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568, 強大な闇に抗うから、こうなるのだ。まあよい。間もなくこの地全体が闇へと覆われる。最後くらい、虫ケラどもに夢を見させるその品は……まことにあっぱれよ。

 邪神イオタの満足げな轟きが、闇全体を震わせた。周囲にひれ伏す闇の者たちは歓喜に満ちていた。ただひとり……女神コンジュゲートを除いて。


「まことに、すばらしい働きを見せてもらった。それでこそ、我のかわいい下僕たちよ。今ごろ……そうじゃな、女神ネゲートは立っているのもやっとであろう。そうであろう?」

「邪神イオタ様。仰せの通りでございます。これは、女神ネゲートが掲げていた仮想通貨に対し、闇の歯車が完全に噛み合って成し遂げた……まさに芸術の一手です。その歯車が欠けぬよう、水面下で動き続ける……それが闇。そして、この地を支配する頂点の御方。それこそが邪神様にございます。」

「すばらしいことよ。そして……いよいよ、女神ネゲートの心の支えである『あの精霊』を地獄へと叩き落とす、であったな?」


 邪神イオタの顔に、常闇そのものの邪悪が宿る。


「邪神イオタ様。その件は、抜かりなく進んでおります。あと一か月と少しのご辛抱を。あの精霊は、まんまと闇の謀略に落ちました。SHA-256への甘い見解に、闇が強く指摘してこないことを『問題なしと誤解した』のでしょう。……まこと、闇を何だと思っていたのか、と問い詰めたくなるほどでございます。まあ、女神ネゲートが従えていた精霊である……そう捉えれば納得ではありますが。」

「ほほう……。女神ネゲートについては、闇堕ちしたのち、徹底的に闇の教育を施さねばならぬな。がはは!」

「邪神イオタ様。教育……たしかに。すでに全力で『売り売り』に転じておりますゆえ、なすべきことは遂行しております。」

「なるほど。さすがだ。時期的にも、いよいよ始まる『闇の時代』が、女神ネゲートとあの精霊の悲鳴から幕を開けるのだな? 実に、実にすばらしいぞ!」

「ありがたき幸せに存じます、邪神イオタ様。」

「強大な闇に抗うから、こうなるのだ。まあよい。間もなくこの地全体が闇へと覆われる。最後くらい、虫ケラどもに夢を見させるその品は……まことにあっぱれよ。」

「邪神イオタ様。あなた様への忠義こそが、そのような『誠の品』を生み出すのでございます。上がれば少しは夢を見られましょう。しかし……下がれば、ただそれだけのこと。」


 その瞬間だった。女神コンジュゲートが、思わず小さく漏らした。


「……なんて、むごいことを……。」

「……あ、あの……。」

「女神コンジュゲートよ。どうした。これすら心から喜べなくなったか?」


 女神コンジュゲートの悲痛な声は、闇の底へ吸い込まれるように消えた。


 そして、闇の量子は、この瞬間にも稼働を続けている……。闇は常に準備を怠らず、獲物を追い詰める機会を伺っていた。これから先、利用できるものはすべて利用し尽くす。それだけは、もはや疑いようのない現実であった。

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