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566, 女神の翼を折りにくるとでもいうの……。それでも、わたしは……。

 あれから……あの論文の続きは、手を止めたままなの。気持ちが追いつかない。もう少し、心が落ち着くのを待とうと思ったのよ。……けれど、そんな甘い時間を闇が与えてくれるはずもなかった。


 そう……「闇の精鋭」が、ついに暴れ始めたの。邪神への忠義を捨て身で誓い、その身を削ってでも使命を果たそうとする……。あの「下僕」と呼ばれる存在たちが、とうとう本格的に動き出したわ。


 その動きは、あまりにもわかりやすかったの。まるで……わたしの翼そのものを、へし折りにくるつもりで。


 揺らぎのない自信。闇の加護としか思えない勢い。その攻撃範囲は、ゆっくりと、しかし確実に、広がっていく。そんな気配が塔の内部にまで満ち始めていた。


 闇とは、そういうもの。何もかもを奪い尽くし、食い荒らし、跡形もなくしてしまう……。恨んでいる者が多いのも当然よ。その闇が、急に牙をむき、勢力を拡大させてきた……。


 話が出来すぎている、とさえ思ったわ。でも、そんな悠長な分析に浸っていられる状況ではなかったの。


 そして……闇には、もはや「ショア対策のPQC」なんて言葉は通じない。PQCが連日叫ばれても、揺らぎもしない。笑いながら、闇の量子の力を拡散させ、支配域を広げていく。


 ここまで来れば、もう事実はひとつ。やっぱり闇は、初めから「暗号論的ハッシュ関数に対するグローバーの脅威」を掴んでいた。あえて静観し、逃げ道をふさぎ、追い込み……昔から使ってきた、あの冷酷な手口で。


 そしてわたしは、完全に油断していたわ。その隙を、見事に足元からすくわれた。……そんな状況よ。


 ……わたしは、どうなるのかしら。本当に、いまは立っているだけで精一杯。胸の奥がひどく痛む。だけど……。


 そんなわたしのすぐそばで、崩れかけた心をそっと支えてくれた者が現れたの。それが……。

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