表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/412

88, ラムダが立場の弱い大精霊を地の側へ取り込めたのは、ラムダへの忠誠ではなく、価値を奪い放題のチェーンの罠の秘密を教えたからでしょう。それは、主要な大精霊から価値を奪える「唯一の手法」となった。

 今日は大切な分岐点。地の見習いからやり直しとなった私……ミィーは、この地に舞い降りたとされる女神……ネゲート様との交渉に、ラムダ様と挑みます。


「あなたが地の大精霊ラムダ? わたしは……そう、女神ネゲートよ。」

「あら。わざわざ女神様からお越しくださるとは。熱烈な歓迎をご用意すべきだったかしら?」

「大胆なシィーがそちらにお邪魔したときは、その経路上にラムダが頼れる精霊を所狭しと並べて凄まじい歓迎ぶりだったようね。」

「あら、ご存じで?」

「そうね。だからラムダのこれ以上の熱烈な歓迎は不要なの。もうお腹いっぱいよ。なぜなら、すでにラムダの手下どもから、わたしの首元にぐっさりとやられた過去があるからね。なぜかそれは急所を外していたおかげで、『大過去』の因果が巡るに廻って女神になったの。」

「ちっ……。あの時しくじったのが、このような『現実』を映し出す結果になったのね。」

「あ、あの……。女神ネゲート様……。」

「ちょっと、ミィー。この地域一帯は、このわたし……地の大精霊『ラムダ』の聖域。女神の一方的な要求なんかに応じる必要はないわ。今こそ『強い大精霊』を女神に示すべきね。誓いなさい。」

「はい……、ラムダ様。堅く……誓います。」

「さて、女神様? チェーンの利用目的を決める聖戦に対して、チェーンを『ジェネシス』からやり直せですって? あら……この地のルールを蹂躙する者が女神になってしまったのかしら?」

「この地のルール? そうね……遺伝における万物の霊長『人』を大精霊のゲームの駒にして良いというルールはこの地にないわ。どうやらお互い様かしら。ねぇ、ラムダ?」

「……。冗談じゃないわ! なんなのこの女神……、この私を侮辱しに来たのかしら?」

「あら、気に障ったのかしら?」

「だったら何? あなたが女神であろうとも、この私は……。」

「もう。ラムダは気が短いわね? 今のは軽い挨拶よ、挨拶。そんな程度を軽く流すことすらできないのかしら? あなたが目の敵にしているシィーですら、この程度は軽く流すわよ?」

「……。そうね。地の民を支える大精霊の気が短いというのは、よろしくないわね。」

「わかれば問題ないわ。」

「あなたは、たとえシィーが相手であっても、臆することなく命じることができるのかしら?」

「わたしがシィーに臆するとでも? 最近は……買いを容認するという不思議な事を言い始めたので、しっかりと噛み付いているわよ?」

「あら。」


 フィー……様にそっくりな女神ネゲート様。フィー……様を思い出します。マッピングでそのお姿を拝見していた頃から……より身近に感じておりました。


「ミィー?」

「あの、はい……。ラムダ様。」

「ちょうどよい機会。この良心までもが小さな女神様にご挨拶してみてはいかがかしら?」

「えっ!? はあ……、ラムダ様。」

「その良心が崩壊し『強い大精霊』という概念からいつまでも抜け出せないラムダは何よ?」

「もう……。一言二言多い女神様なこと。」


 あ、あの……。女神ネゲート様に、私が接しても良いのでしょうか……。でも、ラムダ様のご希望です。頑張ります。


「女神ネゲート様、私は地の見習いのミィーでございます。」

「……。こんなことに巻き込んでしまって、わたしは謝るべきね。」

「えっ? あ、あの……。」

「ちょっと。ミィーは私のもの。何に巻き込んでしまったのかしら?」

「……。一応うかがうけど、返す意思はないようね?」

「うん。そんな概念すらないわ。」

「あ、あの……、女神ネゲート様。私はラムダ様のものです。」

「……。わかったわ。」


 ちょっとしくじってしまいました。でも……ラムダ様に忠誠を尽くします。それから、この地が想像以上に分断されていたという話題になりました。


「この私……地の大精霊『ラムダ』側に、この地の三割は賛同しているの。そして、どちら側につくのか様子見なのが四割よ。それが『大過去』から映し出された現実。この地はね、女神様がお考えよりもはるかに分断が進んでいるのよ。つまり……シィーの時代は終わるの。そう受け止めなさい。」

「そうね。そのような分断が進んでいる点は間違いないわ。でも……、もし全てのチェーンを『ジェネシス』からやり直すとなったら、その状況は一転するわよね? そうよね、ラムダ?」

「何よ……。はっきり言ったらどうなの?」

「そうね。なら、そうさせていただくわ。ラムダに賛同したその三割にチェーンの罠の秘密を教えたでしょう? その秘密さえ知れば『小さな演算量』でチェーンに宿る仮想短冊から価値を奪うことができるのよね? つまり価値を奪い放題。本来なら『超越した演算量』を要求されるからこそ安全なのに、それが『小さな演算量』で済むチェーンの罠の秘密。それらは『漏洩厳禁の式』という名でも付けていそうね? あんな経路やこんな経路なんて。『この地の主要な大精霊』から価値を奪える唯一の手法として。そんな程度でも、いつでも価値を奪えるという式の秘密なら他に漏れる心配はなく、ラムダへの永続的な忠誠も狙える素敵な戦略だわ。」

「そ、それは……。そんなことあるわけが……。」

「あら、これは失礼。でも……、それなら全てのチェーンを『ジェネシス』からやり直して、それでもこの地の分断が進むようであれば、チェーンへの罠の秘密は無関係だったということで、その時はラムダの勝ち……すなわち、ラムダの時代への移行とするわ。この場で女神として堅く約束する。これならどうかしら? 『ジェネシス』からのやり直し……それは、今の仮想短冊の価値はすべて消え、チェーン自体も大精霊の管理にはなるが、ラムダの時代になるのなら問題ないわよね?」


 どうやら……この小さな女神様を甘くみていました。ラムダ様の作戦はもちろん、漏洩厳禁の式などもすべて掌握しています。これが……演算の大精霊だった者が女神になるということなのでしょうか。すべてを見透かされてしまい交渉にすらなりません……。どうしたら……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