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89, ラムダ様。私は聖戦よりもフィー様の考えを尊重します。立場が弱い大精霊の民の飢えや渇きを解決できるのならと、価値が奪い放題の現状を嘆きながらも黙認していたフィー様の弱みに付け込んだのですか?

「それは……。そんなことは……。」

「言い訳を並べはじめるのはまだ早計よ、ラムダ。」

「なんですって……。」


 女神ネゲート様の厳しい追及が続きます。私は……ただ眺めていることしかできません。


「あなたはこの地への平和の享受と経済の是正を標榜として『非中央』を掲げながら、その実現を目標としてチェーンに宿る仮想短冊や非代替性に……価値を誘ったのよね? そうよね?」

「そうよ。そうやって各地の大精霊が『知恵』を出し合って構築してきたこのチェーンの仕組みを……そんな簡単に『ジェネシス』からやり直せってね、それがいかに狂った概念なのかを、お分かりいただけるかしら?」

「すばらしい『知恵』ね?」

「そうよ。いい加減、理解したらどうなの? まったく……。シィーに『パンプ』を潰されたから『ステーク……変更因子』による復活を目指しているのよ。」

「そうね。その輝きに合わせて『強い大精霊』をアピールしていたわね。みたわよ。それに合わせて仮想短冊の揺らぎが多少は回復したようね?」

「そうよ。だったらご理解いただけたかしら? チェーンはこの私の『全て』なのよ。」

「あら? それにしては仮想短冊の価値の『ノルム』がぶっ壊れているわね。なぜ『ノルム』に『虚構を示す記号』が付いているのかしら? あなた大精霊よね? そんな誤りが許されるなんて見習いまでよ。さっさと早く直しなさい。女神として命じるわ。」

「なによ……。」

「さあ、まだまだ続くわよ。そうね……仮想短冊の価値を奪うことに心を奪われてしまった大精霊がこの地の三割にも上るなんて、正直落胆したの。だからその証拠に……そのような大精霊の民はみな生活に困窮しているのよ。当然よね。大精霊がそんな状況では、その地域一帯の産業は衰退するのみだから。」

「この女神……狂っているのかしら? 生活に困窮って……。あれだけの価値があれば、そんなはずでは……。」

「あら? 仮想短冊の目的の一つに、経済の是正があったわね? それどころか、逆の状況になっているわよ。特にひどい地域一帯になるとね……産業は衰退し、治水が崩壊して作物も育たない。治安も崩壊し、飢えに苦しんで、なけなしのカネをはたいて川を渡るしかないのよ。そしてその先には笑顔の『天の使い』が待ち構えていてね、その場で……、あとはどうなるか。」

「なによ……。だったらなに? もともとそういう地域一帯だった。それだけよ。」

「……。いい加減、目を覚ましなさい! その経済が崩壊した地域一帯はもともと……、観光産業が発達していてみな豊かに生活していたの。それを……あなたは完全に壊したのよ。チェーンへの罠の秘密を『この地で立場が弱い大精霊』にばらまく形でね。」

「……。それはおかしいわ。その大精霊達はみなこの私に感謝の意を伝えてきているわ!」

「それは心から感謝するわよ。なぜなら、民は飢えているが……そのような大精霊の膳には豪華な食材が並び、シィー側の精霊すら度肝を抜くような豪華な宮殿や船が数多く並ぶという状況。チェーンから仮想短冊の価値を奪い放題なら、民の存在など……もはやどうでもいい。ラムダに忠誠さえ誓っていればいい。こんな感じかしら。」

「……。」


 ラムダ様……。これはいったい……。私は……そのような性質のものに触れ、みなを欺いてきたのでしょうか。私は……どうしたら。


「それでもね、チェーン管理精霊を任されたフィーは、立場が弱い大精霊の民の飢えや渇きを解決できるのならと、価値が奪い放題の現状を嘆きながらも黙認していたの。しかしこの有様よ。フィーがどんな気持ちだったのか、わかるかしら? だから……シィーは怒っているのよ。」


 私は、女神ネゲート様のこのお言葉で目が覚めました。ラムダ様は……フィー様のこのような弱みに付け込んだのでしょうか。黙認しざるを得ないのから……ですか。それなら、ラムダ様の聖戦よりもフィー様の考えを尊重します。


「ラムダ様……。私は……、フィー様の考えを尊重します。」

「えっ? なに、急に? ミィー……。」


 私にラムダ様が詰め寄ってきました。もう……覚悟はできています。でも、最後にフィー様を信じられたので、悔いはありません。

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