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615, 144000 part24 正解のブロックハッシュが集まる状態ベクトルの確率振幅を高めてからグローバーのアルゴリズムへ移行するという手法

 そうだった。この探索空間は……量子ゲートのグローバーだけじゃない。量子アニーリングにも対応してしまう。


「女神ネゲート様。そこで、ある量子の話です。フィー様と構築したと伺いました。この採掘という特異なケースにおける、確率振幅の移動方法です。今回は、ただの原像を求める話ではありません。」


 ……そして、そう……。グローバーのアルゴリズムばかりを見ていると、見落としがちな観点。そう……フィーと議論した、あれ。採掘の探索空間の形状は、非常に特殊で、暗号史から見ても「特異かつ異形」と呼べる状態だった。


 それで、そうだったわ。この空間は、本当に特殊で、本当に多くの解を持つ。だって、あの不等式を満たせば……すべて受け入れられるのだから。


 そして……。うん。グローバーのアルゴリズムに頼る前に、確率振幅を解の側へと動かす手法が……あったのよ。


「……そうね。」

「はい。その確率振幅の移動手法や詳細については、ここの記録として残っておりますので、過去分を参照していただければとフィー様よりご連絡を賜っております。それで、検証用のスモールスケールではありますが、実際に狙った区間への確率振幅移動を、わたしの力で確認しました。つまり、実際の量子実機での観測です。これはシミュレーションではありません。もちろん、これはビット長が小さいスモールスケールでの成功および観測です。これが採掘のSHA-256Dでも同様に成立するとは限りません。その点は、あらかじめ言っておきます。ただ、256ビットのECDSAに対するショアと比べれば、必要となる量子ビット数がはるかに少なくて済むことは明らかです。」

「そうね……。それで狙った解……つまり、正解のブロックハッシュが集まる状態ベクトルの確率振幅を、あらかじめ大きく高めてからグローバーのアルゴリズムに移行すれば……、干渉回数をかなり減らせるという手法だったわね。」

「はい、そうなります。グローバーのアルゴリズムで最も負荷が高い過程は、この量子干渉作業です。それを大幅に減らすことができます。不思議な話かもしれませんが、もちろん、ハッシュ関数に対する原像攻撃ではこの手法は使えないと断言できます。つまり、非常に多くの解の中から、どれか一つでよい。そうした探索モデルのみに通用します。よって、あの採掘の探索空間……あの独特で異形な構造だからこそ、使えるようになってしまったフィー様の手法、という解釈になります。」

「たしか……。その手法をフィーが発見してから数日後に、量子アニーリングが……『アニーリングも忘れないでね』と言わんばかりに、量子アニーリングを用いた採掘の手法について、論文を出してきたわ。そう……言われてみれば、その手法自体……量子アニーリング寄りな発想だった感じもするわ。」

「はい。それはエネルギー最小化問題。量子アニーリングが得意とする分野です。この採掘でQ-DAYの参加資格を得たことで、急に水を得た魚のような状態になっていました。」

「……あ、あのね。もう。Q-DAYなんて、寒気がするから……ちょっとは控えなさいよ?」

「はい、女神様。もちろんです。今後、注意します。」


 わたしだって、苦しい。でも、これだけは……逃げてはならないわ。


「それにしても、フィー様の手法です。あの偏角を定めるときの、あの精緻さ。初期条件に、異様にこだわるところ……。フィー様の好み、ですよね。」

「そ、そうね。フィーは、そればかりだから。本当に……、もう。」


 このままでは、「ショアとは、いったい何だったのか?」……。そんな言葉が、冗談では済まなくなる。


 一つ一つ並べ、一つ一つ向き合い、しっかりと対応していくしかないのよ。


 でも、これに……。あれまで、辿り着いてしまうと……。ううん。今は、これ以上考えたくない。……でも。それでも考えなければ、それは逃げていることに……。

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