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558, おお、つまり俺様が、その量子グローバーで薬屋を始めれば、莫大なビジネスチャンスを獲得できるという事だな?

 ……。こんな状況でも冷静に論文をまとめてくるのがフィーだったわ。さあ、長くなりそうな展開。しかも、いよいよ複雑になってきたわ。そして……。


「なんだ? 女神よ。」

「どうかしら? 楽勝なのよね?」

「おお、そうだ。つまりだな、その量子グローバーってやつに、何か大きな問題があるということだな?」


 ……。最も大事な部分を、確実に捉えていたわ。


「そうよ。特にこれは、ブロックチェーン特有の問題なの。鎖の部分に量子グローバーが強く作用してしまうからよ。」

「はい、なのです。そこが、グローバーに対する量子ビット耐性……すなわち耐量子を難しくしている要因なのです。」

「……まったく、そんなものが何の役に立つんだ? これだから闇は……。ひどい話だな。」

「そ、それは……少し事情が違うのです。このグローバーは『壊すための量子』ではなく、『探索するための量子』なのです。それは創薬……つまり新しい薬を発見するために使われているのです。」


 創薬。その言葉に、SegWitが瞬時に反応した。……カネの匂いに敏感なあの反応速度。間違いないわ……。


「つまり、創薬が可能だが、その……何とかを壊してしまうという事だな?」

「はい。そうなります。」

「その創薬とは、新しい薬……つまり、最も儲かる薬ってことだな?」

「はい。そうなのです。今までにない新薬が誕生すれば、治療の幅が大きく広がるのは確かなのです。」

「なんだと……。それは、それは……。おお、つまり俺様が、その量子グローバーで薬屋を始めれば、莫大なビジネスチャンスを獲得できるという事だな?」


 ……。それは冗談でもなく、本当に薬屋を始めそうで、これはこれで怖いわ。


「はい。それは確実なのです。そのため、皆が競い合っているのです。」

「当然だ。そんなものが目の前にあったとはな。よし、それは始めるぞ。」

「ちょ、ちょっと! 始めるって……!」


 えっ……、もう動くの? 早すぎるわよね……。でも、それは……。


「まったく、量子なんて闇の連中が遊んでいるだけのものかと思っていたが……そんな秘密があったとはな。だが、なぜ今になって初めて知るんだ? どうなっている?」

「はい。Web3では、どうしてもショアばかりが注目されて、なぜかこのグローバーは『隠され続けてきた』ようなのです。」

「……。そのショアなんかより、グローバーの方が仮想通貨にとってリスクが高いんだな?」

「はい、その通りなのです。このわたしの論文にもあるように、先に訪れるのはグローバーです。創薬という実用分野で活発に使われている上に、すでに量子エンジニアリングの標準機能に組み込まれており……そして実行難易度も低い。ショアよりも先に実用化されるのです。」


 ……。やっぱり知らなかったのね。そうよね、「グローバー」なんて単語は長く禁忌扱いされていたもの。


「けしからんな。カネが絡む話で、そんなことになっていたとはな。」

「はい。そこが問題なのです。本来なら、事前にグローバーのリスクにも焦点を当てて対策を講じるべきでした。ところが、つい最近になってようやく『計画を立てるべきだ』という社説が出たものの、焦点はまだショア、秘密鍵、離散対数だけで、グローバーには触れられていないのです。」


 ついに……ディールな SegWit までもが量子で動き始めた瞬間、それがこれなのね。ここで覇権を握れなければ、創薬の市場を失うわ。そのために量子アリスのような存在が現れていたのよね。わたしも一時期は量子に対して憎しみのような感情を抱いてしまったけれど……今はもう、そうじゃない。


 そして、量子グローバー前提の薬屋……本当に始めそうね。つまり、次は量子に加え「薬屋銘柄」ってことね。……ううん、今はAggWitをなんとかしないと。もう……。


 そして、耐量子。仮想通貨、Web3、ブロックチェーンにとって、これが最後の機会よ。


 もう、耐量子について、コミュニティ内で言い争っている場合じゃないわ! もう選択肢なんてないの。導入するしかないわ。そう、耐量子。量子耐性。それはPQCと、耐量子暗号論的ハッシュ関数よ!

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