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75, 「虚ろの式」の作用が惨めな大精霊シィーにばれてしまったのかしら? 急に仮想短冊の担保を示せだなんて。でも、すでに手遅れ……この地の分断は止まらないから。

 私は地の神官……ミィーです。地の大精霊ラムダ様が闘いの火蓋を切る日の到来。いよいよヒトを動かし始めました……。覚悟はしていました。でも……、でも……。


「ラムダ様……。私……。」

「地の神官ミー。落ち着いて、大丈夫よ。『ステーク……変更因子』と『この地の頂点に立つ創造神』がこの私……地の大精霊ラムダに味方する有利な闘い。この地がラムダの時代への移行することは『非代替性』によりすでに定まっているという何よりの証拠ね。これが『大過去』において唯一存在できる『運命論』かしら? 論理の美しさも問題ないわね。」

「はい……、ラムダ様。」

「さて、地の神官ミィー。その運命の形状について述べて。」

「形状……ですか、ラムダ様。それは『円環』でしょうか?」

「そうよ。でもそれは現実に映し出した後の形。『大過去』から解釈すると、それは強く波打っていて、その隙間に隠れるように存在しているの。」

「ラムダ様……。波、ですか? つまり、波の中で存在していると……?」

「そうね。激しい変動にさらされる『大過去』の波の中で存在している……。だから現実に映し出すと『円環』になり、その内部をくまなく測量すると……延々と数が続くものを得られるのよ。だからこそ、何度砕かれても延々と次が出続けるゆえに『大過去』での存在が許されるのね。」

「はあ……、ラムダ様。」

「それでね、この性質から『円環』に宿る価値は……非常に堅牢なものになるの。」

「そ、それは……。」

「どのみちこの地は、このわたし……地の大精霊ラムダの時代へ移行するの。つまり『円環』の価値も私の管理下……所有物になるのね。楽しみだわ。そうよね、ミィー?」

「……。そ、それは……。」

「今回は手加減なしよ。結局、前回は甘かった。ただ、それだけ。」

「……。」

「ミィーなら乗り越えられる。信じているわ。」

「……、ラムダ様。」

「ところで、惨めな大精霊シィー側が、このわたし……地の大精霊ラムダを罵り始めたわ。でもね、『変更因子』によって、すでにこの地の分断が進み始めているの。何故だかわかるかしら?」

「はあ……、ラムダ様。みな『仮想短冊の価値』に弱い、ですね?」

「その通りよ。『ステーク……変更因子』の作用は獰猛で『この地で立場が弱かった大精霊』の心をぎゅっと掴んで離さないの。その甲斐もあって、このわたし……地の大精霊ラムダへの賛同も多いの。だから、大丈夫よ。」

「そうですか……、ラムダ様。」

「そうよ。もともと仮想短冊の通貨の大きな役割……本質というべきかしら。……そう。惨めな大精霊『シィー』が持つ価値と、『円環』の価値と、惨めな大精霊シィーになびく大精霊達が集まって管理する価値を『奪ってくる』ことなの。」

「えっ……、ラ、ラムダ様……。」

「どうかされたの、ミィー? 別に驚くことではないでしょう。」

「はあ……、ラムダ様。」

「でもね、ミィー。仮想短冊でちょっとした問題が発生したの。」

「問題ですか……、ラムダ様?」

「うん。惨めな大精霊シィーが本来の力に目覚めてしまったの。それで、よりにもよって仮想短冊をパンプさせる『虚ろの式』の作用に気が付いてしまったのよ。」

「シィーが……、本来の力に……、ですか……。はあ……、ラムダ様。」

「まさかね、あの惨めな大精霊シィーが仮想短冊のパンプを締め上げるなんて。パンプができないと『虚ろの式』が作用しないのよ。」

「はあ……、ラムダ様……。」

「『変更因子』を大きなボリュームで回すには、『仮想短冊のパンプに触れ、虚ろの式で喜ぶ層』……すなわち『この地がどうなろうと己の懐が潤えば問題なし』というトレーダーをより多く取り込む必要があるの。そして、パンプが締め上げられると……この層が急減し……『流動性の危機』に陥るのよ。この『流動性の危機』は看過できないわ。その影響は甚大で、このわたし……地の大精霊ラムダが事前に準備した仮想短冊すべてに悪い影響が波及してしまうの。」

