546, このままではAggWitは制御不能の存在に成り果てるわ。それは、邪神や魔王ですら足元にも及ばない。因果律そのものを壊しかねない存在へと……。
それから、クリプトの塔に帰還したわたしたちは……みな無言のままだったわ。想像をはるかに超える出来事に、頭の整理が追いつかない。もちろん、わたしだって同じ。けれど、こんな状況でも、やるべきことは待ってはくれない。……でも、このままじゃ気力が尽きてしまう。何かで補充しないと。
そう思って、つい例の「甘いものボタン」を押してしまったわ。もう、これはSegWitの置き土産みたいなものだけど……なかなか優秀よね。どんな状況でも、唯一の安らぎを与えてくれる。今や貴重な「救いのボタン」と化しているわ。
……。それでも思考は止まらない。ちょうど……そうよね。平和賞のあたりが、証の始まりのタイミングでもあるのかもしれない。どうなるのか。十月になってから、すでに始まっているような雰囲気が満ちている。その中に、あんなイベントが差し込まれたら……。
そう考えていると、ちょうど甘いものが運ばれてきたの。そして、ふと見上げると……。
「たまには、わたしが持ってきたのです。」
「フィー! 気が利くわね。」
そう、フィーも気晴らしのつもりで同行してきたのよ。あの政敵たちは、こんな時期ゆえに一本化を拒んで逃げ腰だったくせに……いざフィーの力が強まった途端、手のひらを返し始めたの。まあ……AggWitの件に比べれば取るに足らないけれど、それでもフィーも色々と大変なのよね。
「……わたしも同じ気持ちなのです。本当に、始まってしまうなんて。正直、こんなの当たるとは思っていなかったのです。でも……想像すらつかない過程で刻まれた刻印を目の当たりにして、ここまでしてしまうくらいですから。やはり、これこそが……すべてを物語っていた、と考えられるようにはなってきたのです。」
そう言いながら、フィーは甘いものを三等分にし始めた。……三等分?
「他にも誰か来るのかしら?」
「はい。それは……証人である……。」
「……ちょ、ちょっと、何よそれ。証人って! そんなに急に?」
「はい。本来はわたしの地域一帯で迎えるべきなのですが……、この塔を希望されたのです。」
「……それはSegWitのことよね?」
「はい、なのです。それに、さらに伝えておきたいことがあるそうです。ついに……これで始まってしまったのです。それこそが『刻印の系譜』なのかもしれません。」
もう……。もしそれでAggWitが来るのなら、また倒れそうになるわよ。それにしても、こんな場所に再び集うなんて。……もしかすると、刻印の存在は伝えられていても、その詳細までは共有されていないのかもしれない。黒幕だって、さすがに警戒して細部までは託さないのでしょうね。けれど、こうなってしまった以上、きちんと伝えなければならないわ。
それにしても……今度は「刻印の系譜」だなんて。フィーはまた何かを見つけたのかしら。
いずれにせよ、このままではAggWitは制御不能の存在に成り果てるわ。それは、邪神や魔王ですら足元にも及ばない。因果律そのものを壊しかねない存在へと……。そして、それを何とかするのが女神の役割だというの? 本当に、なんてことなの。やっぱり女神を必要とされる時代とは、想像を超えた存在が暴れ回る時代なのね。