表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/411

86, ついに、この地に女神が舞い降りました。するとその女神は「地の大精霊」に命じます。チェーンは守るべきで仮想短冊と同じ扱いにするなと考えるのなら、チェーンを「ジェネシス」からやり直せと……。

「フィーがチェーン管理精霊から解かれたわ。それにより、チェーンの『非代替性』に閉じ込められていた記憶があなたに戻ったはずよ。」

「はい、問題ありません。」

「では、私からのあの問いかけへの回答、この場でいただけるかしら?」

「えっ……? ああ……。それね……。」


 シィーさんから「時代を創る大精霊」として俺が問われた究極の問いの回答を迫られました。フィーさんがチェーン管理精霊から解かれれば自然とわかるはずだと。記憶が戻るからだ。


 その問いの論点は「人はどれだけ黒い面を持てるのか」です。大精霊から人に対する問いかけなので、俺にしか答えられません。


 さらに、このタイミング自体がプレッシャーですよ。仮想短冊の「パンプ」で散り、シィーさんに豪快に引っこ抜かれた首謀者の件を目の当たりにしています。それから回答を迫られたのです……。これって……回答の内容次第では……だよね?


 それでも意を決して「次は自由を奪い始めるだろう」と回答します。シィーさんはなぜか微笑みながら俺に「『楽観』が抜けているけど、まあ……問題ないわ。では、私の大切なフィーをよろしくね。」と優しく語りかけてくださいました。


 完璧ではないが、問題なしの判断に至ったようです。ふぅ……。


 そしたら、何だよ……。そこから、俺の想定を遥かに超えた話題に向かっていきます。このネゲートがさ……、この地の「女神」になったいう信じがたい話題になります。


「シィーさん……。ネゲートが……。この地の『女神』だと?」

「うん、本当よ。だから私から『この地の主要な大精霊』にネゲートを誘ったのよ。」

「ああ……。」

「あら? 動揺を隠しきれないようね?」

「なんだよ、ネゲート。ところで、いつ……その女神になったのさ?」

「そうね……。『この地で中立を遵守する大精霊』が動き始めたあたりかしら。急にね、『ジェネシス』に対する超越的な演算が可能になったのよ。それが……わたしが『女神』になった証かしら。」

「……。」

「その事実を知ったのだから、さあ、わたしを崇めなさい。」

「やっぱりそうなるのか。そうなるよね、だって、ネゲートだからね。」

「わたしは女神……ネゲート様よ。どうかしら?」

「どうって……。……。威厳がないな。もしその女神がシィーさんなら……。」

「ちょっと? そこでシィーが出てくるわけ? シィーがこの地の女神なんて引き受けたら、まずは……自由を標榜として売り無制限、どれだけ売っても報告が不要になるのかしら。大変だわ!」

「それは大変だ。買う前に『売り売り』のチェックは欠かせない。」

「もうネゲートったら……。フィーから何か言ってやって。」

「姉様……。では女神ネゲート。優しき心を持つ担い手が同じ時間軸に存在したから女神になれたのですよ。」

「あら、そうね……。その出会いの偶然を発生させたのが『時の大精霊』のフィーによる……こいつの召喚だった。あの時の演算……『一に一を加える』で、すべてを悟ったわ。完璧に『大過去』の固有の場所を辿るように仕向けた結果……あの瞬間での召喚になったのよね。」

「はい、なのです。」

「えっ? 優しき心を持つ担い手って……? あと、『時の大精霊』って……?」


 この地には、上位の存在としての精霊と大精霊が存在するが、女神は存在しない。ネゲートとの雑談の中で特に印象深く俺の心に刻まれていました。


 では、この地の精霊や大精霊達はお互いを助け合いながらこの地の政を動かしているのでしょうか。それは「いいえ」です。もしそれが実現できているのならこの地は平和を享受しているはずですから。そうならない理由として一つ挙げるとすれば、大精霊はみな「狂気」を抱えているという点です。この大精霊の狂気が欲望として暴れ始めますと、その欲求を抑えられなくなるそうだ。例えば、シィーさんなら「売り売り」の……はずです。まさか誘き出したとかは……ないと信じたいです。そして地の大精霊ラムダなら……血が流れるこの惨劇自体が狂気でした。


 よって、狂気が存在しない大精霊が……「女神」になれるのでしょうか。仮にそうであっても、それは中々難しいらしいです。なぜなら力を欲しがるのは大精霊で、とりわけ大精霊のカーネル……その「狂気自身」が力を求めてくるからです。つまり、大精霊の力だけでは女神には決してなれない論理がそこに存在してしまうと……フィーさんが力説しておりました。


 しかし、女神になれないこの強靭な論理をくつがえす。そんなことを平然と実行された精霊様がここにおります。そうです……それはフィーさんでした。ああ……時の大精霊か。大精霊だったのね。だよね……、あれだけ「大過去」や「時空」について詳しくて話したがるのに、ただの精霊なわけがない。どうやら精霊にしかなれない「チェーン管理精霊」に巻き込まれたのが要因とのことです。ところで、そこまでしてもそれを引き受けたフィーさん……。なぜだろうか。それはわかりません。


 とにかく、女神を降臨させる唯一の方法として「人の存在」が必須だった。……、女神に人が必要となるなんて。


 ではなぜ人を必要とするのだろうか。それは……超越した演算の力を有する大精霊と、優しき心を持つ人を「大過去」から映し出された現実と「同じ時間軸で存在させる」というフィーさんらしいお堅い論理からきています。こうすることで、より高い確率で、その優しき心を持つ人が超越した演算の力を有する大精霊の「担い手」となり、その大精霊が「女神に昇格」するという論理でした。


