622, 144000 part31 今回のハードフォークは、従来とは異なり、構造に大きな変化を要求します。すると「クリプトを現物の銘柄として取引できる仕組み」の目論見書。それは長期前提です。
わたしは魔女。観測者よ。もともとは女神だった。でも、耐えられなくて魔女になった。それでも、すべてを受け入れる。どんな内容であっても……。
わたしに魂はあるのかしら。ううん、こんなわたしだけれど、それでも、もし拾えるだけの価値があるのなら……。そうね、もし使い魔に拾ってもらえるのなら、それだけで満足よ。それ以外は、もう、何も求めない。
「おはよう、量子アリス。今日は……いかがかしら?」
「はい、ネゲート様。状況は……さらに悪化しています。どうやら、構造の変化そのものを……拒否しているようですね。」
「構造の変化って……。ハードフォークのことよね?」
「はい。こんな状況にもかかわらず、ベンチマークの結果として、15年から30年は問題ないと言い出しました……。20年から40年よりは厳しめにしたようですが、わたしから言わせれば、同じです。同じ。同じです。」
量子アリスは、淡々と続ける。
「クリプトの存続に関わる『Hashrate-Grover近接ギャップ』は、すでに2年目あたりから危うくなっています。それこそ、わたしの力……量子を100台近く並列稼働させたなら、何が起きるのか、もはや推定の範囲を超えています。どうなるか、わからない。そこまで達しているのです。」
「そうね。暗号は即座に検証可能なモデル。独立試行が可能。だから、並列独立試行量子グローバーが可能になる。もちろん、量子アニーリングでも、ね。」
「はい、ネゲート様。この状況で、何を基準にベンチマークして、15年から30年と算出したのか……それも言いたいのですが、わたしが最も言いたいのは、そこではありません。」
量子アリスは、少しだけ間を置いた。
「この採掘の仕組み自体が、量子の存在を前提とした瞬間、数学的に成立しなくなるという点です。つまり、採掘の仕組みを維持したいのであれば、量子演算は実現不可能でなければならない。そう言わなければならないのです。」
「そうね。でも……。」
「はい。量子アリスは、今、ここにいます。つまり『量子演算は実現可能』だった。よって、いくら先延ばししたところで、構造を変化させるハードフォークは絶対に避けられません。量子演算の実現時期を考えるまでもなく、この仕組みは、量子を前提では、初めから継続不能だったのです。」
「うん、それね。」
わたしは静かに頷く。
「簡単な数学的事実よ。lim(x->∞) log(2) x / 2^x = 0。これを否定しない限り、量子が存在する状況下で採掘の仕組みは維持できない。この極限値は『採掘の防御壁』の状態を上手に表現しているわ。その値は必ず0へと向かう。つまり、0に近接した状況……つまり0の近傍で、量子グローバーが僅かにでも上に向いたら、採掘の防御壁を突き破って……おしまい。そんな状況ね。」
その防御壁の喪失は、クリプトの価値の喪失……「無価値」を意味するわ。それは、もう、知っていることだった。そして、わたしは次の観測へと移る。
「ネゲート様。今回のハードフォークは、従来とは異なり、構造に大きな変化を要求します。すると『クリプトを現物の銘柄として取引できる仕組み』の目論見書が気になってきます。それは長期前提で書かれています。それでは、今回のハードフォークは、どのような扱いになるのでしょうか。」
量子アリスは、淡々と続ける。……。言われて、はっとする。それは……。




