉したんだ。それで僕は「ステーク……変更因子」のままだと次の機会を伺えないからね、歪みのハッシュで難易度を少しずつ簡単な方へ戻して、元のコンセンサスに戻したんだよ。この元に戻せる性質こそが歪みのハッシュの利点でもあったからね。僕は万一の事態にも備えていた訳さ。それで「非中央」の仮面を再度かぶることに成功し、次の機会……「この瞬間」を待ち続けていたのさ。どう?)

(さっきからいらぬ聞かないことまで……。)

(そうだね。ちょっとマッピングし過ぎたかな。でも、僕の勝利は揺らがない。だから、今の論理は「大過去」への手土産として大事に持っていってね。)

(何だと……。)

(あっ、でも希望はあるよ。この地すべてのハッシュなら、運よくほんの僅かならコンセンサスが取れるかもしれない。なぜなら、ハッシュの歪みで普通には解けないほどにコンセンサスを取得する条件が難解になっているだけだから。その難解さを上回るハッシュを提供できれば今でもコンセンサスが取れる。良かったね。まだチャンスはあるよ!)

(……。そんなの……、ただの絶望ではないか!)

(恐ろしい。なんてことだ……。)

(それが僕の唯一の弱点。本当はね、今回こそは歪みのハッシュを使うのではなく「チェーンのベース」に「ステーク……変更因子」を移植する手法で……完全体になれた。だから、その点だけは心残りだ。だが、どうしてもその移植への「時間」が足らなかった。チェーン管理精霊は「精霊」だからね、大精霊の特権である「大過去を操る力」が圧倒的に足りない。つまり「時間」はごまかせない。)

(……。)

(でもね、「聖戦」の苦しみを「この地の主要な大精霊」が理解したのなら、僕は「聖なる一つの地」を諦めるかもしれない。)

(……。なんだと? それは真か?)

(もちろん。その苦しみはね、この瞬間にも直面している燃料の高騰が起因の値上がりだよ。かなり苦しいようだね? それね、僕らがずっと味わってきた苦しみと同相なんだよ。だから、僕を止めない限り、この先もずっと、連続したこの苦しみが続くことになるよ?)

(連続した苦しみだと……。地の大精霊が供給する燃料は安さが利点だったはず。なぜだ……。)

(……。どうやら君たちとは仲良くなれそうにないな。それでは、僕は忙しいからマッピングを切るよ。次お会いするときは……「聖なる一つの地」で。)

(おい、待ってくれ!)


 そこで無情にもマッピングは切られた。焦りで気が動転する中、仮想短冊にはめられたと騒いでいた者がすぐに落ち着きを取り戻し、妙案を話し始めた。


「この件は、この地の重大な危機だ。よって、女神に頼るしかない。良いな?」

「なんてことだ……。どうしたら……。私はシィーさえ降ろせれば良かったのだ!」

「いいか、落ち着け。私はまず、女神と一緒にヒストリーを探る。それから、シィーとラムダに『ステーク……変更因子』について、市場であまり活発化させないようにお願いをする。『変更因子』が輝く度に彼らが価値を手にする仕組みを少しでも避けたい。」

「……。そうだな。」

「それなら、今から女神にマッピングする。その内容は……。」


 大急ぎで女神に伝えるマッピングの内容を整え、それを伝える。そのようなマッピングに対する返答は長く感じるのだろう。そして……。

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