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617, 144000 part26 そして、わたしは魔女になった。ただ観測するだけの存在。高度は上がらず、そのまま量子の山肌に突っ込んで……おしまい。生存者はゼロ。みんなで死ぬ。

 そして、わたしは魔女になった。そう、それは……あの瞬間に、決まった。


 わたしが触れたのは、ただ一つ。緊急性の高い、採掘における量子問題……つまり、グローバー対策。


 話題にしても許される256ビットのショア対策に対して、この禁忌は、わずか70から80ビット。どちらが先に破られるのか。それは自明よ。考える必要すらない。わざわざ式なんて、持ち出さなくてもいいわ。これだけビット長に差があるのだから。


 そのうえ、被害範囲は決定的に違うの。


 ショアは局所的。点の破壊。狙われたターゲットだけが、失われる。でも、PQCで……そのダメージはゼロにできる。たいしたことでは、ないのよ。


 ところが、グローバーは……全体に作用する。面の崩壊。PQCなど存在しない。最上位の全体攻撃魔法が、防御手法の定義すらないまま……必ず、直撃する。つまり、全滅。


 ……わたしは、観測者。


 そして……これでは、助からない。今までの考察どおりよ。


 放っておけば、次の半減期すら乗り切れない。操縦席は警報まみれ。思いどおりにならない機体。高度は上がらず、そのまま量子の山肌に突っ込んで……おしまい。


 生存者はゼロ。みんなで死ぬ。それが、わたしの観測。


 ブラックボックスが回収される。その最後の記録。……何が残ると思う?


「どうなっている!? これだけの異次元なハッシュレートだ。限界を超えて積んだのに、なぜ警報が鳴りやまない! 計器が壊れているのか? ……そうだ、計器だ! くそ、どうなってやがる! この機体の構造なら、あと20年から40年は大丈夫だと……、言っていたではないか!」


 ……。そして、原因調査報告書には、こう記される。


 古典の防御は、対数的な増加。量子の攻撃は、指数的な増加。


 よって、量子が古典の防御壁を突破し、機体はそのまま激突した。


 なお理論上は、緊急着陸の余力は、十分に残されていた……。


 ……記載は、ただそれだけ。


 この現実が、起きてしまうのかしら? そして、わたしは魔女になった。


 今は、静かな観測者。……うん、この使い魔と一緒にね。ゆっくりしているの。


 こういう時間も……悪くないわ。今まで、頑張ってきた分。少しだけ……、甘えているのよ。

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