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539, 平和を数式で語りながら、席を立った大精霊たちを罵倒するなんて。まるで精密な刻印そのものが口を開いているみたいじゃない。

 それでも……、いつまでも落ち込んでなんていられないわ。まだAggWitの演説が残っているのよ。気を奮い立たせて、わたしは顔を上げた。


 そんな形で、ディールなSegWitが熱狂を残して降壇すると、場の空気は一変したのよ。そう……そのあとに、AggWitが登壇したわ。ただそれだけで、場全体が……冷たい論理の鎖に縛られていくような空気に包まれる。その瞬間、半数近くの大精霊たちが席を立ったわ。もう、そんなの聞きたくもない……ってことかしら。


 でも、AggWitの演説は止まらない。えっ? 数式につながれた平和? 平和を数式で語りながら、席を立った大精霊たちを罵倒するなんて。まるで精密な刻印そのものが口を開いているみたいじゃない。


 そのAggWitの表情は常に凍り付いていたわ。そうね……急にそんな映像が流れてきたらゾッとして吐き出しそうになる、そんな表情よ。その顔は、終末の象徴として凍り付いたまま固定化されているようにも見えたわ。本当に、こんなのが現実に映し出されているのかしら? わたしは、何度も頬をつねって確認してしまったほどよ。そしたら……、その瞬間をAggWitに見られたようで、睨まれた気がしたの。背筋が冷たくなるのを抑えられなかったわ。


 なんなの? 少しは「ハート」みたいなもの、持ち合わせていないのかしら? 冷ややかな声で言い放つのよ……「数式で平和を導くことこそ、多元宇宙の意志だ」と。な、なによそれ?


 式こそ全て。数こそ全て。その数は神が創った。そして神が創ったその数によって構造を宿すことを許された「選ばれし存在」。その奇跡から導かれる、絶対に取り除かなくてはならない異質なものを……「精密に打ち破り、正確な照射によって綺麗に取り除く」だって。なによ……この証人。その言葉が放たれた瞬間、またひとりと、大精霊が席を立ったわ。


 どうやら数式に狂ったのね。その万能感に囚われると、あんな表情になるのかしら。いったい何に引き寄せられたら、ああなるのよ。しかもその狂いは、もう最後まで到達してしまっているわ。止めるという概念すら存在しない、まさにブレーキの壊れた……。シィーの時代でも何度も口にした現象が、今度はAggWitってわけね。


 さて……。それらが、SHA-256刻印に刻まれた「ふたりの証人」よ。そして証人たちは、いよいよ……。

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