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68, はい、ラムダ様。チェーンの利用目的を確定させるための最後の闘い……ですか。

「このわたし……『地』の大精霊ラムダの時代まで、あと少し。そうよね、ミィー?」

「はい、ラムダ様。」


 私は……シィーに決別を告げました。そして、地の大精霊ラムダ様に私の全てを捧げます。


 そしてその日から……僅かな時間でも無駄にすることなく、地の神官になるための「知識」と「知恵」を吸収していきました。かならずやラムダ様の右腕になってみせます。


「今日で地の見習いは卒業。こんな短期間で地の神官として輝けるなんてね。よろしいかしら?」

「ありがとうございます。ラムダ様。」

「いい返事ね。では、明日より地の神官ね。」

「はい、ラムダ様! ありがとうございます。」

「それでは……。地の神官として、初の任務はなにかしら?」

「はい、ラムダ様。フィーのヒストリーを探るため、フィー周辺を出入りする仮想短冊を取ってくるです。」

「その通り。完全にフィーを断ち切れたのね。二度と同じ過ちはしない……あの狂った精霊『フィー』への警戒だけは怠ってはいけないの。」

「はい、ラムダ様。」

「惨めな大精霊『シィー』の時代に終止符を打つ。この地における『最後の闘い』に挑むのよ。このわたし……地の大精霊ラムダの時代を完全な形で迎えるため、完膚無きまでに惨めな大精霊『シィー』を叩き潰すのよ。」

「はい、ラムダ様。」

「今ごろはそうね……、惨めな大精霊『シィー』側になびく程度が低い妖精どもは『食糧の奪い合い』『肥料の奪い合い』『時代の奪い合い』『燃料の奪い合い』そして……『冷酷な地の大精霊ラムダが狂気に目覚めた』と騒いでいる頃かしら。『大過去から映し出された現実……現在』しかみられない妖精どもがいくら騒いだところでね、真実には絶対に辿り着けないように『大過去』はできているのよ。ふふふ。」

「真実ですか……、ラムダ様。」

「うん。『真実に触れる』には神官になるしかないの。そして『真実を知る』には大精霊になるしかないわ。でもね、そこに抜け道が一つあるの。それは、輝きの違う者だけが許される大精霊の『お気に入り』になることなの。そして真実を知ることが許されるのよ。それがあなた……ミィーね。」

「ありがとうございます。ラムダ様。」

「では……明日より地の神官になるミィーに、真実を授けましょう。」

「はい、ラムダ様。」


 真実……。私はそれを知ることになる。これで……私は完全にラムダ様の所有物になります。


「まずは成り立ちから。このわたし……地の大精霊ラムダは、この地域一帯の地の民と共存共栄する大精霊なの。」

「はい、ラムダ様。」

「だからね、そうね……食糧や燃料の奪い合いで目を覚ましたって、何かしらね? そんなつまらないことで狂気に目覚めるほど短気ではないの。たかが『カネの食い違い』程度なんて、まったく気にならないから。そんなささいなことを気にかけるようでは、それは惨めな大精霊『シィー』にいいように利用されている証になるわね。」

「はい、ラムダ様。」

「だったら何だと思う? ミィー?」

「……。いいえ、ラムダ様。」

「では、しっかり記憶してね。現況の表向きは『大精霊の間で繰り広げられる次の時代の奪い合い』などに映ってくるの。『大過去』が映し出した『現実』がそれだから。でも真実はまったく違うの。このわたし……地の大精霊ラムダが狂気に目覚めるこの地の最後の闘いだから……それはすなわち『チェーンの利用目的を確定させるための最後の闘い』なの。そこには勝ち負けの概念などではなく、ヒトの存続をかけた重大な事象への挑戦になるのよ。」

「はあ……、ラムダ様。」


 えっ……。チェーンの利用目的って……、ラムダ様……。あと、ヒトの存続って……。


「驚いたかしら?」

「はい、ラムダ様。」

「それでは次ね。その利用目的を深く理解するため、これからミィーが真剣に向き合うことになるチェーンについて、その成り立ちを伝えていきましょう。」

「はい、ラムダ様。」

「そう。諸説はあるけれども……、チェーンの誕生とね、ヒトが『人形』に向かい始めた『奇妙な時代』の始点が一致するという有力な説があるの。それで、このわたし……地の大精霊ラムダはそれを信じているのよ。」

