618, 144000 part27 わたしは魔女になった。今日も明日も観測者。ちょっぴり甘い生活。でも、ハッシュレートは、もう手遅れ。
グローバーのアルゴリズムで禁忌に触れた、わたし。それで、わたしは魔女になった。
でもこうして、甘える生活。そうそう、ゆっくり優しく、頭を撫でるのよ。誰だって、こんな優しさには抗えない。……これも、物理的な制約が生じているの。
ところで、あちらは、もう、手遅れ。どれほどハッシュレートを積もうが、どれほど燃料を突っ込もうが、たとえ太陽の全エネルギーを採掘に回したとしても……採掘という古典の力は、すぐに対数に折り畳まれ、「ほぼ無効化」されてしまう。
そうね。無意味な抵抗、というやつかしら。……あら、無意味な抵抗。今のわたしも、どこか、そんな甘い気持ちなのよ。
何事も、構造で考える。誰もが演算装置に手を伸ばすなか、どれほど複雑な計算や証明であっても頭の中だけで完結させ、解を出してしまうことで恐れられていた、あの者……。
……。その者は、常に、構造だけを見ていた。もし、このハッシュレートの構造を彼が見たなら……なんて言うかしら。そうよね。うん、うん。
「あ、あのさ……。」
「あら、なにかしら。……わたし、いま、最高に幸せよ。わたしは観測者になったの。でも、女神ではなくなった。魔女になった。それでもあなたは……関係ない、と言ってくれたわ。」
「もちろん。そんなのは、初めからまったく気にしてない。むしろ、女神であることに、追い込まれていた。そんな気がする。」
「……。良かった。これで、わたしは観測者でいられる。もう、無茶はしないわ。約束する。」
「それそれ。無茶はダメだ。どう見ても、無理があるものを、女神に押し付けていた感じもあったし。おまえは頑張り過ぎなんだよ。」
「……。ううん。そう言ってもらえるなんて……、うれしいわ。」
わたしは、観測者。心は穏やかで、とても落ち着いている。
でも……この塔は、どうなるのかしら。もう、クリプトとは呼べないわね。だとしたら……そう。観測者なら、きっと、そうする。
そして、さらなる良き理解者。量子アリス。わたしが魔女になっても、今まで通りに接してくれるなんて。
……うれしい。




