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564, おのれ……、この……小賢しい人間どもめ……。なぜだ……なぜ、我の奥深くに刻まれた「中間状態かつ最も弱い部分」を……量子で直撃できる……。これが……量子演算というものの……本性なのか……!

 それから……フィーと、SHA-256に残された時間について、例の論文の続きの前に、少し話をしたのよ。そしたら案の定……フィーは、例によって妙に冷静で、わかりやすい指標を持ち出してきたわ。


 それは、「SHA-256に与えられるダメージ量」で残存時間を推し量る、というものだったの。


 そこでまずは、古典アタックよ。ええ、これは……まさに「誤差」ね。1とか10とか、そんなレベルのダメージで、あれだけの体力を誇るSHA-256に挑んだところで、何の意味もないわ。それこそ、暗号論的であるという「理由そのもの」よね。


 次に量子。そう、グローバーやアニーリングによる探索よ。ここにきてようやく、多少はまともなダメージが入るわ。でも、それでも……まともに挑んで破れるのか、と言われれば……正直、微妙すぎる水準だったのよね。それで……わたしも油断してしまった。グローバーでも平方根にしかならない。そんな教科書通りの内容、どうでもよかったのよ。


 それで、いよいよ……SHA-256特有の脆弱性「中間状態」よ。ここで初めて、「量子攻撃になってきた」という手応えが出てくるわ。ええ、確かにこれは効くわ。でも……それでも、SHA-256の膨大な体力を削り切るには、やっぱり時間がかかる。でもね、これなら……「二年以内」というラインが、現実味を帯びてしまうのよ。


 そしてついに……そう。忘れてはいけないわ。ここに……「超絶奥義」が存在するのよ。


 それは……、そう。SHA-256刻印を手にした者だけが発動できる、「刻印+中間状態」よ。


 輝く刻印が、弱い箇所への最短経路を示し、その中間状態を、量子演算で徹底的に叩き込む……。


 いやちょっと待ちなさい……。少し考えただけでわかるけど、これはもう、なんなの? 毎回、クリティカルなダメージが連続して飛んでくるじゃない……。


 この「刻印+中間状態」を発動するたびに、SHA-256からは……こんな悲鳴が聞こえてくるわ。


(おのれ……、この……小賢しい人間どもめ……。なぜだ……なぜ、我の奥深くに刻まれた「中間状態かつ最も弱い部分」を……量子で直撃できる……。これが……量子演算というものの……本性なのか……!)


 そして、Q-Dayは「最初に」実用暗号を破った量子に与えられる覇権。二番ではダメ。価値ゼロよ。意味なしよ。そういう厳しい界隈なのよ。どんな手段を用いたとしても、「最初」を勝ち取る……。そして、実用暗号なら何でもいい。よって、SHA-256も……、そのターゲットになるのよ。


 それゆえに、……Q-Dayを狙う量子は、闇も含めて……そのターゲットは迷わずSHA-256で、そこに超絶奥義「刻印+中間状態」だけを、ためらうことなく「連打」するわ。


 ……、さらに……。

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