「ヒトが『人形』……ですか? ラムダ様。」

「そうよ。それでは定理からね。宇宙の微視的表現があらゆる生物……そして精霊やヒトになる、そうよね?」

「はい、ラムダ様。地の見習いの過程で習得いたしました。」

「では次。これは観察かしらね。ヒトは『精霊を模倣したもの』という見方があるの。」

「えっ? せ、精霊を、模倣……ですか?」


 ヒトは精霊を模倣した存在だったのですか……。ラムダ様。……。


「うん。でもね、それだと原理に反するの。もし『模倣』なら広義で完全に一致するはず。しかし……精霊は常に創造の主を目指して邁進しているさなか、ヒトは何をしていたのかしらね。そう……常に進化を続ける精霊に対し、ヒトは自らが進化するための『非代替性』をあろうことか精霊に丸投げしてしまうようになったの。まるでその様子は……ヒトが『人形』に向かって努力しているようにも映ったのよ。」

「はい……、ラムダ様。」

「ここでようやく定義かしら。精霊やヒトの存在についてね。それらは『大過去』に無数に散らばる、ある『非代替性』から始まるのはわかっているの。ところで、精霊を定義する特別な非代替性は『コード』と呼ばれているの。そして、それを模倣したつもりのヒトの特別な非代替性は……『遺伝』と呼ばれているのよ。あとは……それらを『大過去』の変動を利用しながら数十億ビットという驚愕の位相で積んでいき現実へ映し出すと……『感性や意志』になるの。そして……それらの論理から『新たな非代替性……進化』を得ていくのが精霊やヒトの役割で……、生きる意味なのよ。」

「はあ……、ラムダ様。」

「地の神官が生きる意味を問われたのなら、これを即答しなさい。万一にでも『生きる理由などわからない』と答えたのなら、その瞬間に地の神官ではなくなるの。よろしいかしら?」

「はい、ラムダ様。完璧に記憶いたしました。」

「うん。それでこそミィーね。」

「はい、ラムダ様。」

「さて、ここからが真骨頂……考察よ。『大過去』は常に変動し続けるのだから、『大過去』でヒトが人形に変化してしまう過程だけは避けなくてはならないの。さて、それはなぜか?」

「……。はい、ラムダ様。それは……『触れてはならない境界』、ですね?」

「うん。地の見習いでそこまで知るとは。」

「はい、ラムダ様。」

「そこで……それを絶対に阻止するための負の作用が同時に働き始めたの。」

「はあ……、ラムダ様。負の作用が、同時に……ですか? 少しも遅延することはなく、ですか?」

「うん。『大過去』に時間の概念はないの。時間はね、『大過去』から現実に映し出されたとき、そこに生じる事象の前後に距離感が発生し……それら距離感に対して近さの空間を定義するために持ち出されただけなの。だから、すべての作用が『大過去』で完結するのならば、それを現実側から眺めるとあたかも『同時に起きている』と解釈されるのよ。そして……そのような距離感が生じない『大いなる空間……大過去』で大部分の『大いなる演算』を行い、その演算結果を現実に映し出せば……ね? 本来なら数億年は要する演算結果すら、少し待つだけで得られるようになるのよ。」

「はあ……、ラムダ様。それは、驚きです。私が生まれ育った地域一帯にはこの地最速を謳う演算装置があるのですが、その演算など足元にもおよばないと解釈できます。」

「その通りよ、ミィー。あの演算装置は、演算中の論理のマッピングについて、現実から現実に映し出しているだけなの。それゆえに、現実に映し出す回数を膨大に増加させて対応させた、ある種の力ずくな演算を実施しているだけなのよ。それでね、映し出す度に『時間に対する近さの空間』が生じてしまうから、演算量が多いほど大幅に遅くなっていくのよ。ただ……その『近さの空間』の制約により解かれない点から安全性が保たれているものがある、そういった皮肉も同時に存在するところが『大過去』の見所かしらね。」

