613, 144000 part22 並列独立試行量子グローバーが、最初に、ブロックチェーンに牙をむきます。PQCを入れてショア対策だけした量子耐性なんかで遊んでいる場合ではないのです。
どうしたら……。そのとき、わたしは量子アリスと一緒に、もう一度、現実を見ることにしたのよ。
逃げるためではない。希望を探すためでもない。ただ、事実を、事実として受け取るために。
「女神ネゲート様。採掘の探索空間を問題として解くのは『並列独立試行量子グローバー』です。」
「……。それは聞き慣れない表現ね。でも、それ……クリプトの塔では即座に禁忌にされそうな演算装置だわ……。」
わたしがそう言うと、量子アリスは少しだけ首を傾けた。
「そうですか。わたしはこれを……『グローバー・ドライブ』と呼んでいます。」
……、そ、それって。……。冗談、それとも、冗談の形を借りた宣告なのか。一瞬、判断がつかなかった。
「そ、そうね……。」
声が、わずかに遅れた。
「……えっとですね、この呼び名はともかくとして、この並列独立試行量子グローバーが、最初に、ブロックチェーンに牙をむきます。それだけは確定しています。」
その量子アリスの声は、淡々としていた。感情がないわけではない。ただ、揺れていない。
「相手の状態、標的、そして目的。すべてが、すでに揃っています。よって、そこから先は……。」
……、そこで間が置かれる。
「現実的な方法を、早急に出すべき段階に来ています。PQCを入れてショア対策だけした量子耐性なんかで遊んでいる場合ではないのです。」
「おい、女神よ。本当に大丈夫なのか?」
……そう。わかっていた。けれど、わかっていたからこそ胸の奥が静かに重くなる。これは「いつか起きるかもしれない話」ではない。「どう守るか」「どこが最初に崩れるか」「どの時間軸で、現実になるか」……、そこまで、話が進んでしまっている。
……ちょっとした冗談で、空気を緩めてくれたのよね。グローバー・ドライブ、なんて。
さて。ここから先はどうなるのか。いいえ、どうするのか。いよいよ、具体的な計算に入るということね。わたしは深く息を吸って、気を引き締め直す。
空想でもない。これは、はっきりと映し出された現実との対面よ。逃げ場のない場所で、ようやく、スタートラインに立った……そんな感覚。




