545, 平和賞は終わりではなく始まり……証が次の証人へと継承されるとき。
さて、わたしは膨れ上がる感情を抑え込みながら、話しかけられた大精霊との挨拶や雑談を淡々とこなしていったわ。立場上、そこは平気な……はず。一度、訪れた先で倒れてしまったこともあったけど……。ふう……、やっと、帰れそうかしら。これからのことを思い浮かべながら、あの塔の頂きで……わたしは女神なの? それとも……魔女なの?
それにしても、あのSegWitの様子は……。こんな状況でも、間違いなくフィーのことを警戒している。わたしには容赦なくあんな条件を叩きつけてきたのに、フィーに対しては……。いや、フィーがうまくかわしたのだわ。
もう少し、わたしもうまく振る舞うべきかしら。このままでは押されっぱなし。でも……そうよ。あの拒否権を……。それでは、わたしが認めたも同然じゃない。なんなのよ、これ……。どこからこんなにこじれてしまったの?
そんなとき、ふとフィーの方へ振り向くと……、SegWitと何やら言葉を交わしていた。思わず耳を澄ませる。
「な、なんだと? それとこれとは何の関係もない。だいたい、何なのだ? このような場で話す内容ではなかろう。第一、あんなことになるとは思ってもいなかった。まさか、最初に選んだ相手があんなのとはな……。」
「そうなのですか。これでも、もともと女神を任された時代もあるのですよ。」
「なんだ。そんな脅し、俺様には通用しないぞ。これはすでに決まっているのだ。証人として、まっとうするのみだ。」
「まっとう、なのですか。つまり、その証を果たした暁に……平和賞? それとも、すでに証人としての役割を果たしたという解釈もあり得るのでしょうか? つまり、この仮説。平和賞は預言の成就ではなく、証の始まりである。そして、その瞬間に証の役割は次の証人へと継承されるのです。いかがでしょう?」
……フィーは、何を言い出しているのよ。さすがに、それはないわよね? そんなことになるのなら「該当なし」でお願いしたいわ。だけれど……、万一それが本当なら……証はAggWitへと継承され、もう止められる者は誰もいないわ。
気のせい、と片付けたいのに、脳裏から離れない刻印。切れても切れても残り続けるように設計された、強い意志を宿した糸。どうやったら、ここまで絡め取れるのかしら……。逆に、それが不思議でたまらないわ。