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57, ところで、精霊って、なんだ?

 あちゃ。この流れ……完全にネゲートの計算高い策略に乗せられていますね。きっとこの後に、なにかあるのだろう。こいつって案外、そういう一面も……って当たり前か。もともと「演算」と「予知」の精霊ですからね。そして、あの「カネの問題」を平然と割り切って楽々とこなしていたのですから、この程度は……、はじめから仕組んでいたのかもしれませんね。


 ああ、そうだ。そんな悠長に構えてはいられません。フィーさんが……、このタイミングで、だと……? さて、どうしましょうか。とりあえず、返事はします。ああ……はい。


「フィーさん……。」

「はい……?」


 おっと。相手はフィーさんです……。普通の返事では通じません。どうしようかな。……。


 ……。ところで、フィーさんは「精霊」で、ネゲートとシィーさんは「大精霊」だったな。あれれ? 俺って、こんなときにさ、何を考え始めているのだ。でも、考えずにはいられない。


 ……、精霊ってなんだ? ……。フィーさんにこの地に呼ばれてしまって以来、はじめてかな。なぜ、このタイミングで、こんな事に……思考を支配され始めているんだ? それでも、考えずにはいられない。


 まずは具体例だ。難解なぶ厚い書物をいつも抱えながら「甘いもの」を追い求め続けるのが……精霊? いや、こんなのは十分でも必要でもないな。例えばネゲートにとって書物など……無用の長物だろう。となると、なんだ?


 まさか……。あの「売り売り」を担当するのが精霊? でも、これは明らかに違う。まあ、必要くらいなら満たすかな。なぜなら、その程度で「精霊」と呼ぶように区別する必要はない。たしか「天の使い」だっけ? あんな良心の欠片のない奴らも、平然と売りまくり、だったはずですから。


 ……。わからない。おっと……もちろん、「都の支配者」「あの神々」や「魔の者」については、なんとなくわかる。この地域一帯を統治する者たち……かな。これで、合っているとは思います。


 あれ? いま……、俺、地域一帯って考えましたよね? 地域一帯? 違和感を覚える表現なんだよな、これ。なんだろう。これって、……、だめだ。思い出せない。


 まあ、いい。元に戻そう。うーん。区別するからには「特別な役割」を担っているはずです。そこから考えていくと……フィーさんが「頭の中をみられているようで」と嫌がった、あれだ。この……脳裏に思い浮かべるだけで利用可能な「マッピング……外付けの情報処理のような装置」と、「精霊」に対して、何か特別な「結び付き」があるような……、そんな気がしてきました。


 たしか、そうだ……。このマッピングが利用可能になった者は、もれなく「ハッシュ」を捧げる行為が必須になるらしいね……。うーん、この「ハッシュ」自体がよくわからないため、この「捧げる」という行為がどのような過程で何を意味するのか、まったくもって掴めません。ただ、何となくですが……よくないというか、不気味な感覚はあります。そもそも……「誰」にハッシュを捧げるのでしょうか? うーん、謎ですね。


 思考がぐるっと回ってゼロになってきたところで……、さて、フィーさんに何の言葉を返そうか。


 そうだ。あの日以来……。まずは、俺の気持ちを正直に伝えていきます。


「フィーさん。この横にいる大精霊様に『犬』を狙われている情けない俺ですが……、本当に重要な場面……例えば、えっと……なんだ?」

「……。はい、なのです?」

「えっと、その……。」


 あれれ、重要な場面って? 何を言い出しているんだ……。その先が出てこない。えっ、なに?


「ちょっとね? やたらと時間をかけて考えて、たった……、それだけなの?」

「えっ?」


 あーあ、ネゲートが突っ込んできました。ややこしくなりそうです。


「ほら、ちょっと!」

「な、なに?」


 ネゲートのアドバイス……ではなく、こいつの愚痴を拾いに、耳を傾けます。


「フィーはね、なんというか……、今まで、自分を大切にしてきたことがないの。わかるかしら?」


 今までの行動をみていれば、なんで……そこまでするの? となりますから。納得です。


「それは、すごくわかる。」

「だったら、しっかりしなさいよ?」

「えっ?」


 なぜか急に、ネゲートが目を閉じ、深呼吸。それからしばらくして……。


「心の準備はよいかしら? 今からわたしが伝えることはね、とても言いにくく、真実に触れる内容になるから、一度のみ、伝えるからね。覚悟を決めて、その頭に入れなさいよ?」

「急に、なにさ?」

「この地における『精霊』について、本来の役割に関する重要な知識よ。それを知った上で、フィーを受け入れてあげてね。……、これだけは、あんたにしかできないから。そう……あの時、あのような他愛あふれる行動を実際に取れるような者は『少数の中の少数』だからね。」

「……。はい?」


 ネゲートは、時々、妙な事を口走ります。あの時って……。なんだろう。この俺が……? 他愛あふれる? まさか。


 ただね、精霊……の役割について? ついさきほどまで、俺が悩んでいた内容ではないか……。これは、偶然なのか?


「では、一度だけよ。『精霊』の本来の役割は、…………」


 ネゲートがその「肝心な部分」を言いかけた瞬間かな……、急なめまいと同時に……、意識がゆらゆらと……。あれ……。そして、フィーさんかな……? 何かを叫んでいるような気が……。……。

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