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85, ラムダ様……。それは、仮想短冊に宿る価値を次々と「一方的に奪え」との……ご命令でしょうか……。

 「この地で中立を遵守する大精霊」より下された冷酷な宣告により、「パンプ」以外に、ラムダ様から地のチェーンの取引の機会すら奪おうとしています。


 いずれ「この地の主要な大精霊」も後に続いて取引の機会を奪ってくるのでしょう。


 そもそも、この地のバランスを取ろうとしないのが元凶です。「この地の主要な大精霊」は全体の十分の一にも満たない地域一帯の集合にも関わらず、この地全体の価値の六割程度を手にしています。中立の大精霊様も、そのような地域格差は理解しておりました。でも……。でも……、あのような冷酷なご判断をラムダ様に下しました。


 しかしながら、シィーになびく大精霊達が手にしているその六割の価値の中にラムダ様の「地の力」が大いに含まれています。なぜなら、地の力は資源的な価値を持つので古の時代から狙われやすい性質があります。だからこそ、だからこそ……地の属性こそが「強い大精霊」を必要とします。


 ラムダ様……。「虚ろの式……パンプ」が壊れたの件だって非常に厳しいです。シィーのあのような極悪非道なやり方……。そうです……、シィーが関わると、何事も中心から砕けるように派手に散っていくのです。そのため「この地で立場が弱い大精霊」はシィー側には決してなびかず、自然とラムダ様を慕うようになります。


 そしてこれはシィーの企みでしょうか。「この地の主要な大精霊」自体が大きく動きました。メンバーの追加で、それは……ラムダ様が仕留めそこなったネゲートでした。このネゲートという大精霊……、そうです……、フィー……にそっくりな大精霊です。なぜか清楚に振舞ってはいましたが、腹黒いのは間違いないです。なぜなら、シィー側へこのタイミングで参入するなんて。とても信じられません。


 ラムダ様もきっと、そのマッピングを悔しそうに眺めていたはずです。だって、そのネゲートが座った席は……本来ならラムダ様の席だったはずです。なぜ、よりにもよってフィー……にそっくりのネゲートにその席を託したのでしょうか。だからシィーは恐ろしいのです。腹黒さを超越するとシィーになります。


「ラムダ様……。私……。どうしたらよいのか。」


 ラムダ様がヒトを動かし始めてから、シィーの強い意志により次々と有効な手段が閉じられていきます。最近では、シィーが託した「地の民を『大過去』へ送るための精霊」の性能が格段とアップしたらしいです。これでは……。この状況で、地の神官としての弱音を吐いてはいけませんが……、ラムダ様の前だけなら、どうかお許しください。


「地の神官ミィー。弱気になっては惨めな大精霊『シィー』の思うつぼよ。この闘いは、チェーンの利用目的を決める……すなわち、ここだけの問題ではない。そう……『この地で立場が弱い大精霊』はこのわたし……地の大精霊ラムダの味方なの。」

「はい、ラムダ様。そうですね……弱気になってはいけませんね。まさかこんなにもシィーが適切に動き回ってくるとは、油断してしまいました。はやめにシィーの『きずな』を大きく叩くべきでした。申し訳ございません。」

「そうね、あのような身のこなし方。惨めな大精霊『シィー』は、自身の『きずな』が多少の回復期に乗った途端、豹変したわ。」

「はい、ラムダ様。」

「でも、大丈夫。このわたし……地の大精霊ラムダをなけたツケ、これから払ってもらうだけよ。」

「ラムダ様……。つまりそれは、強気に転じられる切り札があるのですね!」

「そうよ。」


 ラムダ様の語気が急に強まったので、私は……飛び跳ねたくなる気持ちを抑えながら、その詳細を伺います。


「ラムダ様。それは、どのような有効性を持ちますか?」

「うん、画期的よ。」

「画期的、ですか?」

「そうよ。なぜなら、このような場合に備え『別の手段』でも仮想短冊の価値を獲得できるように準備してきたのよ。仮想短冊が価値を持ち始めた瞬間から、長い間、ずっと頑張って仕掛けてきたの。だから、今さら気が付いてもね、それら『罠』への対策はできないの。なぜなら演算の性質より『手遅れな状態』になっているからなの。だからこそ、有効活用させていただく場面が到来したわね。」

「ラムダ様……。罠……、ですか?」

「そうよ。」

「それらは……『虚ろの式』にも勝る優れたものですか?」

「そうよ。」


 罠……。少し嫌な予感がします。でも、詳細の続きを伺います。


「ラムダ様。その罠で……、何をするのでしょうか?」

「本当はこんな方法には至らないように、さっさと終わらせるつもりだったの。しかし、惨めな大精霊『シィー』が、あのような粘りをみせてくるとはね。最近、各地を飛び回るとき『今は本調子』と触れ回っているようね。でも、この方法で惨めな大精霊『シィー』は早めにチェックメイトかしら。」

「ラムダ様……。では、その方法とは……?」

「ミィーのマッピングに、漏洩厳禁の重要な式を送るわ。確認して。」

「漏洩厳禁の式ですね。はい、ラムダ様。」


 虚ろの式にも勝る方法……。ラムダ様……。では、その詳細を確認します。漏洩厳禁なので細心の注意を払いながら……。


 こ、これは……。えっ! これって……。ああ……。


「ラムダ様! こ、これは……。」

「地の神官なら、すぐに理解できるはずよ。」

「理解はできますが、この内容……。」

「至る所に散らばっているでしょう。そう……仮想短冊の価値が輝いているわ。」

「そ、それはわかっております。でも、ラムダ様……。これでは……。」

「どうしたのかしら? その漏洩厳禁の式が示す場所に存在する仮想短冊の価値をいただくだけよ。仮想短冊が価値を持ち始めた瞬間から、悟られないようにしっかり準備してきたの。だから『罠』って呼ぶのよ。」


 ラムダ様は「いただくだけ」とおっしゃいましたが、これは、その式が示す場所の仮想短冊の価値をすべてラムダ様側に移動させることが可能な手法でした。つまり……「一方的に奪う」です。


「これ……。奪われた方からみたら、瞬時に自分の仮想短冊の価値がゼロになる、ですよね?」

「そうよ。」

「ラムダ様……。これを定期的に繰り返して『虚ろの式』の代わりにするのですか?」

「うん、そうよ。」


 ラムダ様……。私……、それだけは……。


「この地って面白いわよね。だから『大過去』も見放さないのかしら。チェーンは鍵を含めて自分で管理すれば絶対安心と信じ切っているヒトや精霊が多過ぎだったの。それが罠とも知らずに価値を預けていると……、ね? ある日突然、すべての価値を奪われて戻ってこなくなるのよ。」

「ラムダ様……。」

「さらにチェーンの哲学によると、トランザクションはすべて公開するという仕様だから、これって……それら罠にある価値がどの程度なのかを『事前に掌握』できてしまうの。素敵よね。」

「ラムダ様……。事前にわかる点より、相場に影響が出ないように選別してやれ……ですか?」

「そうよ。さすがは地の神官ね。それがすぐに考えに浮かぶ。素晴らしいわ。」


 もう私……。それだけは……。


「どうしたのかしら? ミィー……?」

「もう私……、私……、それだけは……。ラムダ様のお役に立てず……、立てず……。もう……このままこの場で『大過去』に送ってください……。」


 私は……ぎりぎりの正常を保っていた精神が崩壊したのです。これで価値を奪った分だけ……この地で血が流れるからです。そして、そのような罠が無数にあるという現実。これが「大過去」から映し出された現実。もう止まらない現実。ああ……、フィー様……。フィー……様? ……。

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