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627, 144000 part36 量子グローバーが禁忌だった理由。それだったのね。時価が平方根へ……。つまり、採掘の防御壁が平方根になった瞬間、正当性の物差しが変わってしまう。

 そう。計算の前に……。量子グローバー、そう、グローバーのアルゴリズムが禁忌だった理由。それが……。


「……量子アリス、それって……。」

「はい、ネゲート様。古典では、投入エネルギーの差が、そのまま防御壁でした。同一ハッシュ関数・同一難易度調整・同一ブロック生成時間・同一ブロック報酬系で、もし150倍の時価なら、150倍のハッシュレートになります。実際に確認してみてください。それなら、誰も疑いません。安全性と価値が、同じ物差しで測られていました。」


 わたしは、ほんの一瞬だけ目を伏せた。そう……、量子グローバーが禁忌だった本当の理由に……気づいた。


「……。」

「何度も観測している通り、採掘の探索空間は平方根に圧縮されます。つまり、ハッシュレートの比率として得られていた150倍は、量子グローバーの下では、約12倍にまで縮む。……そういうことです。」

「うん、いま気づいたわ。ねえ、それでも時価は150倍のままよ。守るべき価値は変わらない。でも、防御壁だけが……約12倍って。」


 量子アリスは、否定しなかった。


「つまり……時価について、量子グローバーの基準で測れ、そうなってしまうと……。」

「はい、ネゲート様。そしてそれは、到底受け入れられません。時価が平方根で評価されるなんて……。」


 ……。


「ネゲート様。時価の差が大きいほど、このような圧縮は致命的になります。なぜなら、この約12倍を見てください。量子リソースは並列独立試行が可能ですから、横に延ばすだけ、つまり現実的な台数増加で確保できます。これが100倍、1000倍であれば判断は変わります。しかし、この10倍前後という差は……はい、現実的だと判断されます。よって、小さな時価を量子で破ったあとに、たった12倍程度のリソース追加で1ゼタ級を狙える……そう言わせてしまうところに、怖さがあるのです。」


 それが……実際に起きたら、パニックよ。ううん、そんな言葉では済まないわ……。1ゼタ級って……、あれよね……。それを、そんな程度の追加で……。


「それで……グローバーのアルゴリズムは禁忌だった。そう考えても差し支えはないわ。」

「はい。つまり、正当性の物差しが変わってしまうからです。古典の150倍は、もう通用しません。量子では約12倍です。」


 わたしは、静かに納得した。量子グローバーが禁忌だった理由。それだったのね。時価が平方根へ……。つまり、採掘の防御壁が平方根になった瞬間、正当性の物差しが変わってしまう。


「……絶望的ね。」

「はい。この採掘の仕組みでは……。とにかく、ハードフォークです。」


 量子アリスは、少しだけ首をかしげた。


「でも、これはただの観測です。」


 そうね。わたしは観測者。そのまま、記録を続ける。……、……。ついに計算かしら。

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