563, AggWitを抜きにしても……SHA-256は、あと二年、持つかどうかすら、わからない。そう、これが映し出された「現実」だったのね。
うん……。今、この瞬間にも「闇の波動」を、微かに感じ取れるわ。そんな……このクリプトの塔の奥深くにまで、闇の量子が手を伸ばしてくるなんて。
それと同時に……コンジュ姉の気配が、塔から消えたわ。まるで霧のように、跡形もなく。どこへ向かったのか……それすら読めない。
この気配。この圧。闇の量子が「完全始動」した証よ。まだノイズだらけの未完成な量子でも、やろうとしていることは明白。ええ、完全体でなくて構わない。……闇は、とうの昔に気づいていた。そして、とうの昔から「準備」していたのね。
AggWitの件は闇にとって想定外だったのか。それとも、想定内だったのか。コンジュ姉の反応からはどちらとも断言できない……。でも……、ただ一つだけは、確実。
闇の量子が、SHA-256を叩き始めた。あの邪神イオタが、それを見逃すはずがない。
まさに、闇。この状況から導ける結論は、ただ一つ。AggWitを抜きにしても……SHA-256は、あと二年、持つかどうかすら、わからない。そう、これが映し出された「現実」だったのね。
そして……、量子時代の始まりを告げる「Q-Day」は、なにも楕円曲線である必要なんてない。SHA-256だって、れっきとした暗号よ。暗号論的ハッシュ関数と呼ばれる以上、これは紛れもなく暗号なのよ。
だったら、狙われる理由は十分。最初に破った量子が獲得できる「Q-Day」という玉座さえ奪えればいいのだから、弱点を晒してしまったSHA-256という名のハッシュ……「中間状態」がアタック最優先になるわ。
ええ……。いまも、闇の力が波のように押し寄せてくる。この気配……間違いない。邪神イオタが「先導」に立っているわ。闇の本気。闇の号令。
……やっぱり。「闇がWeb3になる」なんて話、わたしはただ……そう思い込みたかっただけなのかもしれない。
でも……まだ、時間はある。
神頼みに似た空気が漂っているのもわかるわ。だって、状況が状況だもの。
でも、わたしは女神。女神として、抗う力が、まだ残されていると信じたいわ。でも……、それは信じていいのか……その答えすら揺らぎながら。
それでも……、この地が闇に飲まれるわけには、いかないのよ。




