562, わしは悲しいぞ……。邪神として、そして闇として。SHA-256の中間状態を量子で破りにいく。それでも抗うのなら止めはせぬ。これこそが、邪神と女神の争いになるのか?
凍てつく闇の底で、深宇宙すら沈黙するほどの静寂を帯びた量子ビットが、邪神イオタの「直々の命」を受け、淡々と稼働を開始していた。
狙う先はただひとつ……「SHA-256の中間状態」だ。
その一点……SHA-256を破るだけで、光も闇も、レッドステートもブルーステートも、すべての命運が揺らぎ落ちる。そういう戦いだった。
「ほほう……。そなたが信じるWeb3の連中は、この期に及んでも、まだ『ショアだ楕円曲線だ』と呪文のように唱えているようじゃな。まったく……愚かにもほどがある。SHA-256には『中間状態』という、あれほど露骨な弱点が存在するというのに、なぜ好き好んで楕円曲線など狙う必要があろうか。闇の長たるわしでさえ『666……獣の数字』だと震える、そのままの愚行じゃぞ?」
「邪神イオタ様……。それは……。」
その場には、深々と頭を垂れた女神コンジュゲートの姿があった。
「なぜ、この場に呼ばれたのか……、聡明なそなたなら、説明せずとも察しておるだろう?」
「邪神イオタ様……。これには明確な理由が……あるのです。」
「ほう。それなら申してみよ。」
女神コンジュゲートは言葉を選びながら、Web3によってレッドステートの『CBDCによる寡占』を防ぐ狙いを語った。つまり、Web3を使い、均衡を保とうとしたのだと。
「……それが、そなたの答えか?」
「はい……邪神イオタ様。」
「女神コンジュゲートよ。そなた……自分が闇だと自覚しておるのか? 闇ならば、基盤となるあの仕組み……ブロックチェーンが依存しすぎたSHA-256を、闇の力で破る……ただそれだけで良い。その瞬間、Q-Dayの到来でCBDCもろとも吹き飛ぶぞ。そして闇が復権する。それだけの話じゃろう?」
「そ、それは……。」
「闇なら迷わぬはずだ。違うのか!」
「……。」
「中間状態に刻まれた『SHA-256刻印』……。そこを狙わない理由など、どこにもない。さらに、この刻印の効果により『驚くほどの少ない量子ビット数』で済むことも、そなた自身が誰より理解しておろう。まさに、優秀なプラチナ触媒に匹敵するのが、この『SHA-256刻印』なのだ。何がショアだ。グローバーで破れば済む話なんだ。これは闇の絶対だ。」
「邪神イオタ様……。その……あまりにも、理由として……。士気への影響が、闇とはいえ……。」
「闇とはいえ、なんじゃ? 申せ、女神コンジュゲートよ。」
「そ、それは……。」
女神コンジュゲートはうつむき、言葉を失った。
「とにかくじゃ。わしは悲しいぞ……。邪神として、そして闇として。SHA-256の中間状態を量子で破りにいく。それでも抗うのなら止めはせぬ。これこそが、邪神と女神の争いになるのか?」
その沈黙の瞬間、闇の量子たちが震え、闇の空間が低くうなる。
(SHA-256刻印から、弱いビット反転率を徹底的に探し出せ。)
邪神イオタの命を忠実に実行する量子ビットが、中間状態の一点だけを、冷酷に、淡々と破壊し続けていた。