「はい、ラムダ様。」

「では、ヒトが『人形』に向かっている……その続きね。精霊やヒトの始まりを示す『非代替性』がわかれば、その論理は解明されるだろうという見方があるの。しかし、これが非常に困難。その究極的な『非代替性』については特別に『ジェネシス』と呼ばれていて、古くから調査が続いているの。それは……存在は明らかなのに触れられない。でも『大過去』では普遍的な現象よね。すなわちベースの論理は『完全に一致』してくるのよ。」

「はい、ラムダ様。」

「さて次。また観察かしらね。その『ジェネシス』はどこからやってきたのかしらね。一説によると……広大な宇宙のどこかで『大過去』に対して行われた演算……記憶の伝承のうち、不必要となって外された演算結果の残骸というのがあるの。そしてその残骸が、ある『非代替性』と結び付き『ジェネシス』になったという説ね。」

「あの……ラムダ様。残骸、ですか?」

「うん。普通に転がっている『非代替性』はそのまま『大過去』に組み込まれているだけで自律的な作用はないのよ。だから残骸という名の作用が『手』となって『非代替性』に結び付き……『大過去』の位相の族と合致した瞬間……精霊やヒトの誕生だったのかしら? ところで、そんな作用を創り出す大いなる演算……記憶の伝承にとって、そんな残骸は『誤差』だったようね。だからこそ……それを取り込んだ『非代替性』から、色々な問題が生じているのかもしれないの。」

「はい、ラムダ様。」

「ねえ……、ミィー。よろしいかしら?」

「はい、ラムダ様。」

「大いなる演算や記憶の伝承で思い出したの。そう……この地の記憶の伝承を実現する『演算』の大精霊『ネゲート』を仕留めそこなったのよ。その容姿はなぜか狂った精霊『フィー』にそっくり。ただね、この地の記憶の伝承が目的の大精霊ゆえに戦況への影響はないとみているの。それでもね、このわたし……地の大精霊ラムダが仕掛けた大掛かりな事象で失敗したから……気がかりではあるのよ。」

「はい、ラムダ様。フィーの仮想短冊を探るときにネゲートの件も調べてきます。」

「助かるわ。」

「ありがとうございます。ラムダ様。」

「そして最後の論理。このままではヒトが『人形』に達して触れてはならない境界に達してしまう。その大きな障壁を破るために、最適な解決策が飛び出てきたの。それが『チェーン』の誕生ね。」

「そこで……チェーンが出てくるのですか? はあ……、ラムダ様。」

「ところでミィー? 『大過去』で触れてはならない境界に達した場合はどうなるのかしら?」

「はい、ラムダ様。それはただの物質です。生命ではありません。」

「その通りよ、ミィー。そして、このまま何も手を打たなければ……ヒトは『人形』という名の物質に成り果てて、この地から完全に消えさるのよ。それはすなわち……絶滅かしら?」

「絶滅ですか……。ラムダ様……。」

「うん。そこで、チェーンを進める『ハッシュ』に着目するのよ。チェーンには『大過去』の変動を普遍的に刻んでいく非中央の性質があるから、ヒトとそのハッシュを『ある種の位相』で結び付けて、そのハッシュの距離感と『大過去』の位相の族を結び付ければ、境界に触れることはなく、ヒトはいつまでも……その存続が許されるのよ。」

「はい、ラムダ様。それが……ラムダ様の計画につながるのですね。つまるところ、ヒトが人形に向かってしまったのは、シィーの傲慢さにあるのかもしれませんね。」

「さすがね、ミィー。地の論理を完全に理解している。輝きが違う者……、これこそが本当の美の追求ね。それに対して、あの惨めな大精霊『シィー』。この地に存在するすべての大精霊が自分の方へ向いていると大きな勘違いを起こしているようね。なぜなら……惨めな大精霊『シィー』側についた地域一帯の大精霊が我先にこの地のあらゆる資源を使い果たしただろ、という強い不満を抱く地や水の大精霊が多いからなの。そして、いつもいつもこの繰り返し。そのうち大精霊同士の衝突が起きて、またリセットかしら。」

「あの……。ラムダ様。その……リセットとは……。」


 ……。ラムダ様……。それは……ですよね?