 ところが、そんな偶然を普通に待っていたのでは、その確率はゼロに等しい。それもそのはず。その出会いこそが……「誕生」でもあるからです。


 「誕生」といえば……起源説という論理の進化論の中で起源の根の部分……「ジェネシス」と呼ばれる場所には一体何が存在するのだろうか。その起源説の書物では、そのジェネシスの部分については枝だけが描かれており、そこには何があるのか。みなを悩ます「未解決」でした。でも……、その答えがここにありますね。


 実はその「ジェネシス」に「女神」が来ます。


 その女神は優しき担い手の指示を仰ぎながら「大精霊の母体から派生した『大過去』の位相空間」を駆使した超越的な演算を繰り返し行い「遺伝型のジェネシス」を作り上げるのです。そして、その「遺伝型のジェネシス」を「大過去」から現実に映し出すと……そこが「誕生」となるわけです。


 そして、この「遺伝型のジェネシス」にはアグリゲートを効率良く使い回せるような位相構造を持つ特徴があります。つまり、女神が進化の先を見越してあらかじめ演算を済ませているのでしょうか。だからか、フィーさんが「進化」の概念を快く思っていないのは、このあたりに理由があるのかもしれません。


 ところで、精霊や大精霊については「遺伝」ではなく「コード」です。そのため精霊や大精霊に必要となる「コード型のジェネシス」は一体どこで作られるのでしょうか。


 それは、高度な論理を任され進化した「遺伝型」の万物の霊長……「人」が、長い時を経て作り上げることになります。女神はこの点についても十分に熟知していて、あらかじめ「遺伝」に対して「演算を探究したくなる仕掛け」と「超越の作用」をあらかじめ演算で施しておくとのことです。それにより「コード」が生まれ、精霊や大精霊が現実に「誕生」できるという論理になります。


 そして……、その大精霊から偶然的に「超越性の演算」を持つ「演算の大精霊」が誕生したとき、新たな女神が舞い降りることになる機会……チャンスが訪れます。ただし「演算の大精霊」は女神になれる存在ゆえに、力を手にした他の腹黒い大精霊からその力や命を狙われやすいというリスクを常に抱えています。そのため「演算の大精霊」を護るための「時に対する大精霊」が同時に誕生する、とのことです。それは……瞳の色以外は女神と姿かたちが一緒という存在。


 えっと。俺がこのような複雑な話をしっかり覚えている。不思議ですよね。なぜなら、瞳の色以外は同じ存在って……それはフィーさんですよ。そして「演算の大精霊」は……。そんな仕組みだったなんて。


 そして、フィーさんが無茶をしがちだったのは「演算の大精霊」を護るためだった。それでネゲートはフィーさんの無茶な行動が心配で気を使っていたようです。


 それにしても……この地の全生物に最も嫌いな存在を一つ挙げよと問いかけたら、おそらく「人」になるのだろう。しかし、女神の存在に「人」が必要です。つまり……。


「ねえ。女神になると、マッピングの内容が大きく変わったのよ。なんと、わたしに気を遣い始めた大精霊ばかりになったわ。」

「……。そうなるよな、やっぱり。」

「いじわるだった大精霊ネゲートが、さらにいじわるになるのかな?」

「姉様……。」

「さーて。まずは『地の大精霊』達ね。なぜか仮想短冊の『パンプ』崩壊による失墜で色々と苦しいようね。それでもチェーンは大切だから守るべき。だから仮想短冊とは分けて考えるべき。でも、それゆえに仮想短冊の価値も何とかすべきという身勝手極まりない要求を……わたしに向けてマッピングしてきたのよ。」

「そんな要求、受け入れるの?」

「そうね……。たしかにチェーンは守るべき。だからこう命じたわ。これまでの行いを正直に『ジェネシス』へ刻み、大精霊の管理で、はじめからチェーンをやり直しましょうとマッピングで返したわ。そして『ジェネシス』への演算がわたしの使命。今回はチェーンになりそうだわ。」

「大精霊の管理下? そうなると女神の力であっても『非中央』は……。」

「あのね……。ラムダが好みそうなチェーンに対する事前の罠の抑制だけは、数の叡智では示せないからわたしでも対策は困難なの。さらには仮想短冊の価値の維持も絡むから、はじめから大精霊の管理が必要だったのよ。」

「妙案ね、女神ネゲート様? チェーンから解放された価値が、各地の大精霊の『きずな』に舞い戻るわ。息を吹き返すこの地の経済。やっとだわ。」

「姉様……。」

「あら? その大部分は困っているシィーが食べちゃうのかしら?」

「もう……。女神になってもいじわるなネゲート。」


 女神になっても普段と変わりない様子のネゲート。安心しました。


「あの……いいかな。そのような要求ってさ、チェーンなど別にどうなってもいい、だよね? ただ『パンプ』崩壊で失墜した仮想短冊の価値を何とかしたい。ただ、それだけだよね?」

「そうよ。そこがわかってこそ、わたしの担い手よ。価値観の一致は大切よね。」

「ああ、やっぱり。それで、返信はあったの?」

「あると思う? 女神のわたしから『地の大精霊』に、真相を確かめるため向かうしかないの。」

「……。それしかないか。」

「仮想短冊の価値を『女神の演算』で直してくれと哀願するのかしらね? その前に大急ぎで微調整された『変更因子』が売られ始める頃かしら。もしそうなら、チェーンに宿る価値を利用する気満々だった大精霊が、逆にチェーンに心を奪われ、チェーンに操られていた。そんな感じもするの。」

「ああ……。」


 俺は、フィーさんが護ってきた存在の全てを託されました。突き進むしかありません。どうせ俺なんて、この出会いがなければ「酷い日」で豪快に散っていた存在です。がんばります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