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83, もしこの地に「女神」が降臨しているのなら、その「女神」すらそこまでやってしまった君を決して許さないだろう。

 私は地の神官ミィーです。ラムダ様……。「虚ろの式」が完全に壊れて修復不能になりました。残った式で代用するための策を練っています。でも……。出力が桁違いに低いです。どうしたら……。


 シィーはラムダ様を追い詰める絶好の機会をずっと狙っていた。ラムダ様がその復活を渇望する「虚ろの式」が修復不能になった瞬間、私は全てを悟りました。


 私が担当している「虚ろの式」の復活については順調そのものでした。不具合を起こしていた短冊の切り離しなどに次々と成功し、そこへ「非代替性」を稼働させて価値をリザーブする準備をしました。すべては順調で、巻き返しを図ることが十分に可能な状態にまで回復させました。


 しかし……。シィーは想像以上に手強かった。とても悔しいです。どうして……。この稼働したラムダ様の「非代替性」へ「この地の主要な大精霊」が持つ莫大な価値が向かわないように先手を打ってきました。そのタイミングと手際の良さといったら……ラムダ様が「虚ろの式」を必死で直しているその姿を眺めながら腹を抱えて笑っていたのでしょう。ちょうどこれからという絶妙なタイミングでの「潰し」でした。シィーは「時代を創る大精霊」です。当然、この地が持つ莫大な価値の大部分は自然とシィーに向かう構造になっています。だからこそできた「力技」です。これにより、さらに流動性が大きく失われ「虚ろの式」が完全に壊れて修復不能になったのです。


 私は地の神官です。他の式での代用や組み合わせも試みました。しかし……「虚ろの式」など比較にすらならない低い出力しか得られません。これでは上に向かわせる瞬発力が得られません。波のように行ったり来たりを繰り返しながら、下に向かっていくのでしょう。


「ラムダ様……。」

「落ち着いて、ミィー。惨めな大精霊『シィー』の真の姿をその目に焼き付けなさい。このわたし……地の大精霊ラムダを追い詰めるためなら自らの民すら平然と切り捨てる計略を平然と実行に移すのよ。」

「はい、ラムダ様。たしかに……そうですよね。自らの民にあのようなひどい仕打ち……。この時のためにわざと泳がせていたとしか考えられません。それで『非代替性』を潰しにかかったのですね。」

「そうよ。ただ……残された時間は少ないようね。なぜなら、あのような平然な切り捨てを地の側に見せつけてきた点が重要なの。なぜだかわかるかしら?」

「はい、ラムダ様。まだ『他にもある』から、早く手を引けという陰湿なメッセージ、ですか?」

「うん、そうよ。でもね、そんなおどしで手を引く腰抜けな大精霊などこの地に存在しないから。」

「はい、ラムダ様。」

「少しは地の民を見習ってほしいものね。そうよね、ミィー?」

「……。」

「どうしたのかしら?」

「できれば……その……。」


 つい本音が出てしまいました。ラムダ様……。


「落ち着いて、ミィー。ヒトが『魂』と叫ぶ存在が戻る先……『大過去』に、時間の概念は存在しないの。精霊の式……運動に対して時間の概念が後付けになっているのはそれが主な理由よ。だから……、今でも、未来でも、『大過去』の視点からは同時なの。そうよね?」

「はい……ラムダ様……。でも……、映し出された現実には時間の概念があります。そして、そこにはちょっとした淡い幸せなどもあるはずです。だから……。もうこれ以上は……。」


 ラムダ様……。


「地の神官ミィー。正気を取り戻しなさい。今回は今後のチェーン利用目的を定める大切な闘い。そして惨めな大精霊『シィー』との聖戦でもあるから、シィーの精霊に撃ち抜かれ力尽きようとも地の大精霊に祝福され『大過去』に戻ることができるのよ。そして、その『魂』が『大過去』から現実に映し出されたときには、その祝福の効果がしっかりと直積で反映され、誇り高き地の民としてこの現実……この地へ舞い戻ってくることができるの。だから心配はないの。よろしいかしら?」

「……。はい……、ラムダ様。」

「さらには『非代替性』は私の時代の到来を示しているの。まったく心配ないわ。」


 だめです……。ラムダ様は頑なに現状維持の方針です。もう……止められません。


 そして、その瞬間でした。私宛のマッピングに重大な情報が入ります。これは、なんだろう……。えっ……、これは……。ラムダ様……、ああ……。


「ラムダ様……。その……。」

「どうしたの? その表情は……よろしくない知らせかしら?」

「はい……ラムダ様。『この地で中立の立場を遵守する大精霊』様からの知らせで……。」

「なにかしら、ミィー?」

「はい、ラムダ様……。……。読み上げます……。」


 「この地の主要な大精霊」……特に「時代を創る大精霊」にこの地の価値の大部分が集中している点に懸念を抱く君の考えには賛同できる。それゆえにこの地で立場が弱い大精霊が管理する地域一帯では貧困を起因とした飢餓や疫病が蔓延し、解決する気配がまったくみられない。よって、私もそのような問題点を解決できるのならと「非中央」を標榜とする「仮想短冊」の哲学に賭けてみることにした。しかし、君の今やっている惨劇は一体何だ? そんなものは全く想定していない。次に「一つの中央」への遷移は論外だ。なぜそのような仕組みに移行したのだ? さらには「パンプ」だ。あれでは仮想短冊全体が欺瞞に満ちた状態になっているだけだ。そして最後に……。これは言わなくてもわかるだろうか。もしこの地に「女神」が降臨しているのなら、その「女神」すらそこまでやってしまった君を決して許さないだろう。それらを理由とし、もう君とは今後「仮想短冊」を通じたお付き合いは一切できない。突然で申し訳ないが理解を頼む。


「……。何よこれ……。中立の大精霊がこのわたしを……。」

「あ、あの……ラムダ様……。」


 ……。このマッピングの真意は、ラムダ様が管理する仮想短冊の取引を「切り捨てる」という意味になります。つまり……そこでの取引ができなくなります。そして……「この地で中立の立場を遵守する大精霊」の政は、自由と楽観を取り込んだ大精霊達……「この地の主要な大精霊」も大いに参考とします。つまり……。


 ラムダ様、もうこれ以上は……。私……、本当にどうしたらよいのか……。

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