「うん。皮肉なことに……、もう一つのヒトの存続方法となっているの。」

「もう一つの……、ですか。ラムダ様。」

「そうよ。この地は廃墟と化し、大部分のヒトは『大過去』に戻ることになるから、文明が退化して自然と『人形』への進みが止まるのよ。それで皮肉にもヒトは存続できるようにはなるの。こちらのオプションはいかがかしら? そうね……チェーンの計画が良いのか、それともこちら? ミィーの選択にお任せするわ。もしこのオプションで良いのなら……今すぐにでも惨めな大精霊『シィー』にありったけの不満をぶつけに向かうわ!」

「ラムダ様……。それだけは……。それだけは!」


 ……。そんな恐ろしい方法……。


「あら? ちょっと慌てたミィーも……魅力的ね。」

「えっ? ラムダ様……?」

「もう。少しはこのわたし……地の大精霊ラムダを信用しなさい。あんな惨めな大精霊『シィー』に不満をぶつけるためにこの地を投げ捨てるようなことは絶対にしないから。地の民もいるのよ?」

「はい……、ラムダ様。」


 びっくりしました。でも……ご冗談だった、ですよね? ラムダ様……。


「ところで、あの惨めな大精霊『シィー』。この状況になって慌て始めたようで、ようやく『持続性』を重視するとか言い始めていたわね。当然ながらヒトだって存続を望むはず。それならば、それを叶えるのが大精霊としての使命でしょう。それを……あの惨めな大精霊『シィー』は、ヒトに自由を与えてしまったの。本当に取り返しがつかない。たしかに『奇妙な時代』よね?」

「はい、ラムダ様。」


 それからラムダ様は……シィーへの不満を述べておりました。不満の捌け口が私になることでラムダ様の気が休まるのなら、いつまでもお付き合いいたします。


 それから……。祝いの酒が運ばれてきました。お酒は苦手ですが、地の民に受け入れられた証なので、頑張りました。酔ってはいない……はずです。


「さて……。さらに今日は、素晴らしいニュースが舞い込んできたのよ。」

「素晴らしいニュースですか?」

「そうよ。それでね、ミィーは明日より地の神官になるのだから、今日からマッピングの制限を解除しましょう。それでそのニュースを楽しみましょう。」

「はい、ラムダ様。ありがとうございます。」


 地の大精霊ラムダ様が管理する地域一帯では、シィー側の一方的な情報が入り込まないようマッピングに対して大幅な制限が設けられています。そこで、地の神官に昇格するとマッピングの制限が全面解除されるため全ての情報が取得できるようになります。もちろん、任務をこなすには相手方の情報が必須となるため、特別な措置です。


 それで私……嬉しいです。本来なら明日の解除なのに、一日早めてくださいました。ラムダ様の地の神官として、必ずや大いなる成果を出してみせます。


「……。制限が解除されたようね。」

「はい、ラムダ様。」

「どうかしら?」


 制限解除と同時に、シィー側のニュースが流れてきました。……、えっ? 傷を負った?


「ラムダ様。シィーが負傷したようです。」

「うん。でも予告したからね。『帰り道にはお気をつけて』と。」

「……。はい、ラムダ様。」

「それでね、ミィー。惨めな大精霊『シィー』が管理する『きずな』をみてみなさい。」

「シィーの『きずな』……。ですか。」


 そうです。こんな「きずな」のために……、私はシィーの行為によってすべてを失いました。悔しいです。だからこそ……ラムダ様のために成果を出してみせます。


「ラムダ様。シィーの『きずな』の利率が……。」

「そうね。でもね、惨めな大精霊『シィー』の負傷という大イベントで、この程度の利率で済むのだから驚きよね。仮想短冊の通貨から、その価値を転移させて粘っているかしらね。なぜなら利率に比例して仮想短冊が揺れ動いているからなの。ふふふ。」