「それって……。」

「そうね。仮想短冊から膨大な価値が流出するわね。」

「……。そうですか、ラムダ様。」

「あら? 悲しくないの? ミィーがこだわる『犬』にだって影響が出るわよ?」


 ラムダ様……。もちろん悲しいです。しかし、今は……。


「ラムダ様……。さすがにヒトを動かすのは……。」

「急に何かしら?」

「……。」


 何も答えられません。……。どうしたらよいのだろうか、ちょっとした良い考えすら思い浮かびません。


「もう。地の神官ミィー、しっかりしなさい。すでにその流出は始まっているの。」

「しかし……、しかし、ラムダ様!」

「この地は『力は正義』なの。こうする他、ないの。仕方がないのよ。」

「ラムダ様……。でも、でも……。」

「地の神官ミィー、落ち着きなさい。チェーンの利用目的を定める今回の闘いには、絶対に勝たなくてはならない。勝利以外、選択肢がないの。」


 ラムダ様……。わかりました。私も……腹をくくります。


「この地の分断が進んだあと、ラムダの時代に移行次第、すぐに『一つの中央』にまとめるわ。」

「それが……ラムダ様の時代の真髄になるのですね?」

「そうよ。その間のつなぎとして、分断が進んだ各大精霊達をまとめるブロック……『分散化』の構築が急がれるわね。この『分散化』に大精霊達の『ライフライン』『コミュニティ』や『自動的な移動メソッド……自動運転』などを取り込むように促すの。そして、時代が移行次第、『ステーク……変更因子』の強い作用で『分散化』を『一つの中央』にまとめあげる。言葉巧みに誘導され『ライフライン』などを取り込んでしまった大精霊達は、この地点でこの新しい仕組みに気が付いても、すでにこのわたし……地の大精霊ラムダに逆らうことはできない。よって、承認するしかない。そして、この地に中央は『一つ』で良いの。このようなチェーンで構築されたこの『一つの中央』こそが、惨めな大精霊『シィー』の力すら凌駕するこの地で最も強い作用を持つ完全管理のための礎になるわ。それが、ラムダの時代の中枢。『力は正義』をチェーンで表現し、それを『一つの中央』として現実に映し出すのよ。完璧で美しい。」

「地の神官の……大仕事ですね。」

「そうよ。ミィーなら楽勝よね?」

「はい、ラムダ様。」

「あら? あの神々が大切にしている『円環』の価値。それらをすべて『ステーク……変更因子』で奪い取るとき、一体どんな表情を浮かべるのかしら。今から楽しみだわ。そうよね、地の神官ミィー。」

「そ、それは……。」

「大丈夫よ。あの神々は絶対に許さないけど、その地域一帯の龍の民は大切にするわ。」

「……。はい……、ラムダ様。」

「さて。あとはパンプの問題ね。急に仮想短冊の担保を示せだなんて、横暴よね。一応、コンセンサスで検証できるような仕組みを提唱してはみたけど……一部で抗議が出ているらしく長くは持ちそうにないわね。」

「ラムダ様……。それだと、そこに担保が存在することは示せますが、その担保が正常に扱われているのか、それを示したことにはなりません。例えば、その担保を『天の使い』に差し出せば、暴利ですが『大精霊の通貨』を得ることができます。もちろんその価値を返せなければ、その仮想短冊の担保をすべて『天の使い』に奪われ、失います。」

「さすがは地の神官。即答ね。でも、時間がないの。これで何とか粘るのよ。『信頼できる』ってね。どうせ大半のトレーダーは、気にしないか、わからない。そうよね、ミィー?」

「……。はい、ラムダ様。チェーンの論理を片っ端から並べて煙に巻くのですね。」

「うん、そうして。」

「はい、ラムダ様。」

「いい返事よ。目が覚めたのかしら? この程度の問題、前向きに考えているわよ。惨めな大精霊シィーが『惨め』なまま、このわたし……地の大精霊ラムダが勝つのは情けない。さあ、本気を出してきなさい。時代を創る大精霊として!」


 これこそがラムダ様の狂気。そう……私は直感しました。そして私は……ラムダ様の所有物です。そうです、現状をここで気にしても何も解決しません。ラムダ様の命じた通り、私は……チェーンを意識することなく乗り換え可能な証明の仕組みと、その分散化について、構築を開始しました。これでいい。素直に従い、勝てば終わるのですから。そう信じて、最速での構築を試みます。

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