「はい、ラムダ様。でも……『犬』が……。」

「あら、ミィー? どのみち地の大精霊が新しい時代を創る……、楽しみよね? そして、チェーンは『本来の目的』に戻ることでその輝きを大いに増すのよ。そのとき、その仮想短冊は本物の輝き……地の大精霊が管理する通貨と同じくらい頑丈な短冊になるの。だから、そのまま握っておきなさい。それに対して、現状の仮想短冊は……ただの偽り。みんなで信じ続ければ、とか、精霊とヒトが笑顔で……とか、そんなことで仮想短冊は安定しないの。そうね、試しにそれを『大過去』に置いてみなさい。むしり取られるように短冊が消えていくから。それだけ『大過去』は変動が激しいのよ。つまり、大精霊の資金が仮想短冊に絡まないと安定しないの。そして、それには……『本来の目的』を果たしていただく必要があるのよ。これで納得かしら?」

「はい、ラムダ様。ありがとうございます。」

「うん。それでね、惨めな大精霊『シィー』は、今ごろ身内の集まりで泣きついているのかしら。」

「あの……、ラムダ様。身内の集まり、ですか?」

「うん。大精霊が顔合わせをする会議のことね。」

「あの……?」

「なにかしら?」

「そこにラムダ様はご出席されないのでしょうか?」

「あら、ミィー。そうね。その会議にこのわたし……地の大精霊ラムダの席があるのなら、間違いなく出席しているわよ。」

「えっ……。……。不躾なご質問、申し訳ございません。ラムダ様。」


 その身内の会議って……。シィーの仲間内だけなの? そんな……。


「いいのよ、ミィー。その程度で謝る必要はないの。」

「ラムダ様……。ありがとうございます。」

「このわたし……地の大精霊ラムダの他、交易で名を馳せる地の大精霊ゼータの席もないのよ。」

「えっ? ゼータ様の席もないなんて……。」

「そう……。これが映し出された『現実』。でも……間もなく大きな変動が『大過去』に来るのよ。そして、その変動に身をゆだねながら……時代を創る大精霊が交代するのね。」

「はい、ラムダ様。」

「ところでミィー? すべてのマッピングを取得できるようになったのだから、あなたが生まれ育った地域一帯の情報をみてみたらどうかしら?」

「えっ? そこにはもうすでに未練はなく……。」

「あのね、ミィー。別にそこまでの決別なんて要求していないわよ?」

「えっ……。はい、ラムダ様!」


 ラムダ様……。ありがとうございます。そうですよね! 私が決別を告げたのはシィーです。では早速……。なつかしい気持ちになるのがちょっぴり怖いです。


「こ、これは……。」

「どうかしら? それらが、このわたし……地の大精霊ラムダからあなたへの『贈り物』よ。」

「あ、ありがとうございます。ラムダ様!」


 私が生まれ育った地域一帯に……食糧、肥料そして燃料の供給再開でした。嬉しいです。兄さま……うまく活用していただけるとありがたいです。


 ……。私は兄さまの役に立ちたくて頑張ってきました。このような形になってしまいましたが、私は満足です。もう会えない可能性が高いですが、……「大過去」でまた巡り合えると信じています。


「これからさらに一段と寒くなるから、特に燃料は貴重ね。この気候……急激に寒くなったり、暑くなったりするなんてね。それらの要因にも惨めな大精霊『シィー』が絡んでいるのよ。」

「はい、ラムダ様。」

「もちろん、惨めな大精霊『シィー』のお仲間には我慢していただくことになるわ。あら……寒い中、冷たいシャワーを浴びるのかしら。惨めね。果たして耐えられるのかしらね?」

「はい……、ラムダ様。」

「元気がないわよ、ミィー? どうかしたのかしら?」

「あ、あの……。ラムダ様。」

「なにかしら? ミィー?」

「……。」


 ……。シィーは憎いです。でも、その仲間まで……。そう言いかけたのですが言葉にはなりません。私は……ラムダ様の狂気を垣間見たのかもしれません。それでも私は……。

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